表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

九章

 その瞬間は無音だった。草木が揺れる音はおろか、風の(うな)りさえ無かった。(さい)とて警戒していた、完全な感覚遮断ではなく、あるていどの気配は読むようにしていた。しかし、そもそも気配がないのであれば、彩が察知できようはずがない。

 ――しかし。

 彩は気づいた。

 直感が囁いたかのように、背筋を貫く冷たい感触――。

「……!」

 彩はその直感にしたがい、振り向きざまに腕を()いだ。視覚も、聴覚からの情報もなく、ただ感じ取った直感だけで、彩は襲撃者を迎え撃った。

「――――ッ」

 攻防は一瞬だった。襲撃者はあっさりと彩の攻撃に弾かれ、しかしそれだけで戦意を喪失するほど、甘くはなかった。襲撃者は彩からの反撃を利用し、すぐさま森の闇に消えてしまった。

 ――さああああぁ。

 音はする。しかし、それは風と聞き違えてしまいそうなほど弱く、集中を切ればすぐさま見失ってしまいそうだ。

「…………っ」

 誰だ、と叫びそうになるのを、彩はなんとか(こら)える。闇討ちを仕掛けてきた相手だ、真っ当に姿を見せるはずもないし、なにより、自分の声で相手の位置を見失ってしまっては意味がない。

 じっと、彩は周囲の木々へと視線を向ける。長時間、外に出ていたんだ、影になっているとはいえ、夜目は()く。しかし、相手もそのことは承知だろう、音は隠さなくなったとはいえ、姿は見せない。当然、彩は聴覚にも意識を向けている。しかし、人の走る音とは違う、まるで風が囁いているような弱い音が周囲を取り囲むばかり。

 ……そう。

 それは取り囲んでいるかのように……。

 正面にいるとは限らない。右か、左か。あるいは、すでに後ろを取られているのか。それすら判然としない、か細い気配。

 ――と。

 彩の緩めた感覚に、その気配が触れる。背後から襲いかかろうとする、冷たい感触。

「……っ」

 再度、彩は振り向きざまに腕を振る。自身の腕が空気を裂いた鈍い音と、襲撃者と接触した重い手応え。しかし、その攻防はほんの一瞬。襲撃者は彩からの攻撃に逆らわず、そのまま闇の中へと舞い戻った。

 襲撃を防ぐことを()くあまり、彩はいまだに相手の容姿を確認できない。頭上、木々を移動する音が聞こえる。いや、それも相手が宙を舞った影を見たからで、実際には風が囁くていどの音しか聞こえてこない。

 ――なんなんだ、こいつ。

 あまりにも、気配が希薄すぎる。二度も攻撃されているのに、いまだに姿を確認できないなんて。

 ――また、襲撃。

 今度は頭上から――。

 首筋に走った寒気から、彩は振り向きざま、拳を振り下ろすように相手と打ち合う。襲撃者も彩の反撃を予想しているように、やはり姿を見せるようなことはせず、流れるように闇の中へと這って消える。

「…………」

 すっ、と。

 彩はかまえを解いた。

 ――いい加減、反撃が入らないと相手の正体も掴めない。

 さああああぁ、と。風に似た音だけが耳に入る。もはや相手の姿を追う必要も、音の発生源を探る必要もない。足音を殺し、気配さえ殺す相手に、しかし彩はすでに勝機を見出している。暗殺者としては完璧なようでいて、その致命的な欠陥。

 彩は両手に手袋をはめたまま、しかし、戦闘のために最低限の感覚は活きている。

 ――ハイゴからのツメたいカンショク。

 音が止まる。闇に空白が穿(うが)たれる。それは正確に獲物を狩る、知覚不能な弾丸。

 ……そう。

 放たれてしまえば、それは知覚できない。

 だが、攻撃の瞬間、それは標的をロックするために殺意を放つ。しかも、襲撃者の攻撃は正確に過ぎる。彩の隙をつくため、攻撃は必ず背後。さらに、反撃されてもすぐに姿を隠せるように、彩の視界のギリギリだ。また、到達時間も予想できる。無音で周囲を駆け回り、相手を撹乱しようとも、攻撃の当たる射程範囲ちょうどから飛び出すのでは、タイミングの外しようがない。

