教訓、五十四。煮詰まった状態の計画には穴がある。 4
謎の男に脅されて、仕方なく言うことを聞くふりをしていたイージャだったが、部屋の外に出た時に異変を感じる。そして……。
ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。
意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?
転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)
最初に部屋から出てきたイージャには、床に転がっていたはずの兵士達が立ち上がっていることに気がついたが、イージャの後ろの男からは死角になる位置で、イージャの部下が一人指を動かしたので、すぐさま左に飛んで場所を作った。
途端、イージャのいた位置に、空いた穴を埋めるように、扉の影になる方からフォーリが飛び込んできて、目の前の男に一撃を食らわせた。
だが、男もさるもので咄嗟に鉄扇を抜いて庇い、フォーリの攻撃を避けて後ろに跳んだ。つまり、部屋の中に戻ったのだ。そこに後ろから影が襲いかかる。
「!」
男は避けようとしたが間に合わなかった。目の前にはフォーリがいる。体が一回転したかと思うと、次の瞬間には床に叩きつけられていた。ヴァドサ流の柔術技だ。一度、部屋の外に出ていたシークが戻ってきてかけたのだ。
男はすぐに受け身をとって起き上がろうとしたが、器用に手足が絡んできて的確に首を絞められる。手枷がついたまま、手枷を利用して首を絞められた。なんとか抜けようとするが、決してできない。頸動脈が圧迫されて意識が遠のいていく。やがて、男は気絶した。
「……死んでないよな?」
「死んでないはずだ。」
フォーリの確認にシークが答える。見事な連携だった。
「お前、いつまで、こいつの首に手枷を絡めたままなんだ?妙な趣味があると勘ぐられるぞ。」
「な、誤解されるような言い方するな…!手枷が抜けない。早く鍵を開けてくれ。お前ならさっさと開けられるだろう?」
「頭にはめるときはできたのに?」
「気絶したからだ。首が寝てるから抜けない。」
そんなこと、フォーリだって分かっているだろうに、わざと言ってからかっていた。だが、シークは至って真面目で、からかわれていると気づいていない。
「……。私に言えばいいものを。」
黙って成り行きを見守っていたイージャは、前に進み出るとシークの手枷を外した。ちょっと手首がこすれて赤く擦りむいている。
「ああ、助かった。勢いでやったものの、ちょっと死なないようにする加減が難しかった。」
シークがにこにこと礼を言うので、イージャはため息をついた。
「…いや、礼を言うのはこっちの方だ。それにしても、今日、この男が来ると分かっていたのか?」
イージャがシークとフォーリに目を向けて尋ねると、二人は一度顔を見合わせてから首を振った。
「いいや。ただ、必ず接触があるだろうから、その時はこうしようと話し合っていた。それに、ここはカートン家だ。どれだけ、気配を消して侵入しようとも、大勢のニピ族がいるから、すぐに侵入が分かる。分かった時点でこちらに連絡が来るようになっていたから、少しだけ準備ができたということだ。
この男は、お前の所に行く前に、一度、私の部屋の前に来て、見張りを気絶させていった。その後、お前の部屋に行ったので、その間に目を覚まして臨戦態勢に戻っていたというわけだ。」
イージャは少し考え込んだ。
「なぜ、そんなに面倒なことを? 最初から、お前の部屋に侵入して手を下した方が早いだろう?」
シークを見ながら、不審そうに疑問を口にする。
「おそらくだが、確実にお前に罪を着せるためだろう。そのために、面倒なことをしたとしか思えない。」
フォーリの答えにイージャは、一応は頷いた。
「…まあ、それくらいしか理由を思い付かないな。それにしても、一体、いつまでこんなことが続くんだ?」
「そりゃあ、私が死ぬまでだろう。」
シークの間髪を入れぬ答えに、イージャは瞬間、目を瞠ってからやれやれと息を吐いた。
「そして、その後は私が死ぬと。全く、面倒なことだ。」
星河語
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