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王太子タルナス 6

 シークは、王太子タルナスとの面会が続いていた。タルナスはシークに、もっと自分の身の保身を考えるように言い出す。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 タルナスは少しの間、うつむいていた。

「だが……お前、父上に何か言われているのか?妙に私に王位に就けと言っているような気がする。」

 その辺はタルナスには話さない方が良さそうだと思い、王に内戦を防ぐためなら、何をしてもいいという命を受けた話はしないでおくことにする。

「陛下の意向だろうとなかろうと、私は感じたことをお話申し上げただけにございます。」

 タルナスが(うつむ)いていた顔を上げて、シークを見つめた。

「お前の感じたことか?」

「はい。」

「そうか……。それにしても、ずいぶん正直に全てを話すのだな。私はそのことの方にびっくりした。」

 それは、タルナスの父であるボルピスにも言われたことだったので、思わずシークは苦笑を浮かべてしまった。

「何を笑っている?父と何か話したのか?」

 やはり、鋭い。

「はい。陛下にも同じようなことを指摘されましたので、思わず思い出してしまいました。言質を取ったつもりはなかったのですが、結果としてそうなってしまい、結局、陛下のお怒りを買って鞭打ちの刑を受けました。」

 すると、タルナスとメイルスの両目が落ちんばかりに見開かれた。ポウトは落ち着き払っている。つまり、ニピ族の情報網で聞いていたのだろう。ということは、どうやらシークが鞭打たれた件は、他言無用の話だったのだろうか。

 ボルピス王は、シークの恋文の話など、どうでもいい話は息子にしておいたくせに、鞭打ったという件は話していなかったようだ。さすがの王でも、あまり公にするのはまずいと判断したのだろうか。

「鞭打ちの刑を受けただと?まさか、本当に受けたのか?」

 タルナスの表情が険しくなった。その表情から、全く知らなかったというより、本当にあったことなのか真偽がつかなかったという所だろうか。

「はい。」

 すると、タルナスは怒りで頬を紅潮させた。興奮して立ち上がり、まっすぐにシークを見つめて言った。

「あり得ない。親衛隊の隊長を鞭打っただと!?前代未聞だ……!」

「……そうなのですか。」

 シークとしてはそんな実感は全くないが。仕方ないことだから、そういうことで片づけられている。それに、父に理不尽な扱いを受けていたと思っていたことに比べれば、どうでも良かった。

「何を人ごとのような顔をしている…!」

 タルナスは怒りだした。

「申し訳ございません。」

 とりあえず謝っておく。

「お前、全然分かっていないようだ…!良いか、親衛隊は名誉な職分だ。その親衛隊の隊長は、王や王族を守る専属の兵士だ。だから、王や王族の身辺を守る者を鞭打つなど、それは、お互いの信頼関係が損なわれた可能性も示唆(しさ)しているのだぞ!」

「……別に陛下との信頼関係を損なわれたとは、思いませんが。」

 シークの返事に、タルナスは目を見開いた。

「そして、お前、父上に注意されていながら、なぜ、私に何もかも素直に話しているのだ!もっと、気をつけて嘘でもつかないといけないだろう…!」

 なぜか、嘘をつくように言われて、シークは納得できない。

「嘘をついても、意味はありません。私は聡明でいらっしゃる王太子殿下に嘘を申し上げても、きっとすぐに見破られると思いましたので、嘘をつくことは最初から考えませんでした。」

 タルナスが一瞬(いっしゅん)、言葉を失い、口を開きかけたが、もう一度閉じて今度はぎっと引き結んだ。

「それに、私は嘘をつくのが苦手です。一度、陛下に嘘をつこうとしましたが、即座に見破られたため、それ以来、聡明で身分ある方の前で嘘をつくのは、やめることに致しました。」

「お前、馬鹿なのか?私ならまだしも、なぜ、父上の前で嘘をつこうとしたのだ?父上は、嘘をつかれるのがもっとも嫌いなのだぞ。」

 ああ、やはりそうだったのですね、と思ったが現実問題として王は許してくれた。それはシークが部下を守ろうとしてのことだと理解してくれたからに他ならない。

「とにかく、お前、もう少し身の保身について考えろ。グイニスの護衛なのだ。妙な言いがかりをつけられて、護衛できなくなったら困る。お前のことはグイニスも信頼しているし、フォーリもいなくなったら困ると言っていた。」

 なるほど、フォーリが話してくれたから、若様が襲撃(しゅうげき)されてしまうという失態をおかしたのにも関わらず、こうして話す機会を設けてくれたということなのだろう。

「嘘も方便という。もっと、嘘をつく練習が必要だ。特に、ベブフフやトトルビのような者達の前で、本心を素直に話してはいけない。正直なのは美徳だが、お前の場合、それが命取りになる可能性がある。」

「ご忠告、感謝申し上げます。」

 とりあえず、心配してのことなので礼を言っておく。

「なんだか、伝わっていない気がする。」

 タルナスがぼやく。

「絶対に、トトルビやベブフフの前で正直に何でも話してはならないぞ。」

「気をつけます。私もあの方々には注意が必要だと考えておりますので。」

 タルナスは少しだけ安心したように頷いた。

「さすがにのんき者のお前も、あれ達は気をつけなければいけないと思ったか。」

「はい。そういえば、彼らには毒を飲まされたのでした。」

 さすがにその件は知っていたようで、タルナスは深いため息をついた。

「そういえば、そうだった。体の方はもう大丈夫なのか?」

 タルナスが心配そうにシークを見つめる。

「この通り、回復致しました。ご心配頂きまして、痛み入ります。」

「…まあ、いい。それから、母上には要注意だ。」

 まあ、当然だろうな。と思いつつも、素直にシークは頷いた。

「分かりやすい者達だけではないぞ。気をつけなくてはならないのは。特にレルスリは要注意だ。穏やかな笑顔を浮かべているが、何を考えているのか腹が読めない。父上も一目置いていて、大層気をつけている。もっとも敵に回したくない人物だと言っていた。」

 タルナスの評価に対して、シークはそんなにバムスが危険だと思えなかった。それに、バムスは今、行方不明になっている。彼に多くの手助けを受けた。

「何か言いたそうだな。」

 話すように促されて、仕方なくシークは答えた。

「レルスリ殿は、私の命の恩人です。私だけではなく部下達、また、セルゲス公殿下のことも助けて下さいました。難しい局面がいくつもあり、レルスリ殿がいなければ、今こうして王太子殿下とお話申し上げることも敵わなかったと思います。」


 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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