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王太子の来村 6

 王太子タルナスは、従弟のグイニスの部屋が小さいことに疑問だった。フォーリから説明を受けて、庭木を切り落としただけで、料金を取られる状態だと知り、怒りに震える。


 ファンタジー時代劇です。一般的な転生物語ではありません。洋の東西を問わず、時代劇や活劇がお好きな方、どうぞお越しください。

 意外に頭脳戦もありますかな……。そこまで難しくないので、お気軽にお読み下さい。意外にコメディーかも……?


 転生はしませんが、タイムスリップや次元の移動はあります。(ほぼ出てこないので、忘れて読んで頂いてけっこうです。)

 タルナスは、グイニスがヴァドサ・シークをかばっている事に気がついた。そうだ、タルナスならば、あの毒入りパンと襲撃(しゅうげき)事件だけで、十分に親衛隊を代えるために動いておかしくないからだ。

 グイニスは開口一番に自分のことではなく、ヴァドサ・シークのために弁明を始めた。自分のことを話しながら、自然とそこに触れている。いつから、こんなに頭が回っただろうか、と考えて、昔からできが悪かったわけではなかったことを思い出した。

 ただ、とてもおっとりしていた。人を()めたりそんなことには、その回る頭を使ったことがない。とても優しい子なのだ。

 疲れている様子のグイニスに、横になるよう促した。先ほどは走ったりしたから、きついはずだ。

「グイニス、横になるんだ。なぜ、お前の部屋にしたかといえば、お前を休ませるためだ。私の部屋にすれば、お前は休めないからな。さあ、早く横になれ。」

「…え、でも、従兄(あに)上。」

 グイニスは困ったようにおろおろした。

「いいから。」

「ですが……。」

 それでも、グイニスは寝ようとしない。

「大丈夫だ。お前が具合悪いからって、誰かを罰したりしない。」

 仕方なくそう言うと、ようやくグイニスは頷いた。フォーリに手伝って貰いながら寝間着に着替え、横になる。それだけで、どこか疲れているようだった。布団に入ってほっとしたのか、グイニスがふぅ、と大きく息を吐いた。

「ところで、グイニス、この部屋で不便ではないのか?お前だったら、もっと広い部屋でもいいだろうに。」

 すると、困ったようにグイニスがフォーリに目を向けた。なるほど、フォーリがこの部屋にするように言ったのか。何か理由があるはずなので、タルナスはフォーリに目を向ける。

「……殿下。私から説明申し上げてもよろしいでしょうか?」

「それを望んでいる。」

 フォーリがはっ、と頭を下げて説明を始めた。

「実は殿下が来られる前まで、屋敷に生えている木を切ってはなりませんでした。少なくとも、庭に生えている木を切れば、枝一本当たり、5セルの料金が発生することになっていました。」

「何!?ベブフフがそう言ったのか?」

 一瞬、何を言われたのか理解できなかった。庭木の枝にさえも料金をかけたというのか!?なんということだろう。どこの暴君の税金制度だ、と怒鳴りたいほどだ。それだけで、頭から湯気が出そうなほど怒りがこみ上げてきた。

「はい。ですから、仕方なく殿下の安全をお守りする名目で木を切るまで、枝の一本も切れず、できるだけ枝の張りだしていない、それでいて若様のお部屋にするに十分な部屋にしました。

 南向きで鬱蒼(うっそう)と茂っていましたが、雨戸を壊していて、屋根にも影響があると伝えた所、自分達で切るなら切っていいと許可が出ましたので。」

 フォーリはここぞとばかりに、ベブフフ・ラスーカの仕打ちを告げてきた。

「……そうか。」

 タルナスは親衛隊の報告に、今の話がなかった気がすると問い詰めたかったが、そうすれば父王から読ませて貰ったことが明るみに出てしまうので、黙っていた。

「それで、雨戸と屋根は誰が直した?」

「自分達で直しました。さすがに屋根は職人に来て貰いましたが。」

 フォーリの答えにタルナスは眉をひそめた。

「お前が屋根に上ったのか?」

「いいえ。親衛隊がほとんど行いました。私は手が足りない時だけ手伝いました。」

 思わずタルナスは目を見開いた。親衛隊がそれをできるとは、普通は思わない。

「……まさか。」

「殿下。それにつきましては、後ほど詳しく申し上げます。」

 フォーリが言ったので、タルナスも頷いた。今、そのことについて詳しく話せば、せっかくのグイニスとの話の時間がなくなってしまう。

「分かった。それにしても、グイニス。とんだ苦労をしているな。ヒーズでさえも田舎なのに、さらに田舎に追いやるなど、本当にけしからん奴だ、ベブフフは。」

 タルナスは切れる王太子だから、そのようなことが言えるのだ、とは考えていなかった。タルナス自身、自分が切れ者だとは思っていない。嫌味な奴だとは自覚している。父の方が切れ者なので、自分が切れ者だとは思えなかったのだ。

「従兄上、そんなに怒らないで。私はそんなに不満に思っていないよ。」

 グイニスはようやく昔のように親しい口調に戻ってきた。

「そうなのか?どうして?」

 タルナスが聞くと、グイニスはとても嬉しそうに笑った。

「だってね、自然がいっぱいあって落ち着くんだ。緊張しなくていいよ。周りにいるのは、見知っている人達だもん。村の娘達も屋敷の手伝いに来ているけれど、そんなに緊張しなくていいしね。」

「そうなのか。グイニスが楽しいならいいけれど、私はとても心配だ。」

 星河語ほしかわ かたり

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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