第56話:リリムとマサキ
遅れてしまい、申し訳ありません。
「くそっ、急がないとあいつが学校にも戻ってしまう。」
ピュアハートの相手はこの前と同じ魔犬だ。この前と同様、魔物をさっさと倒してしまうかもしれない。そうなってしまっては、ピュアハートは飛んで学校へ戻っていく可能性があるので、走っていては到底間に合わないのだ。
そのため頼也は必死で学校まで走っていた。
「あれっ、ファン1号くんじゃない?」
頼也の真上から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「その声はまさか⁉︎」
そのまさかだった。頼也の真上にはピュアハートが浮かんでいたのだ。
「どこに走って行ったのかと思ったらここにいたんだね。」
「もう、倒してしまったのか。」
「あたりまえでしょ♪ あんな魔物、一撃だったわよ!」
ピュアハートは自慢げに胸を張った。
「くそっ!このままでは…」
頼也の予感は当たってしまった。このままではピュアハートが学校に早く着いてしまうのは確実。正体を知るために、先回りして学校に行くという作戦はもう絶望的だ。
となると、本人に直接聞くしかあるまい。
「お前、これから高校に戻るんだろ?」
「えッッ⁉︎ そ、そんなわけないでしょ‼︎」
ピュアハートはかなり動揺しているようだ。
「かなり動揺しているな。」
「ファン1号くん、どういうつもり!」
「どういうつもりもなにも…お前の正体を探っているんだ!」
「ま、まさか⁉︎ファンのふりをして、私を騙してたのね。」
ピュアハートはシクシクと泣きだした。嘘泣きのようにも見えるが…
「だから俺はファンなんかじゃないって前から言ってるだろ!」
「ウソよ!だって、キミは私の戦っている場所にいつも現れてたじゃない‼︎」
「それは誤解だ。俺からすれば、お前の方が現れ始めたんだ。」
「どういうこと?」
「俺は魔物を退治する仕事をしているお祓い屋だ。お前が、この町の魔物を退治していく前から俺はこの町で魔物を退治してきた。」
「そうだったんだ。てっきりこの町には巫女1人だと思ってた。」
「前から気になっていたんだが、お前はル…巫女のことを知っているのか?」
「もちろん!この町を魔物の手から守っていたんでしょ。」
「まー、簡単に言えばそんな感じだが…」
「私はこの妖精プリンから巫女がいなくなってしまったこの町を代わりに守って欲しいとお願いされて、ピュアハートになったの。」
ピュアハートが「出てきて」と囁くと、頼也の目の前にモフモフした可愛げな小さな精霊が現れた。おそらく、これが妖精プリンだろう。
「一応納得したが、俺が聞きたいのはお前の正体だ。」
「それは教えることはできないわ。」
「なぜだ?」
「だって、フツーはそういう感じに秘密にするでしょ?」
「どんな感じだよ⁉︎」
結局、頼也はピュアハートの正体を知ることは出来なかった。
◇リリム・マサキサイド◇
リリムとマサキは村から少し離れた町に来ていた。
「マサキさん、ルナさんの杖買って来ましたよ!」
「おー、すまないな。俺にはどの杖がいいのかさっぱりわからないから、全部任せてしまって。」
「そんなこと気にしなくて大丈夫ですよ。それに、私が杖を買っている間に情報を集めてきてくれたんですよね。」
「一応聞いてみて、だいたいのことは理解したからリリムにも説明するよ。」
2人がいるこの王国は、ルナのいる魔界の隣に位置する国で、魔王軍からたびたび攻撃を受けており、常に国民は魔王軍の襲撃に怯えているという。
「なるほどですね。この国の人たちも魔物たちに苦しまされているんですね。」
「そうなるな。」
「それなら、私たちとこの国とで手を組んではいかがでしょうか?この国の王国軍とこっちの世界からの討伐団が力を合わせればいいのでは…」
マサキはリリムの発言を制止した。
「とにかく、まずはルナが戻ってくるのを村で待たないとな。あとのことはそれからだ!」
「そうですね。ルナさんの帰りを待たないと。」
「となれば、いつ帰ってきてもいいように早めに村に帰っとくか。」
「そうしましょう!」
2人は町を出て、村へ向かう森の中の道を歩いていた。
「あれっ、なんか霧が!」
突然、森の中に霧が立ち込めたのだ。
「何か、見覚えのある歪みが微かに見えるんだが…」
「私もです、っってまさか⁉︎」
その瞬間、2人の体に妙な感覚を覚えた。思わず2人は目を閉じる。
それからどのくらい時間が過ぎただろうか、いや時間なんてたいして過ぎてないのかもしれない。マサキには過去に一度、このような変な感覚を味わった気がした。
「…‼︎」
「やっぱり、戻って来てしまいましたか…」
2人が目を開けると、そこには見慣れた景色があった。なんと、そこはルナの部屋だったのだ。
「どうする⁉︎ルナを置いてきてしまった…」
「ど、どうしましょう?」
驚きのあまり、2人はお互いの顔を見合わせた。
次回の投稿は、12月25日0時0分です!




