SIDE:カミーユ─アルノーを呼ぶ─
カミーユとアルノー回。
カミーユ視点。
───王城内 国王執務室
「騎士団長バティスト・アルノー参上致した。」
「ああ、アルノー殿久しぶりだな。よく来てくれた! 入ってくれ。」
カミーユが促すと、筋骨隆々とした中年の武人が姿を現した。
「お久しぶりですな! 陛下…頼みとは…?」
「機密が絡むので、部屋に防音魔法を掛けさせて頂く。
先代から仕えてもらっているから信頼しているが…アルノー殿、これから話すことは他言無用でお願いしたい。」
「──承知致した。」
カミーユは執務室にアルノーを招くと防音魔法を掛けた。
室内には、カミーユと、側近エミール、騎士団長アルノーのみになった。
「──実は、僕の婚約が決まった。相手はベルチェ公爵家のアイリーン嬢だ。」
「おお…ついに陛下もご結婚ですか。
ベルチェ家、それも賢くていらっしゃるアイリーン嬢であれば、王妃に相応しいでしょうな。先代もご存命ならばお喜びになっただろう。」
先代の2人を想い、うんうん、と彫りの深い顔をにこやかに崩しアルノーは喜んでいた。
「アイリーン嬢は、実はもう死んでいる。
亡くなる前、同意の上で"仮死の魔法"で肉体と魂を切り離し、肉体は状態保存を掛けていた。
僕の"運命の人"が"聖女様"であり、衰弱していたアイリーン嬢の体が、この国を救う聖女様の器として最適だ、と占いによって知り召喚した。」
「召喚した今は、アイリーン嬢の肉体に、異世界から召喚した女性の魂を移している。
聖女様には、アイリーン・ベルチェとして、この世界で過ごしてもらうことになった。」
「……! なんと…! 衰弱していたという噂は聞いておったが…お若いのに亡くなられておったのか…!?
……そして"聖女様"がおられるとは…!!」
驚くアルノーに、カミーユは頷き言葉を続けた。
「アルノー殿も知っての通り、僕は精霊によって加護を受けたおかげで、父上やアイリーン嬢のように衰弱まではいかなかった。
だが、死霊につきまとわれ、体調はずっと思わしくなかった。年々悪くなっていく一方だった。」
「──"聖女様"は、元の世界の何か特殊な存在からの加護、そしてこの世界で得た光の精霊による加護。2つの"加護持ち"だ。
元々、精霊、死霊、魔力を見る能力、霊が良いものか悪いものか判別できる能力があった。光の精霊の加護により、更に悪霊を浄化する能力を得たのだ。僕は彼女に救われた。」
次々と告げられる事実に驚くアルノーを見つつ、カミーユは本題に入る。
「それだけの特殊能力、1つでも貴重なのに、複数持っているんだ。きっと、知られれば彼女は確実に狙われてしまう。
このことを知っているのは、僕、僕の側近エミール、宰相、神殿長、ベルチェ家執事、アイリーン付きの護衛侍女、そしてアルノー殿のみとなっている。」
「このメンバーで、聖女様を狙う者が現れないよう、この能力を他者には知られないように動く。そして、万が一、危険な状態に陥った場合は全力で守る。
アルノー殿には、聖女様の能力を騎士たちには知られることなく、アイリーン嬢を警護する任をお願いしたい。腕が立ち、そして忠誠心のある者を付けてやってほしいのだ。」
アルノーは、騎士として働き始め20年程経つが、今までで一番機密性が高く難しい警護の任に、驚きと不安を覚えた。
しかし、それ以上に騎士としての情熱が燃え上がるのを感じた。
「承知致した。近衛の中でも国への忠誠心が強い者をお付け致しましょう。婚約までは動かず、婚約が発表されてからが宜しいでしょうな?」
カミーユは頷く。
「婚約は約3週間後。婚約のお披露目は、夏のガーデンパーティにて行う。
結婚は半年後の王城での豊穣感謝祭までに行い、夜会にてお披露目を行おうと思う。先代も居ないことだし、僕は派手なことは嫌いでね。王城内で内々に結婚式は行う。」
「アルノー殿には、1ヶ月後から、アイリーン嬢が登城する時は、警護をお願いしたい。
側近のエミールに、このメンバーのみ共有できる情報網を作ってもらっている。アルノー殿にも活用してもらいたい。」
「承知致した! 全力で護衛させていただきます!
陛下を狙っていらっしゃる年頃のご令嬢も多いでしょうから…何も無ければ良いのですが。」
──カサッ
アルベールからのメモが届いた。
「──ふふっ…
アルノー殿…"聖女様"は、どうやら魔法もお強いようですよ…」
カミーユはアルベールからの、魔法講義とアイリの"初めての実践"の様子が書かれたメモをアルノーに見せる。
「っっ!!!!
……初日で、ご令嬢がここまで魔法行使できるとは…!鍛錬したら、どこまでお強くなられるというのか…!!!
前代未聞ですぞ…!」
──アルノーは騎士選びに悩んでいた。
アルノーは、先代の王に憧れ騎士になった。
武器の使い手としてなら、確実にこの国のno.1の強さ。職務に忠実な男の中の男。