 ――だから、彩はそうした。

 今度は手を出さない。上半身を下げ、その反動で足を振り上げる。単純に、攻撃手段を殴ることから蹴りに変えたわけではない。相手の攻撃線から自身をズラし、真横から蹴り飛ばすのではなく、襲撃者の頭上から、鎌で刈り落とすように踵を叩きつける。

 砂利が跳ねる音。彩が視線を落とすと、影はちょうど飛び退く瞬間だった。……相手は健在だということ。

 それも仕方ない。いくら攻撃のタイミングは合わせたといえ、標的を確認せずに反撃したのだ。致命傷を捉えられたなんて、彩だって思ってやいない。

 が――。

 ――これで捕捉できた。

 どんなに相手がすばしかろうと、視界の中央に収めてしまえば逃しはしない。

 相手は、しかしすぐに動きを止める。だらんと腕を垂らし、右腕を(かば)うように左手で抑えている。どうやら、右肩から地面に落ちたらしい。彩の手応えとしては不十分だが、それなりにダメージは与えられたらしい。

 ……そんなふうに、冷静に状況を把握できている自分がいる。

 月明かりの下、相手の姿を目にしても、彩は少しも動揺しなかった。

「――おまえか」


「ひどいなぁ、お兄様。いまのはかなり痛かったです」

 弱い月光の下で、その影はほとんど闇に包まれていた。薄ぼんやりとした輪郭の中で異様に目立つのは、穿たれたように白い髪と瞳。いや、実際には金に近い色だろうか、しかし、光の乏しいこの闇の中では、(ほら)のように開いた空白(あな)にしか見えない。

 にたり、と影の中で唇が三日月の形に開く。

「勘もいいし、その後の反応もすごくいい。(ひびき)の家を出ると、そんなに強くなれるんですか?それとも、三樹谷(みきたに)の家にいれば、そうなれるんですか?」

 まるでいつものお喋りと同じように話しかけてくる。……そう、食事のときの雑談みたいに、さも他愛ないことだとばかりに。

「おまえが(あざや)を襲ったのか?――(かおる)

 そんなお喋りを無視して、彩はその影――響薫――に、核心を問う。当の薫はにやにやと、まるで狂ったような笑みを浮かべるばかり。

響崇(とうさん)()ったのも、おまえだな」

 なおも、薫は笑う。問われるごとに、訊問されるごとに、その断罪は甘美だというように、白い三日月は(わら)う。

 否定も肯定もしない、余裕の笑みを浮かべる薫に、いい加減、彩も我慢の限界だ。

「おい、なんとか言ったらどうだ?」

「あれ?それだけですか?」

 きょとんと、薫の顔が呆然となる。さも不服だと、自分の罪状――成果――は、そんなものではないとばかりに。

「お兄様なら、もっと気づいていると思っていたんですけど」

「……なんのことだ?」

 わけがわからず、彩は訊き返す。

 薫は、かくんと小首を傾げる。

「本当に、覚えていないんですか?…………ああ、もしかして、記憶を奪われましたか?だとしたら、お兄様が覚えていなくても仕方がないですね」

「――――十年前の事件(こと)か?」

 すんなりと、彩の口からその単語が(こぼ)れる。驚きはなかった。彩自身も、薄々気づいていたことだ。しかし、それはあまりにも突飛な考えで、すぐには結びつけられない。

 にいいぃ、と。薫は狂ったように笑う。

「なんだ、ちゃんと覚えているんじゃありませんか。良かったです。安心しました。あの日のことをお兄様が覚えていらっしゃらなかったら、それはあんまりですから」

 ――僕とお兄様が初めて出遭った日ですから。

 その記念すべき日を祝福するように、薫の口は白い笑みを浮かべる。

 ……いや、すでに彩はその日を祝ったんだ。

 その日の記録は、断片的だ。だが、あの日から三日後に、彩は病院で目を覚ました。その日から、彩の記録は再開した。だから、その日がいつだったのか、彩は正確にわかる。

「あの日、響(かなで)は夢遊病状態で、屋敷の使用人一人と、響水花(すいか)を殺した」

 だが、薫は――――いいえ、と――――首を横に振る。

「二人を殺したのは――――――――僕です」

 怪訝と、彩は眉根を寄せる。そんな彩にはかまわず、薫はなおも話を続ける。

「僕としては、壊したつもりですけど。まあ、世間からはそんなこと、些細な違いでしかないんでしょうね。ヒトを壊すことは、殺人と同義ですから」

 微笑(わら)って告白する薫に、彩は動揺を表に見せまいとするのに必死だ。

 ……だって、そうだろう。

 (こいつ)は、自分が十年前の事件の犯人であると認めている。あのとき、彩の記録の中にあるのは、正気を失った響奏の姿だ。

 ――あのとき、奏はすでに薫に操られていた?

