教訓、五十四。煮詰まった状態の計画には穴がある。 5
シーク、フォーリ、イージャの三人はお互いに面倒なことになっていると思っていたが、何やら考え込んでいたイージャがとんでもないことを言い出した。それは、王妃暗殺計画だ。フォーリまでもが乗り気になり始め……。
ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。
意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?
転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)
イージャは手際よく男を縛り上げているフォーリを見ながら、何やら考え込んでいる様子だったが、やがてぽつりと呟いた。
「問題を早く解決する方法を思い付いた。」
フォーリが男を見張っていた兵士達に引き渡した。とりあえず、今は彼らを解散させる。聞かせたくない話もするかもしれないからだ。あの男の検証をするために。
そして、見張りの兵士達を去らせたのは正解だった。
「問題を解決する方法って何だ?」
何やら思考に沈んでいる様子のイージャに、シークが尋ねる。すると、イージャはニヤリと口の端を上げて笑うと豪胆にも言い放った。
「今までどうして思い付かなかったのだろうな。」
そう言って、くくくと喉を鳴らしてイージャは笑う。思わずシークとフォーリは顔を見合わせた。
「本当に簡単なことだ。王妃を暗殺すればいい。」
「!?」
シークとフォーリは声もなくイージャを凝視した。
「きっと、陛下も迷惑されているだろう。あんな我がままで自分勝手な女に振り回されているのだから。好き勝手やった結果、恨みを買って勝手に死ぬんだ、自業自得というところだろう。」
「お前、馬鹿なことを言うな……!」
「少し声を落として言え……!」
シークとフォーリがようやく、危険なことを言い始めたイージャに注意したが、二人の注意点は少しずつ違っていた。フォーリはさらに続けた。
「確かに王妃が死ねば問題が全て片付くし、考えようもあるかもしれないが……。」
などと、恐ろしい言葉を吐いた。
「そうだろう。私がやれば、暗殺という静かな状態にはならんが、間合いに入れば確実に死ぬ。」
「問題は、どうやって王妃に近づくかだ。言っておくが、私は決して手助けできないぞ。表だってはな。」
「セルゲス公の任命式しかあるまい。その時を狙って――。」
「待て!! 二人とも、何を言ってる!」
シークは慌てて、二人の王妃暗殺計画の立案を止めた。
「シーク、私は本気だ。いつまでも利用されるのは癪だし、性に合わない。」
「そうすれば、若様に送られる刺客が確実に減るはずだ。」
二人は息を合わせたようにシークを振り返って宣った。二人のけっこう本気な様子を見て、シークは必死になって頭を巡らせ言葉を紡いだ。
「だめだ、二人とも頭を冷やせ……!本当に上手くいくと思っているのか?」
びしっとフォーリに指をつきつける。
「まず、フォーリ、お前、若様のせっかくの晴れ舞台を台無しにするつもりなのか? 式にはおそらく、姉君でいらっしゃるリイカ姫も出席なさる。久しぶりの姉弟の再会を血に濡れたものにするのか?」
フォーリには若様のことを持ち出すのが基本だ。
「そして、アズレイ…! 自暴自棄になるのはやめろ。ご両親が本当に亡くなったのか、確認もしていないのだし、そもそも本当にお前の婚約者だったエーナさんは亡くなっているのか?
今までの組織の状況からして、亡くなっている可能性が高いとは思うが、人の心を弄ぶようなことをしてきた組織だということを考えると、その逆もあり得る。」
そして、イージャには彼の行動を見れば、人質にされた家族のことを言うのが一番聞くだろう。
「それに、妃殿下を暗殺した所で、本当に問題が解決するのか疑わしい。確かに見かけ上は妃殿下が命令を下したから、謎の組織が暗躍しているように見受けられるが、大体、その組織は昔からあるように思われる。
おそらくだが、妃殿下も使い勝手のいい駒の一つなだけだろう。妃殿下が暗殺された場合の想定もきっとあるはずだ。もしかしたら、そっちの方が余計に悪いかもしれない。そうだな、妃殿下を殺すよう命じたのはセルゲス公だとか、そんな疑惑をふっかけられるのに十分すぎるほどだ。
逆に窮地に立たされるような気がするのは、私だけか?」
「……。」
「……。」
シークがイージャとフォーリの二人の顔を交互に見比べながら話すと、二人は黙り込んだ。そして、旧知の仲であるかのように揃って口を開いた。
「なんだ、今日はずいぶん、口が滑らかに回る。」
「今日に限って雄弁なようだな。」
まるで人ごとのように言う二人に、さすがに頭にきたシークは目を剥いて怒った。
「お前達二人が、馬鹿なことを本気で言っているからだ……!!」
シークの怒りように、二人は言い訳を始めた。
「そう怒らなくてもいいだろう。まだ、言ってみただけだ。」
「本当にやれるかどうかは別だ。ざっと考えてみただけだし、計画を詰めてない。」
ドン!とシークは床を一度踏みならした。その音に、見張りに戻ってきていた兵士の一人が扉を開けた。しかし、本気で怒っていたシークが振り返り、目が合っただけで慌てて扉をもう一度閉めた。もちろん、部屋の中の話が聞こえないように、少し遠くに離れたのは言うまでもない。
星河語
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
星マークもありがとうございます。
 




