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プロローグ
さらりと細くも節のある指が濃い蜂蜜色の髪を撫でる。
くすぐったさを感じながら瞳にかかる前髪ごしに見上げたその人は、珍しくその顔に笑みをのせていた。
笑みというにはあまりに小さく、淡いものであったが、少女は何よりもその顔が好きだった。
「もう少しだ」
聞くだけで安心してしまう低く落ち着いたその声に、わずかに嬉しさが滲んでいることに少女は気づいた。
すっと離れる頭にあった熱を残念に思いながらも、少女の胸にはぽかぽかとあたたかい熱が広がる。
だって、少女・クロシェは彼の人が喜ぶ姿が何よりも好きだったから───────
これは、クロシェが兄とともに旅に出る一月前の出来事である。