 ――生まれる前の、まだ(はら)(なか)にいる赤子にだぞ?

 そんなもの、異能以上の異端だ。いや、異常だから異端なのか。

 彩は小さく息を吐き、表面の冷静は維持したまま、口を開いた。

「それが、おまえの異能か?」

「はい?」

「――――『破壊』」

 ああ、と薫は彩の問いに答える。

「正確には、生命の『破壊』です。それも仕方のないことですね。響の異能は、生命に関係するものばかりですから」

「だから、医者の一族なんだったか、響は」

 (たかし)のパソコンに残された歴史書にも、その記述はあった。生まれたときから異能が開花するように、血を濃くした一族。しかし、その異能は人体に限定している、だったか。

「そうですよ。僕のような破壊者は、癌細胞などを死滅させることを得意としています。他にも、細胞を変質させて硬化させる人もいたそうです。その人は、止血を主に担当していました」

 硬化――という言葉で、彩は地下にあった石膏像を思い出した。あれは、昔の響家の人間だという話だ。異能の暴走により、あんな姿になってしまったのだ、とも。

 薫は溜め息混じりに肩を竦める。

「異能でここまでの財を成したくせに、異能の訓練は本人の衝動に任せる、という放任っぷり。まあ、誰がどんな異能を身につけるかわからないのだから、教育のしようがなかったのも事実ですけど。その代わり、世間には真っ当な人間に見えるよう、教育は徹底している。そうでなければ、表向きの医者という看板と釣り合いがとれませんからね。そうやって、まんまと凡庸(ぼんよう)な医者の中に潜り込んで、奇跡を起こす。――異能によってね」

 奇跡――――。

 確かに、それは奇跡だろう。いまの医学ではどうしようもない病気を、響の人間は異能によって完治していく。

 体中に癌細胞が転移し、手の施しようがなくなった患者を、たちどころに治してしまう。体中の癌細胞は破壊尽くされ、患者は健康そのもの。

 大きな事故に遭い、体中血だらけの急患が運ばれてきた。ただちに止血しなければならないが、そんなすぐに縫合できるわけもない。触れるだけで傷口を塞いでしまう奇跡があれば、事故現場で施術が終わってしまう。

 世間には、奇跡を起こす名医の一族ともてはやされるだろう。その功績によって、響家は大きな財を築き上げてきた。

 小さく笑みを漏らしながら、薫は語る。

「だから、響の人間は医者にならなければならない。異能に目覚めた者ならば、それは必然であり、運命ですね」

「……なら、父さんを殺し、鮮まで殺そうとしていることも、その必然の中に入るのか?」

 彩の声は、底抜けに低かった。抑えようとしても溢れ出る激情――――これは、怒りか?

 ――ああ、そうだ。

 彩の思考は、怒りで()き切れそうになっている。

 ……必然?……運命?……そんなもので、鮮は殺されようとしているのか?

 ――ふざけるな。

 そんなもの、彩は認めない。これは、たった一人の狂人の、身勝手な思いつきだ。そんな理不尽、見過ごすわけにはいかない。

 対して――。

 彩の詰問に、薫は困ったように眉根を寄せて苦笑するだけだ。

「お兄様のお母様を壊したことを、数に入れてもいいんですよ?あと、僕のお母様も」

 でもあれはお兄様にもお手伝いしていただきましたね、なんて、どうでもいいように付け足す始末。

 彩は寒気を感じた。肉体的に、ではない。あまりの噛み合わなさ、根本から違うのだと、そう思わせるほどの相容れなさに、だ。

 ふふふ、と、薫は凄惨に()んだ。

「そうですよ。僕は自分の産みの親を壊しました。――無意識的に」

 ――衝動的に。

 十年前、夢遊病に悩まされていた薫の母親。彼女を動かしていたのは、あろうことか、(はら)(なか)微睡(まどろ)んでいた、薫――――。

 身体(からだ)を操って弄んだだけではない。少しずつ、少しずつ、彼女の身体を削っていく。日に日に母体は弱っていき、宿した赤子に壊されていった。

 仕方のないことなんですよ、と薫は達観した顔で、告げる。

「響の異能は、起源を開くことで流れてくるものなんですから。異能とは、起源から放たれる、捻じ曲げることのできない衝動。――だから、破壊者である響薫は、衝動的に破壊する」


