第29話【絶望に抗う】
――全員、戦闘態勢。
構えた先には、膨大かつ邪悪なオーラを醸し出す5体の精鋭――それは、悲しいことに、かつて好敵手だったものだ。
もはや規格外の戦闘力を誇る、上位妖魔の更に上の存在……間違いなく、いや100パーセント私には勝てない存在が、正面にそれぞれ並んでいる。
――そのどれもが、無表情だった。
グオオオォォォォオ!!!!
全長5メートル級。理性を完全に失い、漆黒の翼を羽ばたかせたソシオが、強力なオーラを纏い突進してきた。
途轍もない速度で、私たちとの距離を一瞬で縮める。
獣化の持てる力をフルに発揮すべく、4人が4人とも能力を発動した。
「――『海馬破壊』!!」
「――ッ『スライドシュレッダー』!!」
「――『未視感の罠』」
「――『プレッシャーダイヴ』ッッ!!」
……上手い。互いがぶつからないように、咄嗟にテラとジータスが大きく跳躍。左右からケーボーイとスポーンが足止めの一撃を放つと同時に、二人も上から攻撃を合わせる。
斬撃、衝撃、打撃の激しい轟音が鳴り響いた。爆発したような威力こそあったが、粉塵は舞わない。
ここは、まるで宇宙空間。私にも直撃の瞬間が視えた。だが――
「あぁっ!!」
ケーボーイが吹き飛ばされ、私と重なるように後方へ転がる。
幸せ……って今はそんなこと思ってはいけない!
「うっ、音咲さん……ごめん」
「ありがとうございます!」
我慢が出来ず、即答した。我々の界隈にとってこれはご褒美です!!
「ちっ、クソが、ノーダメージかよ!!」
「体制を立て直すしかないね……はっ!?」
空中のテラ目掛けて、巨大な拳が強襲する。変化した者の中でも最も巨大な、全長10メートル級の彼女は、大喰いと呼ばれていた女性。
咄嗟に両腕を組んでガードするも虚しく、テラもまた吹き飛ばされた。
「……くっ、カンナ……デジャヴが、発動しない……さすが格上……ゴホッ!」
吐血。それもかなりのダメージを負ったように見える。
「テラッ! ……っおらぁ!」
すかさずニッタが駆け寄り、見かけとは裏腹の、超速を身に付けたカンナの豪快な蹴りを防いだ。
「――『無限バリア』だ。これは破れねえぞ」
倒れたテラの前に立つニッタは、両手を広げて、スクエア型の特殊なオーラで自身とテラを包む。
追撃こそ防げたものの、成す術が見つからない。
――ジータスが着地した瞬間、軌道を瞬時に変えて、ケンタを抱き抱えるように飛ぶ。
元いた地点には、まるで隕石のような毒々しい歪な物体が幾つも降り注いだ。
「……ウイルスの具現化か? 危なかった……!」
放ったのは、全長3メートル級へと変化し、一際大きな翼を持つ、美しくも邪悪に満ちた偽善。最初は男性だと思っていたが、ジータスは彼女のことをアカリと呼んでいた。
「ジータスさん、すみません」
ケンタを支えた手を肩に置き換え「ここは『ありがとう』だぜ」と格好良く決めるジータス。
一瞬の油断を狙ったかのように――矢継ぎ早に、今度は射程外から鋭いビームが二人を襲う。
「うぼあぁぁ!?」
「ッおああぁ!?」
焼け焦げるような匂いの強烈な熱線が、身を捻ったジータスとケンタの間を通過した。
発動したのは、頭にUFOのようなものを乗せた、全長3メートル級のBOTだ。
「あ、あぶね」
「い、今の食らったら、死にますね」
僅か数秒で陣形が崩された。正直、大ピンチだ。
ここで、様子を見ていた元凶である法則が、クールな素振りも見せずに、初めて高笑いをする。
「――はぁーっはっはっは!! どうやらチームビーストは本日をもって解散のようですね!!」
「……ゆ、ユウ!」
舐るように、見下すように、高い位置からの物言いは、私たちの心を抉る。
「……ミッション達成は目前のようなので、私はここで失礼しますよ。後ほど、タツヤの遺体だけを回収に来ます。では、最後まで悪あがきをどうぞ――」
ブゥンッ!!
