アイリ、お墨付きを得る
愛理ちゃん、夢の魔法使いに!
──パチパチパチパチッ
「おお〜お嬢様! お強くなられましたな……!」
「あっ、ジェスパーさん! こんにちは〜! お騒がせしてごめんなさい!」
ジェスパーさんが、小屋から拍手をしながらやってきた!
ジェスパーさんは今日もにこやかで良い人オーラが漂っている。
「いやいや、お嬢様の魔法は無駄がなく美しい!! さすがお嬢様、可愛らしいだけでなく、こんなにお強いとは……!
このジェスパー、魔法と魔道具に関わる者として興奮せずにはおられません!!」
「ま……まぁ……ありがとう……?」
「次は、私の土の壁を相手にしてみるのはいかがでしょう!?」
ジェスパーさんは何故か鼻息荒く嬉しそうにそう言うと、2mほどの土の壁を作り出した。
「わぁ……大きい土の壁ですね……!」
「ジェスパー、練習に付き合ってくれて助かる」
「いえいえ若様! 私はお嬢様の魔法が見れるなんて嬉しくてたまりません! お嬢様! ぜひ遠慮なく壊して下さいませ!」
──ん〜、土の壁、かぁ……
きっと家の砂壁みたいに湿気には弱いよね? 土だもの。
水で包んでふやかして泥化……ってできる?
とりあえず、イメージよね! そうよ! 田んぼを思い浮かべましょう!
『水で土壁を包んで! ふやかしつつ、水流渦をまいて泥にして!』
「わぁ、泥になった!」
「お嬢様このままですと泥団子が飛びますぞ!」
「それはドレスが汚れてしまうわ!」
『水を増やしながら平らに! 泥よ凍れ!』
──更地の一角に小さなアイスリンクができた。
「凍らせられた!」
「おお……っ! 平らですな!!!! お嬢様は上級の氷魔法までお使いになるとは……! 素晴らしい才能でございますな!」
──氷の魔法は難しいらしい、っと。
「ジェスパー、アイリーンに向かって威力抑えめで、土団子をいくつか飛ばしてみてくれないか? 危なそうなら俺とエミリーが止めるから、やってみてくれ」
「ええと……お嬢様、いいのですか?」
ジェスパーさんは困ったように私を見つめてきた。
でも、きっとジェスパーさんは先日の魔法を見ても、魔法のコントロールは上手いと思うから危険な目には遭わないと思う!
「──ええ! 最終的には、自分の身を守れるよう、防御魔法を身につけるのが目的ですもの! お兄様もエミリーもいますし、遠慮なくお願い致します!!」
「──かしこまりました! いきます!!」
──シュッ!! ドドドドッッ!!
土団子がいくつも飛んできた。
なかなか早いし、当たったら痛そう……というか! 家用とはいえドレスが汚れるわ!
『目の前に水の盾! できれば粘度のある固めのジェルみたいな状態、内側に氷の壁っっ!!』
高速でイメージを脳内に描くと、目の前にブニブニしたスライムのような液体が広がり、土団子はそのジェルに絡め取られて止まった。
「おおおおお! 水に粘りを出すことで、攻撃がすり抜けることを阻んだのですな! さすがお嬢様! 賢くていらっしゃる!!!!」
「──もう教えることはないな。明日からはとりあえず自主練」
「え、お兄様、もういいのですか……?」
「あぁ。エミリーは強いから、相手してもらうといいだろう。もし、ジェスパーが忙しくなさそうであれば、練習に付き合ってもらいなさい。ただし、危ないマネはしないこと」
「危ない練習しないと身を守れないのでは……?」
お兄様……困った子を見るような目……ジト目で見つめてくるのはやめてください……!
「かしこまりました! 私もお嬢様の護衛侍女として魔法を磨きます!」
「若様、かしこまりました! お嬢様、いくらでもお付き合い致します! 何度でも土の壁をお出ししましょう!」
「ふ……二人ともよろしくね……?」
──なんと……! 一日でお兄様からお墨付きをもらってしまった……!
そして、何故かエミリーとジェスパーはノリノリで練習に付き合う気満々に見えるんですけど……?
そんなに、私と魔法鍛錬するの楽しい……?
明日からは自主練! 頑張って強くなろう!
エミリーとジェスパーがいたら、いっぱいパターン楽しめそうっ!
どうでもいい一言。
私の父は元射撃の名手で、昔、五輪強化合宿の選手でした笑
私はてんでダメですが、弟は射撃(的当て)が得意で血筋だなって思います。笑