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後編

俺たちは二年前、両親を亡くした……。


家に帰ったら、倒れている父と母を見て、俺は大慌てで救急車に連絡した。


すぐに救急車は駆けつけてくれ、父と母を乗せ、病院に向かっていく。



「おにい、ちゃん…?どういう、こと?」



まだ小学生だった妹は、この状況をどう思っただろう。


目を開けてくれない、父と母。


何度呼びかけても、一向に起きてくれない父と母。


妹はただひたすら、涙をこぼしながら「起きてよ!起きて!」と呼びかけていた…。




やがてすぐに、父と母の心臓が止まったことが伝えられた。


父と母は、天国に逝ってしまったのだ。



「お父さああん!!!!お母さあああん!!死んじゃ嫌だ!死んじゃ嫌だよおおおおおおおおっ!!!」



妹は、泣き崩れた叫んでいた。


もうすでに生きていないお母さんの服の袖を持って。


さっきもずっと泣いていたのに、まだ涙は流れ続けていた。



「うああああああああああああ!!お父さんもお母さんもいないなんて、寂しいよぉおおおおおおおおおおおおおお!!」



「っ!!」



俺は、思わず妹を抱きしめていた。


抱きしめていないと、俺の手が届かなくなってしまいそうだったから…。



「麗香。麗香。麗香。麗香。麗香。麗香。麗香。麗香。麗香」



ずっと、麗香の名前を呟いていた。


彼女の温かみに触れながら、頭を撫でていた。


こうしていないと、すぐにどこかに行ってしまう気がして…。



「麗香はお兄ちゃんが守るから」



泣き疲れた彼女は、眠ってしまったが、俺はこの時、そう誓ったのだ…。










――――――――――――――――――――










「麗香ぁ!!麗香ぁ!!」



俺と桔音は、すでに暗くなってしまっていた外を、探していた。


桔音には人間の住む暮らしは分からないだろうから、二人での捜索は難しい。


でもそのかわり、もっとすごい能力があった。



「狐って、夜行性なのよ?だから、夜の目はいいわ!!それに、ニオイを辿っていけばいいし!!」



と、狐ならではの能力で、俺を補佐してくれることになった。



「麗香ぁああ!!」



もしも麗香に何かあればどうしよう。


誘拐犯にさらわれていたら、どこかで怪我でもしてたら…。


俺は守るって誓ったのに!


麗香を守るって誓ったのに!










――――――――――――――――――――










「ひぐ……ぐす…」



私は、ブランコにいた。


昔、お兄ちゃんと遊んだ公園のブランコにいた。


ここにはいろんな思い出があるのだ…。


嫌な思いをしたときはここにくるのだ。



「私……サイテーだ」



お兄ちゃんは悪くないのに……。


お兄ちゃんに八つ当たりするなんて、最低すぎる。


お兄ちゃんが私のこと、嫌いになったらどうしよう。


桔音さんを取って、私を捨てたらどうしよう…。


そんなことばかりが頭をよぎった…。



―――麗香ぁ!!麗香ぁ!!!



遠くで呼ぶ声が聞こえる。


お兄ちゃんの声だった。


私を探しに来てくれたんだ。



こんな私のために…。



「お兄ちゃん!」



私は、立ち上がり、声が聞こえる方にかけていった。


謝ろう。


お兄ちゃんだって謝れば、許してくれるはずだ!










――――――――――――――――――――










「麗香!!!」



公園に、麗香がいた。


買い物の帰りに、桔音とであった公園だ。



「待ってろ!そこに行くからな!!」



俺は駆け出していた。


何事もないか、心配すぎてかけだしていたのだった。


だからこそ、気が付かなかったのだ。



――――――――――後ろの車に



キキーーーーーーーッ!!



「危ないっ!!!」



鳴り響く急ブレーキの音。


俺に照らされるライト。


ダメだ、完全に轢かれる。


その瞬間……!!





「っ!!!!!」





俺は何かに、背中を押された。


突然のことだったため、身体は前に倒れこんでいき、転んだような形で倒れた。



バキっ!!!



何か、硬いものが折れる音。


そして悲鳴。



「だ、大丈夫だったか!?」



おじさんが駆けつけてくる。


でも、俺じゃなくて!俺じゃなくて!!