 響彩と同じように――。


 にいぃ、と。幼い薫は狂った笑みで付け足した。

 ――ドクン。

 と、鼓動が一つ、跳ねた気がした。

 彩は即座に口を開いて、しかしなかなか声が出てこない。

「……違う」

「僕と初めて遭った日、お兄様は響奏を壊しました。そのときに感じたはずです――――――――衝動を」

「違う……」

「あの日から、お兄様もご自分の起源に気づいたはずです。――――壊したい。触れる(モノ)みな壊したい」

「違う」

「毎晩、僕の〝目〟から盗み見ていたじゃないですか。お兄様も、渇望していたのでしょう?――――鮮お姉様を」

「違う!」

 彩は否定する。

 ……気づいてしまった。

 同じ『破壊』の異能者。しかし、両者は決定的に相容れない。

 破壊者であることを否定する彩と、肯定する薫。己を否定し続けた彩と、肯定し続けた薫。たったそれだけの、単純な相違。だが、ゆえに、二人が歩んだ道は真逆で、対極で、交わることはあり得ない。


「――俺は、壊さない」


 手袋をはめたまま、彩は宣言する。彩を守ってくれる手袋。自己すら見失おうとしていた彩を救ってくれた、大切な人からの贈り物。

「おまえを、地下の禁じられた部屋に連れていく。おまえの衝動を、埋葬してやる」

 否定したことを、肯定するために――。だからこそ、これは彩の役目だ。

「ええ、いいですよ」

 否定を選択できなかった肯定者は、その罪科も知らず、ただ微笑(わら)う。

「でも、最後に衝動を満たしてからにしてください。一日我慢するだけでも、けっこう辛いんですよ」

 それは単なる冗談なのか、それとも本心なのか、その純白の笑みでは判別できない。

 ……ああ、理解できなくていい。

 両者は真逆の存在で、決定的に相容れないのだから。彼が肯定を(そそのか)すなら、自分は否定を訴えよう。

 ――それが、響彩(おれ)の存在理由になるなら。

 だから彩は、相手との決別を口にする。

「――――そんなもの、俺が許すと思っているのか?」

 手袋をつけたまま、彩は一歩、前に出る。

 彩の意図を()んで、薫も観念するように肩を落とした。

「…………理解(わか)ってもらえないかぁ」

 そんな独り言を虚空に吐いて、響薫は、彩の視界から消えた。


 薫は地を這って彩へと迫る。比喩でもなんでもなく、彩には、薫が地面を這っているようにしか見えない。それでいて、十歳の子どもとは思えないほどに速い。地面の上を蛇行し、這い回り、彩の視界は翻弄される。

「――――っ!」

 彩の視界すれすれからの攻撃。地面から三十センチメートルの高さにあった頭が、一瞬で彩の目線すぐ横に飛翔する。

 ――ギンッ。

 と、衝撃。

 片腕で受け流したが、あまりの速さに全ての衝撃を散らすことはできなかった。

 ……まるで蛇だ。

 獲物に近づくまでは地を這って姿を隠し、襲いかかる瞬間に鎌首を上げ、牙を剥く。

 跳ね返された薫は再び地面を這って、彩の視界から消えようと高速で移動する。彩もまた、見失ってはいけないと必死で首を動かす。再度の攻撃に備えて体勢を崩さないようにするのが、やっと。

「……ぃっ!」

 今度は、逆からの攻撃。

 不意打ちを食らったときのように殺気を読もうにも、今度は殺意を隠そうともしないから、タイミングが測れない。

 体勢が大きく乱れて、距離を離そうとしたところを、さらに。

「…………ぁ」

 視界の中で、蛇が迫る。彩の重心は後ろに傾いている。踏ん張ったところで、押し切られてしまう。ヘタをすれば、そこで終わる。

 コンマ数秒の思考。――彩は、身体を大きくのけ()った。

 薫が迫る。顔は、すでに同じ高さ。徐々に彩のほうが下になっていく。彩の頭が下がる。背筋を反らして、そのまま頭から落ちるように。振り上げた腕を、身体の軸に合わせる。胴は抵抗せず、後方に引っ張られるように落ちていく。彩の首のすぐ上を、薫の手が通過する。彩の首を掻き切ろうとした鋭利な爪が、空を切る。方向転換もできず、薫は彩の頭上を流れていく。彩は見上げる、薫は見下ろす。二人の視線が交錯する。彩は無表情に焦燥を隠して、薫は驚愕を露わにして。彩は両腕を伸ばす。慌てず、冷静に、タイミングは外さない。地面の感触が、掌に当たる。そのまま押し込んで――――――――――――――――――――蹴り上げた。

