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教訓、五十四。煮詰まった状態の計画には穴がある。 6

 22:00更新します。


 珍しくシークは本気で怒っていた。それも、イージャが王妃暗殺をなかなか諦めなかったからだ。本当に珍しく激怒して怒鳴ったのだった。

「シークが怒るなんて、本当に珍しいですね~」(作者談)


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 シークは腕を組んで二人を(にら)みつけた。

「言ってみただけ、計画を詰めてない。きちんと計画を詰めたら、やってみるんだろう?」

 地から()うようなシークの声に、王妃暗殺計画を内心では諦めていなかったフォーリとイージャは、さすがに少々冷静になった。

「……。」

「……。」

 無言になった二人に、シークは畳みかけた。

「もし、万一、それが上手くいったとしても、すぐに誰が関わったか、調べられることになる。一番、疑われるのが若様…セルゲス公になるんだぞ? 守るために、刺客を減らすためにしたことが逆効果になる。それで、フォーリが計画に関わっていたとなった場合、言い逃れできなくなる可能性が高い。

 フォーリ一人の独断だったと言い張っても、きっと、セルゲス公を巻き込もうとするだろう。何も妃殿下お一人がセルゲス公を疎ましく思われているわけではない。

 そして、仮に若様、セルゲス公の罪は免除されたとしても、フォーリは逃れられない。当然、私もアズレイ、お前も同罪になるだろう。私一人が計画に関わっていないと言って、誰が信じる?

 そうなったら、一体、誰が若様、セルゲス公をお守りするんだ? そこまで考えたのか?」

 ようやく二人は自分達の計画の穴を認めた。

「……まあ、確かに。」

「……。そうかもしれない。」

 そう言った後で、イージャは続けた。

「私一人の計画だと遺言書を作り、公に公開してから実行する。そう、暗殺した後で公表されるようにしておく。」

 まだ諦めていないイージャを見て、シークの目が一瞬点になってから怒鳴りつける。

「馬鹿か! 本当に分からないのか! 真実なんか、どうだっていいんだよ! 世間に広まるのは、若様の命令だったという作られた事実が広まる! それが、現実だっていうことだ! お前一人なんかの遺言書なんかより、権力を握ってる方が強いに決まってるだろうが…!!」

 シークはとうとうイージャの胸ぐらを(つか)んでいた。

「私の時だって、そうだったんだ、それじゃあ、無駄死にになる…! そんなことで死ぬな! しぶとく生き残れよ! 散々、私にしつこく嫌がらせをしてきただろうが!」

 ぎりぎりと襟元が締め上げられて、首が絞まって苦しかったが、イージャは自分がシークに嫌がらせをしていたことを、シークが忘れていなかったことが妙におかしくなって、笑い出してしまった。

 当然、シークはさらに怒りだした。目がガラスの破片のようにキラキラと光っている。

「お前……!」

「悪かった。お前の言うとおりだ。王妃を殺しても、敵の思うつぼになるんだったら、実行しない。」

「本当だな?」

「ああ、本当だ。そんな(しゃく)(さわ)ることはしたくない。」

 イージャの答えを聞いて、ようやくシークは手を離した。

「全く、本気で馬鹿なことを言うから……。仮にアズレイ一人の犯行になったとしてもだ、勝手に死なれたら私が大変だろうが。ブローブスは良い奴だが、融通が利かないから、セルゲス公の護衛の任に向いているとは思えないし。せっかく仲直りしたんだから、きっちり働いて貰わないと困る。」

 シークのぶつくさ言う言葉を聞いて、イージャが尋ねる。

「私達は仲直りしたのか?」

「……本当だ、仲直りしたのか?」

 少しだけ首を(ひね)ったものの、シークは続けた。

「まあ、いいや、とにかく、お前の方が柔軟性があるのは分かったから、お前の方が護衛の任務に案外向いていると思う。せっかく裏を知っている人間が護衛につくのに、死なれたら一から説明が必要になる。」

 何やら言い訳めいた言葉を呟いた後、シークはきっと二人を振り返った。

「とにかく、二人だけで何かをしようと思うな…! 必ず私にも相談しろ、分かったな!」

 ぷんぷん怒って二人に言ってから、シークは勢いよく部屋の扉を開けて外に出て行き、廊下を歩こうとしてから、そのまま回れ右をして中に戻ってきた。

「ここが私の部屋だった。とっとと出て行け…!」

 シークは生真面目にも、イージャにもう一度手枷をさせた後、二人を部屋から追い出した。

 この後、見張りの兵士達が恐る恐る戻ってくると、シークは見聞きしたことは他言無用で絶対に口外するなと厳命(げんめい)した。シークの部隊から来ていたラオ・ヒルメはもちろん、他の部隊の隊員達も同様にしっかり命令に従った。

 普段、静かに黙って手枷をつけられているシークが、怒ると相当恐いということを学んだからだった。ラオは後で「お前のとこの隊長って本当は(すご)く恐いんだな」と感想を伝えられた。

 見張りの兵士達は、後で他の隊員達に何があったのか聞かれたが、当然、何もなかったと言い張ったのだった。

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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