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教訓、五十四。煮詰まった状態の計画には穴がある。 1

 さて……。ある場所である集団が悪だくみをしていた。黒い帽子をかぶった集団が……。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 薄暗い部屋の中で、男達が集まって話し合っていた。時折、パチパチと木が()ぜる音がしている。薪を暖炉で燃やしながら暖をとり、卓上に置かれた火酒をちびりちびりと飲んでいた。暖炉から離れた所には、小さな火鉢が置かれて寒さをしのいでいる。

 部屋の灯りは暖炉と火鉢、そして、幾ばくかの燭台の蝋燭(ろうそく)だけだった。あまり明るくないので、お互いの顔つきさえよく分からない。

「今度こそ。」

 誰かが言葉を発した。

「今度こそ、ヴァドサ・シークを殺せるのか?」

「前回は毒使いの宮廷医のせいで、助かってしまった。なんとも悪運の強い男だ。」

「親衛隊の隊長が死ねば、やりやすくなる。我々の息がかかった親衛隊に代えねばならんからな。」

「今回は上手くいくはずだが。」

「はずではなく、確証が欲しいのだ。絶対的な確証が。断言して欲しいものだな。」

「……お言葉だが、ヴァドサ・シーク以前は確実だった。あの男に関わって以降、上手くいっていないだけだ。」

「相性が悪いとでも言いたいのか!?」

 とうとう一人の男が怒り出した。その態度に腹を立て、別の男が怒りを(あら)わにする。

「絶対的な確証など、得られるものではないわ…! 相性が悪い、そう言わざるを得ない、それのどこが悪いというつもりか!?」

「まあまあ、我々が仲間割れしてどうするのだ?」

 別のどこか芝居がかった口調で話す男が間に入った。

「仲裁している場合か? そもそも貴様が、失敗さえしなければ、今頃こんな話し合いをしなくて済んでいた。」

「……確かに私も失敗したことは認めよう。だが、普通は死んでいるはずの毒だ。それだけは覚えておいて欲しいのう。耳かき一杯で雄牛が一頭死ぬのだ。それは本当のこと。間違っても、下手に手を出すでないぞ。」

 さすが、その場にいる中で最年長と言っていいだけあってか、その場をなんとか治めた。一同は後ろ暗いことをしているだけあって、毒の扱いに詳しい男に言われれば、そうだと頷かざるを得なかった。他の者は死んだのだから……。

 実際にこの一年、ヴァドサ・シークに関わること以外は上手くいったのだ。

「……しかし。本当にバムス・レルスリは死んだのか? 噂では、バムスのニピ族を見た者がいるとか。」

「残念ながら、生きているようだ。あの男、自分の屋敷をわざと焼き討ちにさせ、自分の死を偽装したようだな。」

「信じられんな。サプリュの屋敷は、そのためにあまり手を入れさせていなかったのか? だから、我々もあまり屋敷に招かなかったのか……。」

 別の男も呟いた。

「しかし……。バムスも凄惨(せいさん)拷問(ごうもん)を受けたはずなのだが、なぜ生きているのだ? 心身共に深く傷ついたはずだがな。」

 不思議そうな問いに、別の男が呆れたように答えた。

「カートン家に決まっておろう。なんせ、子どもの頃から縁がある。」

「……ああ、全く。バムスが死ねば、こちらもやりやすかったものを。鉱山の件、忘れもしない。腹が立つ。」

 薄暗い部屋に、呪詛(じゅそ)のような言葉が引き続く。

 黒い帽子を被った集団が、この日も悪巧みをしていた。


 ヨヨの街で、イージャは途方に暮れていた。どうしたらいいものか。全く分からなくなっていた。シークはなぜか屈託なくイージャに接してくるようになり、さすがのイージャも良心が(とが)めた。

「大丈夫だろうさ。まあ、何とかなるだろう。」

 シークは何をもってしてか、本気で何とかなると思っている様子だった。まだ、フォーリから両親が助かったという報告は聞いていない。そもそも本気で助けてくれるのか、こっちには保証もなく、後になればなるほど心配になるばかりだった。

「しかし、お前。私がいない間に手枷(てかせ)を付けられたまま、刺客でも来たらどうするつもりだ? 対抗できないだろう。」

「まあ、その時はその時だ。フォーリ当たりが助けに来てくれるだろう。なんせ、ニピ族は鍵を開けるのが上手いからな。」

 だろう、と言っている当たり、本人から確証を得ていない様子だが、シークはのほほんと言い切った。そして、ニピ族は鍵開けが上手だという、思わぬ情報が入っただけだった。確かに無用な情報ではないが、今、必要な情報でもなかった。

 イージャは最近、シークが見ていない間に殺されやしないか、心配になって常に共に行動している状態になっていた。一応、約束はしているので、両親が助かったのにシークを見捨てる訳にはいかないという、規則を振りかざすだけあって、妙に真面目な所があるから見捨てられないのだった。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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