狭間から法則の気配が消えた。
チームダークの勝利を確信してのことだろうが、たった一体……いや、一人だけ抗う者がいた。
「ッルシアああああ!!」
全長2メートル級……明らかに他の者より小柄だが、邪悪で巨大な黒いオーラを纏っている。
彼は俯いたまま最初から一歩も動かない。元々ゲームと呼ばれ、私たちを挑発し、生徒達を恐怖のどん底へ陥れた存在なのだが――
――スポーンは、彼の名を呼んだ。
「てめェ、俺と現実世界で闘いたかったら、自分に負けるんじゃねェぞ!! ぜってェ諦めんな!!」
声も届いているのかわからない。スポーンはただ、励まし続けた。
彼は、微動だにしない。
私はその場面を見て、何か内側から込み上げるものを感じた。……これだ!
「――みんな、作戦があるから聴いて!!」
動けるメンバーが注目した。無論、敵は攻撃を止めるはずがない。
それでも、ほんの僅かな時間が欲しい!
「(スミカ……いいよ、そのまま話して――あたいが伝える)」
ッ!! テラだ!
瀕死のテラが能力で伝達してくれている。今しかない!
「私とケンタとニッタの3人で、ノバフラの楽曲を演奏するッ!! 回復と能力向上と……もっと凄いことが出来ると思うの!」
私の能力――『最推し活動』で皆を救う。
全く歯が立たない現状を打破するには、これしかない。
しっかり聴き耳を立て、ケーボーイもジータスも、スポーンも私に応えてくれた。
「てめェ、スミカ!! 急げ!!」
「オーケェ……10秒ならイケるぜ」
「ここは僕たちが食い止める!!」
無造作に襲ってくる4体の怪物は、どれも一撃で命を奪える力を持っている。
一瞬の判断ミスが命取りになるというのに、迷わない獣は止まらない。
「ケンタ、こっち!」
「う、うおお!!」
激闘の間をスライディングで抜け、ニッタのバリアまで全力で移動したケンタ。
同時に私も、必死にニッタの元へと辿り着いた。
「音咲、指示をしろ!」
阿吽の呼吸で、3人の眼が合う。私は自身のオーラを全身に纏い、直ぐに行動に移す。
「ケンタは3体の骸骨を召喚して、ニッタはその骸骨に無限の力を与えて!」
「――『骸の山・トリオ』!!」
ケンタは返事の代わりに能力を発動。背後に亀裂が走った。
この骸骨の出現までに、説明を続ける。
「骸骨はケンタの指示には絶対服従だよね、彼らにノバフラの楽曲演奏を練習させて欲しいの! そこでニッタの圧縮された時間……無限を利用して、一瞬でマスターさせて!! ボーカルは私!!」
「でっ、でき……わかった、やるよ。選曲は?」
まずは回復、そして身体能力向上。更に――上手くいくかわからないけれど。
「『リカバリー』『アンビション』、そして『ディシーヴ』の3曲でいくよ。ニッタ、知ってる?」
ニッタはバリアを解き、攻撃の手がこちらに届いていないことを確認した。
今この瞬間も、3人が闘ってくれている。
髪を手でバサッと仰ぎ、眼鏡の奥で瞳がキラリと輝く。
「音楽教師舐めんな。彼らと出会ってから、ノバフラの全楽曲を頭に入れた。役割を決めて、私の脳内再生を――」
ケンタが出現させた骸骨の剣士たちに、ニッタの赤色のオーラをぶつける。
「――『終わりなきレッスン』!!」
ドゥルルルル!!
無限の時間を駆使してバンド練習をした骸骨。更に、ケンタの召喚能力で持っていた剣をギターに、ベースに、ドラムに変化させた。
「よし、いけたぞ。こいつらはプロの演奏家だ」
「でも、まずいよ音咲さん! 僕が創造した楽器だから、音がちゃんと出るかわからないよ!?」
ケンタの不安はごもっとも。でも安心して欲しい。私には秘策がある。
「大丈夫、私はこの能力を昇華させた……そこに魂さえあれば、エアバンドで完結できる!!」
ニッタとケンタは声を揃えた。
「「エアバンドぉぉぉ!?」」
ケーボーイを私の中に取り込む……いやこの表現は気持ち悪いな。
魂に憑依させるように、完全コピー、略して『完コピ』で推して参る!
「行くぞ『リカバリー』!!」
音咲スミカ、歌います!
「いや、音咲さん宣伝を……」
ボーイズビーアンビシャス♫
「あっ、これはダメなやつだ。湖沼ケンタ、宣伝します! 感想、⭐︎評価、ブックマークにレビュー、更に今だとリアクションという表現もあるようです! ぜひ、宜しくお願いしますッ!」
〜〜♫
「あっ、続いてる!? 次回もお楽しみにッ!」




