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教訓、五十四。煮詰まった状態の計画には穴がある。 3

 遅くなって申し訳ありません。

 イージャはとりあえず、侵入してきた男の言うことを聞くことにしたが……。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 少しの間、考えてイージャは相手の言うことを聞くフリをすることにした。そうすれば、少なくとも誰か分からない“予備”の人員を使うことは、すぐにはないだろうし、イージャ自身の延命もできるだろう。

「どうだ、やるのか、やらないのか?まあ、お前の返答しだいで、お前の両親は死ぬか生きるかになるのだが。」

 イージャはそっと息を吐くと頷いた。

「分かった。言うことを聞こうか。」

「まあ、最初からその答え以外ない。」

 やはり、助けるつもりがない。この男は非常に冷徹(れいてつ)な男だ。両親の命も自分の命も、今日が最後か。いや、両親はもっと早くに死んでいるかもしれない。ならば、イージャにできることは一つしか無い。この男を出し抜くことだ。

 何とかして男の目を盗み、シークの手枷を外すことさえできれば、後は自分で何とかするだろう。シークの方が、この男達のことをよく知っていそうだ。

「さて、今後の計画だが。お前は信用ならんから、私が見張りに付いていく。」

 いきなり、厳しい条件である。見張りがなければ、なんとかできるものを……。だが、こんな男が付いてくれば、不審者がいると言っているようなものだが、どうするつもりなのか。つまり、カートン家の施設内であっても、ニピ族達を()いて何とかできる自信があるから、ここにいるのだろう。

「……それで、私に何をさせるつもりだ?」

 男はくくく、と喉で笑った。イージャもしていたような気がするが、される側にしてみると、非常に腹立たしいものだった。

「最初に言ってあったはずだ。ヴァドサ・シークを殺せと。」

 どくん、と心臓が大きく跳ねた。

「……話が違うのでは?拘束するだけでいいとお前は言った。」

「話が違うのはお前の方では?」

 男はイージャの首筋の短刀に力を入れた。少し切れただろうと思う。微かに血の臭いがした。だが、緊張のせいか痛みは感じなかった。

「なぜ、ヴァドサ・シークに全てを話した?なぜ、お前の家族が人質に取られていると気づかれた?」

 思わず、イージャは鼻を鳴らした。

「私のせいではない。向こうが勝手に勘づいた。お前達のやりようをさんざん見てきたから、人質でも取られていると予想できたんだろう。」

「……。お前が何か勘づかせるような行動をとったのでは?」

「言っておくが、私とシークはそんなに仲が良いわけではない。むしろ、お互いに敵視しているようなものだ。助けを求めるような仲ではない。」

「……まあ、いい。簡単なことだ。これから、ヴァドサ・シークの部屋に行き、お前の剣で刺し殺せばいいだけだ。」

「……。カートン家に気づかれる可能性があるが?」

 イージャは何とかして、遅らせるように言ってみた。

「ふん。そんなもの、心配する必要はない。お前は言われた通りに、私と来ればいいだけだ。」

 立て、と促されてイージャは仕方なく剣を持つと、わざと手間取りながら剣帯に剣を下げて部屋を出た。わざわざ剣帯に下げる必要はないだろうと指摘されたが、親衛隊はいつも服装を乱すことは許されず、一つでも何か違うことがあれば、異変に気づかれるという理屈に、男は仕方なさそうに納得した。誰かとすれ違わないとは言い切れないからだ。

 廊下は(おどろ)くほど静かだった。こういう時に限って、誰ともすれ違わない。時間稼ぎをしようにも、じきに着いてしまった。しかも、シークの部屋の見張りはみんな、倒れている。

「お前がやったのか?」

 わざと驚いたように、やや大きな声で男に聞くと、右腰の急所に男が短刀を突きつけた。

「余計なことを言うな。」

 耳元に息がかかる。今の声がシークに聞こえていることを願うが。

「お前はただ、言われた通り刺し殺せ。」

 もう一度、低い声で男は脅すと、イージャに鍵を開けさせた。

「シーク。ヴァドサ・シーク、いるか?」

 部屋の中に入ると、人気がなかった。ランプが机の上にぽつんとあって、静かに火が燃えていた。ゆっくり部屋の中を見回すと、窓が一つ開いているようだった。ゆらゆらと日よけの窓掛(カーテン)が揺れている。

「シーク?」

 呼びかけながら、ゆっくりと部屋の中を確認した。個室ではあるが、狭いのですぐに確認は終わる。誰もいなかった。内心、かなりほっとする。

「どうやら、外の見張り達を気絶させた時に、気づかれたようだな。」

 知らず声に喜色が混じり、男はふんと鼻を鳴らした。

「だが、ここは二階だ。手枷をされたまま、逃げ出せるとは思えんが。」

 イージャは思わず男を振り返った。

「お前……いや、お前達か。ヴァドサ家をなめすぎだ。あいつらは信じられないような訓練を受けている。命綱無しで城壁の上まで登るような連中だぞ。それくらい朝飯前だ。」

「……。いないものはしょうがない。戻るぞ。」

 イージャの言ったことは無視して、男はイージャに戻るように命じた。先に出ろ、と扉の外に押し出される。

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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