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教訓、四十八。雨降って地固まる 6

 フォーリの提案通り、オルを泳がせることにしたが……。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 結果的に、泳がせたことでオルは死んだ。

 夜になってから逃走した。そして、フォーリは計画通り後をつけて行ったが、オルは死んでしまった。やはり予想通り、裏で糸を引いているのは、謎の組織“黒帽子”らしい。

 どうやら、フォーリはこうなることが分かっていたようだ。確かに、黒帽子なる組織は以前から冷酷だった。仲間も平気で捨て駒扱いだ。だから、必ず組織がオルの口封じに来ると考え、屋敷で迎え()たなくて良いように、オルに逃走させたようだ。

 今、屋敷には若様だけでなく、王太子殿下もいらっしゃる。それを考えれば、屋敷に迎え撃つのは危険すぎる。確かに、森に行かせた方がよほどいい。

 シークはできるだけ、黒幕の正体を暴きたいと思っていたが、かなり(むずか)しそうだ。オルも用済みだと判断されたらしい。

 しかも、ちょうどシークとフォーリがオルをわざと逃走させる話をしていた直後、村で火事があった。鐘の音が苦手な若様は、その音を聞いて怯えていた。フォーリがいなかったものだから、余計に不安に駆られたらしいが、セリナの機転でなんとか混乱して大声で叫ぶような状態にはならずにすんだ。

 おそらく、その火事も黒帽子の手による犯行だと思われる。商人達が泊まっていた宿屋で火災が起きた。何という手の回しようだろうか。幸いにして、怪我人はいなかったと聞いている。王太子殿下が来られるにあたり、道を広くして整備していたので、すぐに大勢で消火ができたから、最小限で済んだようだ。

 さて、フォーリが逃走したオルを追って、森に行っている間、もめ事が起きた。

 というのも、屋敷でつまみ食いした村娘が毒に当たって気絶するし、一応、犯人は捕らえたとはいえ、逃走したし、火事も村で起きたので、領主のラスーカ・ベブフフがこれは一刻も早く、王太子殿下に移動して頂こうということになって、早く帰るように催促したことで起きた。

 理由を告げずに、屋敷の玄関まで王太子を連れ出した所で、肝心のタルナスに黙って、勝手に村を後にするつもりだということに気づかれたのだ。タルナスだけを馬車になんとかして乗せようとして、何のつもりだとラスーカは一喝されていた。

 父のボルピス王譲りの迫力だった。事情を聞いたタルナスは、ラスーカ達を見据えた。

「ならば、グイニスも連れて行く。」

 王太子タルナスは、きっぱりと言う。もとより、彼は若様をここから連れ帰るつもりだったのだ。ラスーカが親衛隊にした嫌がらせにも頭にきていたらしい。正義感の強いタルナスには、とんでもないことだったのだ。

「いいえ、セルゲス公はお連れすることはできません。」

 ラスーカが反対する。

「なぜだ?こんなに事件が続いていて、危険だというのなら、グイニスも当然、連れて行くべきだ。」

「しかし、殿下。セルゲス公殿下とはお立場が違います。王太子とセルゲス公ですから、当然、王太子殿下の方が身の安全をよりはかるべきは、当然です。」

 もっともらしいことを言っているが、王太子とセルゲス公が仲良くするのを妨げたいだけだ。

 それを王太子は分かっているので、目を細めてラスーカを見つめた。

「ほう?それでは、昼間のことは私とグイニス、どっちを標的にしたものなのか、分かったとでもいうのか?」

 苦虫を()みつぶしたような顔で、ラスーカはいまいましげにタルナスを見つめている。口の立つタルナスに勝てないのだ。将来的に玉座に就いて貰いたい割には、冷たい視線だった。それもそうだろう。この王子は玉座に就いたら“絶対に”とつけていいくらい、思い通りにはならないだろうから。

「……お言葉ながら、おそらくはセルゲス公ではないかと思われます。そのようなことが多いので。」

「ならば、当然、グイニスを連れていくべきだろう?矛盾したことを言うな。グイニスを連れて行くことができないと言うのならば、今日はここに泊まる。」

 ラスーカは額に汗を浮かべながら、小さくため息をついた。

「…ですが……。」

 さらに食い下がる。シークは若様の小さな背中に手を当てていた。フォーリがいないので、代わりに側に控えている。ベリー医師も側にはいるが、いつの間にかフォーリがいない時はシーク、と若様の中で決まっていた。

 だから、若様は今、こっそりシークのマントの端を握りしめながら、緊張してタルナスの隣に立っている。反対の手は、タルナスにしっかり握りしめられていた。決して放すまい、とタルナスの手に力が入っている。

 ふう、とこっそり息を吐いて、若様がシークの方に寄りかかってきた。緊張で疲れてしまったのだろう。あまり、寄りかかっているのが気づかれないよう、そっと体勢を代えた。傍目には立っているように見えるが、背中から寄りかかっている。

「お前達が何がなんでも今夜出発するというのなら、私は必ずグイニスを連れていく。」

「ですが、セルゲス公はここにいるようにとの陛下のご命令です。逆らうわけには参りません。」

 ラスーカが反論する。

「ならば聞くが、お前達はグイニスの安全の保証ができるのか?」

「お連れしたところで、安全の保証ができるわけでもありません。」

「つまり、私もいるのに襲撃(しゅうげき)される恐れがあると?お前は私を害する者がいるということを言いたいのか?」

「…そういうことではありません。」

 タルナスの弁は冴え渡っていて、ラスーカは辟易(へきえき)としているように見える。

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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