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イージャ・アズレイという男 3

 昨日に引き続き、いつもの時間に更新できませんでしたことをお詫び申し上げます。パソコンのセキュリティソフトの更新に手間取ってしまいました。申し訳ありませんでした。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 王妃に呼ばれていた。

「お前、なぜ、呼ばれたのか分かっておるな?」

 王妃は扇でゆったりと扇ぎながら、イージャに尋ねてきた。

「……おそれながら、何のことでしょう?」

「ふん。まったく白々しい。」

 なんとなく予想はついていた。でも、はっきりとはここに来る前に言われていない。

「お前がヴァドサ・シークと不仲だということは分かっている。」

 顔を上げる事が許されておらず、イージャはひざまずいて(うつむ)いたままだ。

「分かっておるだろう?お前にはグイニスの護衛をしているヴァドサ・シークを殺して貰う。」

 思わず息を詰めた。顔を上げそうになるのを何とか堪える。予想を超えていた。せめて足止めくらいだろうと思っていたのだ。なんせ、親衛隊の隊長だ。それを殺すというのは、任命した王に不満があるということにもなる。

「あやつは邪魔な男じゃ。あやつのせいで、グイニスが正式にセルゲス公になってしまう。そうなってからでは遅い。全く、タルナスは何を考えておるものやら。王太子のくせに、王位はゆくゆくは返すつもりだとか何とか、公言して(はばか)らぬ。何にも分かっておらぬ。」

 確かに王太子の言動に関しては、王妃カルーラの心配も最もだとは思う。だからといって、病気の王子に刺客を差し向ける王妃もどうかとは思うが。

「良いな?殺すのじゃ。」

「恐れながら、妃殿下。」

「誰が話して良いと言った?」

 高慢な物言い。人を見下している口調。そして、イージャが必ずそうすると確信しているようである。

「…まあ、よい。話せ。」

 邪魔なシークを殺すのに、一役買う男の話くらい聞いてもいいと思ったのだろう。結局、発言を許可した。

「は。確認致したきことがございます。」

「なんじゃ。」

 王妃は気だるそうに聞き返す。

「もし、仮にヴァドサ・シークを殺した場合、親衛隊の隊長であるため、陛下の不興を買うかと存じますが、それでもよろしいのでしょうか?」

 王妃の扇を扇いでいた手が止まる。じっと上からイージャを(にら)みつけるようにして、見つめている視線を感じた。

「出過ぎたことを言うでない!」

「いいえ、重要なことです。私が陛下の不興を買ってまで、死刑になる覚悟でそのようなことをしなくてはならない、その理由が見いだせません。」

 しばらく、王妃はイージャを睨みつけているようだった。

「はん。とんだ食わせ物だったわ。あやつめ、こいつなら大丈夫だとか抜かしおって。」

 王妃はブツブツ文句を言い、それからさらに付け加えた。

「よいのか?お前の幼馴染みがどうなっても?」

 露骨(ろこつ)(おど)してきた。

「それに、何もただでやれとも言っておらぬわ。お前が退職しても、一生遊んでいられるだけの金くらい、用意してやる。」

 その金は一体、どこから出て来るのか。そして、豪快に金を出すということは、用が済んだらイージャも殺すつもりだと考えていいだろう。イージャとて伊達に国王軍にいるわけではない。そういう裏社会で、頂点に立つような連中は恐ろしいほどにケチなのだ。

 捨て駒にするような男に、それだけの大金を払うということは、払うつもりがないので後で回収するつもりなのだろう。

「どうじゃ?やる気になったであろう?」

 どうやら王妃は、大金さえちらつかせれば、どんな相手も要件を呑むと思っているようだ。それに、イージャがその計画を実行した後、監獄に入れられるに決まっているのだ。セルゲス公の護衛である、親衛隊の隊長を殺すのだ。そんなことをすれば、逃げられない。必ず捕まり監獄行きだ。そして、死刑になるのは目に見えている。

「恐れながら、妃殿下。私ごときにそのような大金をお使いになる必要はございません。」

「ほう?ただでするというのか?ヴァドサ・シークに対する恨みはそこまで――。」

「違います。お断りさせて頂きます。」

 上機嫌になりかけていた王妃が、少ししてからバシン、と音を立てて扇を畳んだ。さらにバシン、と机に扇を打ち付ける。

「分かっておるのか?お前の幼さ染みが死ぬのじゃ!?良いのか?好いた女なのであろう?」

 王妃が怒鳴りつけた。我がままな女だ。どこかエーナと似ているかもしれない。自分の思った通りになんでも、素直に進むのだと信じ切っている。それが、上手く行かないと腹を立てるのだ。

「妃殿下。幼馴染みのことについて、どうして知っているのかということは、お尋ね致しません。ですが、それだけご存じならば、知っておられるはずです。幼馴染みは、せっかく助かった命も、どうして助けたのか、どうせなら助けなくて良かったと申しておりましたので、お構いなく。」

「…なんじゃと?お前の両親も一緒に死んでもいいのか?」

 もはや王妃の資格はないのではないか。堂々と両親を殺す脅しをかけてくる。愚かな女だ。内心でイージャは王妃を馬鹿にした。

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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