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教訓、五十三。悩みは人に話すと、あまり悩みではなくなる。 4

シークとイージャは喧嘩していたが、ちょっとした間にフォーリが走っている馬車に乗り込んできた。そして、イージャにある提案をする。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 二人の間に微妙な沈黙が降りた時、突然、走っている馬車の扉が開いた。

「!?」

 イージャがびっくりしている間にも、フォーリが狭い車内に無理矢理体を押し込んで滑り込んできた。シークは体を小さくしながら、扉をなんとか閉めた。狭い車内に大の男が三人もいるのだ。かなり窮屈(きゅうくつ)だった。

 フォーリの第一声。

「思ったより狭いな。」

「思わなくても、そうじゃないか? この馬車の大きさを考えれば。」

 シークは体をずらして、フォーリが座れるようにしながら少し呆れていた。ニピ族の驚異的な身体能力を見せつけられて、イージャは驚きを通り越して呆れていた。シークはといえば、もう慣れっこになっていた。

「話は全て聞いていた。」

「!? どうやって?」

「どうやっても何も、外側に張り付いているしかないだろう。」

 イージャはフォーリの答えに、ぽかんと口を開けている。走っている馬車の外側に張りつているのだから、普通はできない芸当である。この馬車には、御者席の他に乗員が座る場所はない。しかも、御者席も一人分しか空いていないのだ。

「…外側の壁にひっついていたのか!?」

 イージャがびっくりしている。実際には外側の壁ではなく、屋根に乗っていたので、彼が思っているより楽だったが。

「とにかく、お前の状況は分かった。」

 フォーリはイージャを睨むようにしながら、話を進めた。

「若様は、お前が家族を人質に取られていると聞いて、助けてやって欲しいと仰った。だから、助けてやるが、そうでないと助けてはやらん。分かったな?」

「……セルゲス公が?」

「そうだ。若様は優しいお方だ。お前の家族のことを聞いて、心を痛めておられる。だから、助けてやる。安心しろ。」

「……。」

「その代わり、必ず任務を全うしろ。若様に危害が及ばないように絶対に、守れ。言っておくが、このヴァドサは命がけでそれをやった。しかも何度も。一回程度では、まぐれかもしれないと思ったが、何度もやった。それで、とりあえず一目置いている。」

 はあ、とりあえずね、とシークは思っていた。とりあえずでも何でも、フォーリの信用を得られたのは嬉しい。

「その上、こいつがいると便利だ。いなくなったら私が忙しくなり、不便になるから、絶対に死なせるな。分かったな?」

「死なせるなって、一体、なぜ私に命令する?」

「お前の家族を助けてやるからだ。ありがたく思え。」

「……。」

 イージャは呆気にとられている。

「それじゃ、約束を守れ。」

 フォーリは腰を浮かしかけてシークを振り返り、もう一度イージャに向き直った。

「それから、お前がこいつに腹を立てる理由も分かる。今も『部下を優しく見守る上官』という感じの柔和な笑みを浮かべているからな。こういう所が腹が立つ。」

「……。」

「何だ、私はそんな変な笑みを浮かべてないぞ、失礼だな!」

 シークの抗議を無視して、フォーリは今度こそ腰を上げた。

「ヴァドサ、閉めとけ。」

 言うや否や、バンッと扉を開け、ひらっと走っている馬車から飛び降りていくのだ。

「閉めとけって簡単に言うけどな、私は今、手枷がついてるんだぞ!まったく!」

 シークは文句を言いながら、なんとか両手を伸ばして扉の取っ手をつかもうとしている。しかし、手枷がついているので、両手を伸ばす必要があり、揺れる車内では難しい。さっきは、入ってくる際にフォーリが半ば閉めていたので簡単だったが、今度はそうはいかない。

「座ってろ。私がやる。それこそ、頭から落ちたら死ぬぞ。」

 イージャは仕方なく、自分が手を伸ばして馬車の扉を閉めた。

「いつも、あんななのか?」

「は? 何が?」

「だから、ニピ族だ。なんだか、偉そうな奴だ。」

 思わずシークは笑った。

「何言ってるんだ、お前も同じだろ。」

「私はあんなに偉そうじゃない。」

 イージャが憤慨(ふんがい)する。

「そうかぁ?」

 シークが疑問を呈したのを無視して、イージャは聞いた。

「本当に両親を助けられるのか? あいつが、助けるのか?」

 聞かれたシークは首を傾げた。

「さあ。私もよく知らない。ただ、言えることは、ニピ族は一人で動かないということだ。どうやら私達と同じ班編制らしい。」

「ああ、なるほど。分かった。」

 それ以降は、二人ともなんとなく何も言わなかった。ただ、以前よりは二人の間に落ちる沈黙も、それほど不快なものではなくなっていたのだった。


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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