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教訓、四十九。いつも相手の気持ちに寄り添えるとは限らない。 4

 若様はシークに一緒に寝ようと言い出したので、フォーリに睨まれるのはごめんなので、必死になんとか諦めさせようとするが……。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

「でも、一緒に兄弟達と寝てた頃はしなかったんでしょ。それに、今度結婚する奥さんにはしなかったから、赤ちゃんができたんでしょ?」

「……!」

 サリカタ王国では、婚約して子供ができてから結婚する習慣である。無邪気になんと痛いところを突いてくるのか…!シークが冷や汗をかいていると、ベリー医師が吹き出して笑い出した。

「ぶふっ。く、はははっ!」

 思わずベリー医師を半目で(にら)みつけてしまう。

「若様、とにかくそれはできかねます。」

「どうして?」

 若様はそれこそ、どうして急にこだわりだしたのだろうか。なぜ、急にシークと一緒に寝たいのか。悪夢を見るのが辛いのだろうか。

「若様。恐い夢をみるから、一緒に寝たいんですか?」

 逆にシークが聞き返すと、若様は決まり悪そうに目を泳がせた。当たりのようだ。

「フォーリではだめですか?」

 すると、若様はうつむいた。

「だってね、フォーリは私が眠っている間もずっと起きてるんだよ。それじゃ、フォーリが休む時間がなくなっちゃう。」

 なるほど、それでフォーリがいない間に打診してきたのか。とりあえず、返事をする前にさらに聞いてみた。

「なぜ、ベリー先生じゃダメなんですか?」

「あのね、ベリー先生は寝相が悪いんだよ。だから、フォーリがダメって言うの。」

「……。」

 思わずベリー医師を見ると、なぜか自慢げに胸を張った。

「私の寝相が悪いのは本当ですよ。」

「若様、きっと私でもフォーリはダメって言うと思いますよ。」

「大丈夫だよ。フォーリはヴァドサ隊長のこと信用してるもん。」

 それとこれとは別なんですよ、ニピ族は焼き餅焼きだから、絶対にさせたくないはずなんですよ。心の中でシークは言う。だが、若様に直接言うのは(はば)られる。

「しかしですね、若様。万が一、何者かが(おそ)ってきた場合、私は剣を持ってがばっと起きますから、若様が巻き添えになるかもしれないでしょう?ですから、やはり一緒に寝ることはできません。」

 一生懸命、頭を使い、何とかひねり出した言い訳を述べる。

「……じゃあ、隣に寝台を置いて、手を(つな)いで寝てくれる?それならいいでしょ?」

 えーと……。どうやって諦めさせたらいいのだろうか。

 その時、後ろから殺気を感じた。

「ヴァドサ。若様がそこまで言われているのに、まだ断るつもりか?」

 思わず、ひっ、と後ろを振り返る。フォーリが真後ろに立っていた。地から響いてくるような声だった。いや、君が焼き餅焼きだからお断りしているんですがね!子守で小さな子に添い寝くらい、なんでもなくやってきましたけど、君が焼き餅焼きだから、危なくて頷けないんですけども。

「……。」

「ね、フォーリ、いいでしょ?」

 若様が両目を(うる)ませてフォーリに頼むと、フォーリは仕方なさそうに頷いた。なんだか、若様は最近、自分の容姿を上手く使うことを覚えてきてないか……?一体、誰がそんなことを教えたんだろう?思い当たる人物がいなくはないが……。

「…はい。私は今の時間、料理をしないといけませんし、その間。…その間、ヴァドサに頼むしかありません。」

 なんか『その間』と言った後、妙に声が低かったような気がしたが。

「……。分かりました。でも、護衛という立場上、完全に寝ることはできないので、側に座って手を握っているのはどうでしょう?」

「……。」

 物凄く妥協案を示したが、若様は不服そうだ。黙りこくってしまった。

「……ダメですか?」

「やだ。」

 珍しくはっきりと言う。

「だって、ヴァドサ隊長も寝ないとダメだって、さっきベリー先生が言ってたもんね。だから、寝ようよ。」

 賢いと、こういう時、騙されてくれなくて困るかもしれない。

 シークがどうしたものかと考え込んだ時、後ろに人影が差した。と思った瞬間、首筋がちくっとしてシークは眠りに落ちた。

「ほら、フォーリ、支えて。」

 犯人はもちろんベリー医師である。先日、フォーリにしたやつである。

「服を脱がせて、そこに上げるから。」

 ベリー医師の指示で、服を脱がせて強制的に寝台の上にのっける。

「あぁー、重い。」

 意識のない成人男性を運ぶのは至難の業だ。ベリー医師はやれやれと息をつくと、シークの短刀をフォーリが隣室から持ってきた枕の下に入れ、剣を胸に抱えさせた。すると、寝たままだというのに、しっかり剣を抱え込んだ。

「……これ、本当に眠ってるの?」

 若様が当然の疑問を(てい)した。

「眠ってます。さんざん治療してきましたからね。もう慣れましたよ。また、体調を崩されたら面倒ですからな。」

 そう言った後、ベリー医師は若様に向き直った。

「ほら、これで望み通りになりました。若様もちゃんと寝ておかないと。昨日はあんまり寝てないでしょう?」

「うん。」

 こうして、少々変わった王子様は悪夢を見ないように、父のように慕っている護衛隊長と一緒に寝たのだった。 

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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