第49話:採用試験が意外にチョロかった件
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これはチャンスだ。城の使用人になれば、城に忍び込むことも容易。
貼り紙には"城で手続きを行える"と書いている。
となれば、城に行くしかあるまい!だが、帝都は広く、中心にある城はかなり遠い。
「ひとまず誰かに行き方を聞いてみるか。」
そしてルナは掲示板の貼り紙から目を離し、人(魔物)が往来する大きな通りに向き直る。
「さてさて、ここからが大切だ。出来るだけ親切で優しげな人に声をかけなければならない。」
ルナは通りをキョロキョロと見回すが、帝都の人達は忙しいのか、忙しなくスタスタと歩いていき、ルナが声をかけたとしても、請けあってもらえなかった。
ルナは落ち込み、塞ぎ込み、俯く。ネガティヴ三拍子だ。
涙が目からこぼれ落ちる。
やっぱり都会は冷たい。
そんな時、ルナに向かって話しかける声がした。
「大丈夫?迷子…な訳、さすがにないわよね。」
声のする方を向くと、そこにはルナと同じ歳くらいの少女が立っていた。この世のものとは思えないほどの美少女で、髪は長く艶やかなレモン色。少女によく似合うワンピースからはスラリとした長い脚が見える。明るい、元気で活発な少女という感じだ。
たしかに、はたから見ればルナは辺りをキョロキョロと見回し、そして目をウルウルさせながら悲しそうに俯く迷子のように見えなくもない。ま、歳からしてその可能性は無いのだが…
とはいえ、困り果てていたルナからすれば、ルナを救ってくれた天使のように思えた。
「そんなに可愛い子犬のような目をされても困るんだけど…」
その少女は少し呆れたような口調で言うが、その口調はルナを思いやっているようにも受けてとれた。
「ほらっ、掴まって!」
少女はルナに手を伸ばすと、掴んだルナの手を引いて立ち上がらせた。
「ありがとう、助かったよ。君の名前を聞いても良い?」
「可愛い女の子なのに、少し男っぽい言葉を使うんだ〜。」
「あっ、いやいや男じゃないですよ!本当に違いますから‼︎」
「そんなに本気にならなくても…ただの冗談よ。あーそうそう、あたしの名前ね。あたしはリシュナ。よろしくね!で、あなたの名前は?」
「私の名前はルナです。よろしく。」
「それじゃ、自己紹介も済んだことだし、聞いてもいい?」
「はい。」
「ルナ、困ったことでもあるの?」
「実は魔城に行きたいんですけど、どうやっていけばいいかと…」
「なんだ〜、そんなことだったの。それじゃあたしもこれから魔城行くからついて一緒に行こうか。」
「いいんですか?」
「もちろん!あたしって、よくみんなから言われるけど、困っている人を見るとほっとけなくなっちゃって。あ、あと、敬語とかいいから。タメ口でいいよ。」
「ありがとうございっ…じゃなかった。ありがとう。ありがたく一緒に行かせてもらうよ。」
「よし!じゃ、早速行きましょ‼︎」
□■□
ルナとリシュナの案内のもと、龍車に乗り、魔城へ向かっていた。この竜車は飛ばずに、走っていくタイプの竜車のようだ。
「そういえば、ルナは魔城になんの用事が?」
「魔城で募集してる使用人に応募しようと思って。」
「えー!偶然‼︎あたしも一緒だよ‼︎」
「リシュナも使用人になるために来たんだ…」
「そうよ。でも、ここで出会えてて良かったわね。」
「そうだね。これから新しいとこで暮らしていくんだから、そこに友達と一緒に行けるなら心強いよ!」
「そうね。ルナ、これからよろしくね!」
「うん!よろしく‼︎」
こうして、この世界でルナはリシュナという心強い友達ができた。
□■□
竜車に乗ること40分。竜車は魔城前に着いた。
「もう着いたんだね。」
「まぁ、竜車は速いからね。」
竜車を降りた2人の目の前には、大きくそびえ立つ城が建っている。
ここに魔王がいるのだ。いっそ乗り込んで倒す手もあるが、城の中は敵だらけでたぶん無理だ。
となると、やはり時間はかかるが、使用人としてここに潜り込むしかあるまい。
「城門の前に受付所があるらしいからそこまで行きましょう!」
そう言って、リシュナは城門を指差した。
「うん。」
2人は受付所に着いた2人は受付の魔物の女性に声をかけた。
「あのーすみません。使用人募集の張り紙を見てきたんたですが…」
「使用人募集でいらした方ですね。」
そう言うと、受付係は2人をジッと見つめる。
それに不安になったルナはリシュナに小声で話す。
「すごいジッと見られてるんだけど、大丈夫かなぁ?」
「静かに!そんなひそひそ話してたら逆に怪しまれるわよ。」
リシュナの注意にルナは口をつぐんだ。
ジーっと見られること10秒。緊張していたルナにとってはこの10秒が長く感じられた。
受付係は2人から目を離し、手元の書類に何かを書き込みだした。そして、それを終えると受付係は2人に話しかけた。
「この書類に名前をお書きください。」
受付係に言われた通り、2人は渡された書類に自分の名前を書いた。
「はい、お2人は採用決定です。」
それを確認すると受付係は2人を手招きし、魔
城の中に入っていく。そして2人もそれについて行った。
受付係の案内のもと、2人は部屋に連れて行かれる。
「ここがこれからのあなた方お二人のお部屋です。こちらで少々お待ちください。これからお二人の制服を持ってまいりますので。」
そう言って、受付係は部屋をあとにした。
事の進み具合の早さにお互い目を丸くし、2人で首を傾げた。
「意外にあっさりと決まったね。」
「そうだよねー、あたしもこんなに簡単に採用されるなんて思わなかったよ。でも、良かったじゃん、2人とも入れて。」
「そうだね。部屋もそう悪くないし。」
2人が暮らすことになった部屋は城の一階にある、使用人達の部屋がある棟の一番端っこだ。
日当たりは魔界には関係ないし、窓からは魔城へとつながる大通りもの風景を見られた。なかなかいい部屋だ。
部屋はいいとして、ルナには心配していることが1つある。それは、使用人の制服がメイド服ではないかということだ。だいぶ女に慣れてきたルナにとっても、メイド服を着るのはさすがに恥ずかしい、恥ずかし過ぎる。だがしかし、必ずしもこの世界にメイド服という概念がある訳ではないのだ。そうだ!まだワンチャンある‼︎俺は、この世界にメイド服がないのを信じる‼︎
「来い!ワンチャーーーーーーーーーーン‼︎」
ルナのいきなりの大声にリシュナはビビる。その時のルナの迫力は、モン○トの10連ガチャの10体目にすべてをかけるような様だった。
「いきなりなんなの⁉︎」
そして、リシュナの声と同時に、先ほどの受付嬢が扉を開けた。
「お二人ともメイド服の用意が出来ました!」
受付係さんの手にはしっかりとメイド服が‼︎
「…………………………………………………………。」
その時のルナの顔はリシュナによると、魂が抜けたような顔をしていたという。(後日談)
次回からはルナのメイドライフが始まりますよ!
次回の投稿も次の日曜日を予定しております。