「桔音!!!!」



桔音が轢かれたのだ…。



桔音が眩い光を放って、狐に戻っていく。




「え…!?どういうこと!?」




狐の姿に変わっている彼女に、俺は駆け寄る。




「桔音!!」



「あぐ……ケイ、くん……無事…?」



「あ、ああ!俺は無事だよ!!桔音!お前!!」



「よかった…。ようやく………。ようやく、恩返しが出来た……」



「何言ってるんだよ!死ぬな!死なないでくれよ!!」



桔音を抱きかかえて叫ぶ。


桔音は、優しい声でつぶやいたのだ……。



「妹さんを……大事にね」



こうして、桔音は目を閉じた………。










――――――――――――――――――――――










「なんとか命は取り留めました。ですが……」



「ですが!?」



「あまりに傷が深すぎて……。きっと、野生で生きていくほどの力には回復しないですかね」



野生では生きていけない…。


あまりにも狐として致命的な言葉だった。



「飼います。いや、俺が、面倒を見ます。恩返しします」



「それがいいと思います」



獣医さんの方も、納得してくれたようだった…。










――――――――――――――――――――










「ん…」



「おお!目、覚ましたか!!」



目の前には、ケイくんがいた。


嬉しそうに、こっちを見ている。


尻尾があったら、振りそうなくらいに。



「私、生きてたの?」



「ああ。一命を取り留めたんだ。でも…」



「うっ……」



後脚にとんでもない痛みが走る…。



「もう野生で生きていくのは、無理だって」



「え…?」



「で、さ。お前には、命を救ってもらったんだし、恩返しがしたいんだ」



「恩返し?」



「ああ。桔音の世話を俺がする!お前を家族として、迎え入れたいんだ!!」










――――――――――――――――――――










私は、勝てなかった…。


あの時、私がもしも急いで手を引いていれば。


あの時、危ないから来るなと言えてたら。


お兄ちゃんも桔音さんも、命の危険に晒すことはなかったのだ。


お兄ちゃんがあのとき車に轢かれていたら、そのまま死んでしまっていたら。


私は、今度こそ心を閉ざしきってしまうことだろう。


もしかしたら、自ら命を絶ってしまったかもしれないのだ。


だけど。


桔音さんは違った。


彼女は動いていたのだ。


お兄ちゃんを助けるために、命がけで!


彼女は、命がけの恩返しをしたのだ。


私は悟った……。


これが、彼女との差、なのかもしれないって。



私はお兄ちゃんが大好きだ。


でも、桔音さんはそれ以上に大好きなんだ。



恋に破れたはずなのに、なぜか心が落ち着いていた。


そして、言えたのだ。



「お兄ちゃんを助けてくれて、ありがとう」



と。










――――――――――――――――――――











「ああ。桔音の世話を俺がする!お前を家族として、迎え入れたいんだ!!」



俺は、精一杯の恩返しとして、彼女に頼み込んだ。


しかし、彼女は首を振ったのだ。



「いや。そんなペットみたいなの、いやだ」



「え…?じゃ、じゃあ、どうしたら……」



「家族としてじゃなくって…………『お嫁さん』として、迎え入れてほしいの」



「え……?」



「あの日、助けてくれた日から、貴方のことが好きでした。私を『お嫁さん』にしてくださいっ」



恩返しをしようと思ったのに、代わりに告白を受けてしまった。



「………俺のこと、そこまで考えていてくれたんだ…。うれしい。ありがとう!でも……、俺は妹を守るって決めてるんだ」



「何言ってるの!?」



抗議を出したのは、まさかの妹だった。



「え?」



「女の子が必死に告白してくれたんだよ?答えてあげなよ?恩返しでしょ!?」



「だってなぁ!」



「私も恩返ししたいの。桔音さんに」



「え?」



「お兄ちゃんを助けてくれて、ありがとう。そして、お兄ちゃんたちの恋を応援したい。でも、私も家族として迎え入れてくれないかな…?」



「………当たり前だよ!ケイくんさえよければ」



「…………みんながそういうなら………今日から家の家族だ!桔音!!!」








今日から私は、人間の家族になった。


長年夢見てたのが、現実になっていったのだ。


今日から幸せな暮らしが始まるのだ。

一日で全話書き終えました。ご覧になってくれたみなさん、ありがとうございました。

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