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オルが死んだ理由。 2

 シークはフォーリから、なぜ若様が王太子タルナスと一緒に帰らない方がいいのか、理由を聞いた。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

「さらに、問題なんだが、あの男は王妃のこれからの計画についても話していた。」

 そう言って、意味深な顔でシークを見つめてきた。

「王妃は若様の名誉を(おとし)めるため、親衛隊や私と道ならぬ仲であると喧伝(けんでん)したいらしい。」

「……は?」

 思わずフォーリを凝視(ぎょうし)する。

「聞き違いか?」

「聞き違いではない。それに、あの方は前にも前科がある。」

 その通りである。

「だから、お前と仲がいいとまずい(うわさ)を垂れ流される。陛下がお前の結婚式を挙げるように厳命(げんめい)なさったのは、こういうこともあるからだろうな。」

「しかし、そうは言っても、お前はどうなる?護衛だから四六時中一緒にいるのは当然だろうに。それをなんやかんや言われると、大変困るな。」

「だが、そうしたいそうだ。だから、この村から一歩でも出たら、そういう噂を流される恐れがあるということを踏まえて行動しなければならない。」

 シークは思わずため息をついた。なんとも面倒な話である。だが、若様を守るためにはやるしかない。

「それから、もう一点。セセヌア妃にも気をつけた方がいいらしい。」

「セセヌア妃?」

 それを聞いて、大街道での事件を思い出した。煙に巻かれながら、敵を斬りまくって迎えた翌朝。早朝の薄暗い時間にやってきた男が、王妃の差し金ではないが、王宮からやってきたと言ったのだ。

「…もしかして。」

 シークが口を開きかけるとフォーリも頷いた。

「おそらく、お前が大街道で接触したという、男の主だろう。セセヌア妃は王妃を嫌っているが、王妃の鼻を明かすためだけに、若様を狙っているらしい。」

 なんということだろう。

「男の言った話の真偽のほどはまだ分からないが、私はおそらく本当のことだろうと思う。」

「それはなぜだ?」

「とりあえず、あの男の言う通りに、若様は殿下と一緒にお帰りにならないことになった。もし、裏をかいた罠で、若様がお帰りにならない状態で罠があったとした場合、今までの状況からして、すでに何かしら向こうからあっただろう。

 だが、今は静かだ。つまり、男の言う情報は正しいのではないかということだ。」

「だが、フォーリ。まだ、殿下はお帰りになっていない。完全にお帰りになり、それから二、三日経っても何もなければ、お前の言うとおり、あの男の言ってきたことは信憑(しんぴょう)性が高まる。」

 フォーリは頷く。

「もちろん、分かっている。今はまだ全く予断を許さない状況だし、何も分からない。それに、ベブフフ・ラスーカも一緒に帰らないように、随分(ずいぶん)熱心に勧めていた。」

「どういうことだ?」

「あの御仁は、王妃の言うことは仕方なく聞いているが、本当はあまり好きではない。あの御仁も一応貴族だ。そのため、王族である若様に、本当に手を出すのは良くないと思っている節があるようだ。若様は有力な王位継承権を持っている一人だ。

 王太子殿下は非常に切れるお方だ。そのため、こっそり乗り替えてもいいとさえ、考えているのではないか?自分達が御しやすい王の方がいいに決まっているだろう?国にとっては、それは不幸でしかないが、貴族にとってみれば、自分達にとって都合の良い王の方がいいからな。」

 シークが考えていたことをフォーリも考えていたらしい。

「つまり、若様の方が御しやすいと考えているということだが、その前にフォーリ、お前が今言ったことは、何かしら根拠があるのか?ニピ族の間で知っている情報でもあるのか?」

「……まあな。」

 少し考えてから、結局フォーリは肯定した。

「教えないぞ。でも、まあ、そういうことだ。」

 やはりそうらしい。ニピ族にはニピ族の情報網があるようだ。こちらもそういう情報網がなくて、大丈夫なのかと心配になる。結局、情報が戦局を左右する。どういう戦いでも同じだ。

 ヴァドサ家は真面目なもので、そういう情報網を持っているのか、父に聞いたことがないので、シークは分からなかった。多少はおそらく、総領だから知っていることなどあるとは思うが。

(私にもそういう情報網が欲しいなあ。しかし、国王軍にも必要ではないのか?一応、特別部隊がありはするが。)

「しかし、本当に都合が良い話だな。妃殿下が強いうちは妃殿下におもねり、もし、王太子殿下が自分達に都合が悪ければ、今まで妃殿下の命で冷遇していた若様を王位に即けようというのだから。」

 思わず呆れて口にすると、フォーリも頷いた。

「君達、本当のことだが今はまだ危ないよ。気をつけ給え。」

 今まで黙っていたベリー医師が口を開いた。どうやら、二人とも熱くなってしまい、声が知らず大きくなっていたようだ。いつもなら、気をつけているが、今日はもう疲れ果てているため、気をつけるどころではなくなっていた。

「すみません。」

「いやいや。いいよ。本当のことだしね。ただ、聞かれたらまずい御仁がまだ、逗留(とうりゅう)してますからな。」

 シークが謝るとベリー医師は軽く手を振ったが、実際のところ、聞かれたらそれではすまない話だ。自分達のことを棚に上げて何か罪をでっち上げられたら堪ったものじゃない。

 こうして、とりあえず三人の密談は終わった。

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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