 鈍い(うめ)きと、重い衝撃音。攻撃からのカウンターだ、空中では受け身のとりようがない。かなり奥まで入ったから、内臓まで届いただろう。

 身体を押し上げた勢いで、彩は地面に両足から着地する。反撃を受けたほうの薫は背中から落ちて呻き声を吐き出す。

 彩は相手の姿を確認して、かまえを解く。薫は気を失ったわけではない、背中から落ちた後に体勢も腹這いに戻している、が、攻撃を再開できるほど、薫の受けたダメージは軽くない。

 警戒するように低姿勢で見上げてくる薫に、彩は余裕の態度で応じた。

「諦めはついたか?」

 もちろん、これであっさりと降参してくれるなんて、彩は思っていない。だが、勝負が優勢に傾いているいま、その流れを利用しない手はない。

 はは、と薫は乾いた笑みを漏らす。

「強いですね。衝動を()ったのは同じだと思っていたのに……」

 薫の認識は誤りではない。それ以前から兆候はあったかもしれないが、彩が『破壊』を自覚したのは、十年前の事件があってから。つい最近、佐久間(さくま)の家で修復できた記録だと、奏に――薫に――襲われた瞬間だ。

 だが、戦闘経験ならこの十年間で嫌というほど積んできた。

 それが、響彩の選択と結果。なにも、誰も破壊しないために、他者との関わりを断った。孤立を選んだ彩を、周囲は異端者だと攻撃した。彼らの猛攻から生き残るため、彩は強くなった。感覚を遮断し、冷静な分析を続けた彩は、彼らの幼稚な攻撃から身を守り、反撃した。その結果、彩は一対多の喧嘩でも勝ち残ったし、高校生になったいまでは、滅多なことがなければ誰も関わって来ない、そんな環境を手に入れた。

 だから、いかに人間離れした薫の動きでも、彩は冷静に行動を読んで、対処することができた。

 もう一歩、彩は前に出る。ぴくりとも動かない薫は、彩は見下ろす。

「大人しく、地下にいる連中のところに行くのなら、これ以上、痛い目をみなくて済むぞ」

 そんじょそこらの不良よりは確かに強いが、まだ彩のほうが圧倒している。彩の攻撃は、的確にダメージを与えているし、できるなら、このまま押し切ってしまいたい。

 対する薫は、痛みに顔を歪めながらも、口元に笑みを浮かべる。まるで嘲笑するような、小馬鹿にしたような笑みを。

(よもぎ)のところですか?あれはもう飽きてしまいました。一時的に発散することはできますけど、でも、壊せない玩具とわかっていて壊すのは、そんなに面白くありません」

 彩の眉間に皺が寄る。初めて聞く名に戸惑ってしまったのだ。

 だが、彩はたちどころに理解する。地下にいる三姉妹のうち、彩が会ったことのない最後の一人なのだろう。

 ……蓬というのが『現在』の名前か。

 だが、なぜ薫は彼女のことを知っている?先ほども「記憶を奪われ」た、と言っていたか?本人が自覚しているというのもあるが、響の異能のことも知っている。もしかしたら、当主である鮮よりも詳しいのか…………?

 彩の反応がないのを怪訝に思ったのか、薫は地面に伏せたまま小首を傾げ、しかしすぐにその理解に至る。

「もしかして、記憶を奪う、っていうモノのところですか?それって、僕はもう異常者だって言いたいんですか?いくらお兄様でも、それはあんまりじゃないですか?だって……………………僕は全然まともなんだからァ!」

 と。

 叫ぶと同時に、薫は思い切り地面を押して体を飛ばした。ふわりと、一階の天井近い高さまで飛び上がった薫は、体を(ひね)りながら後方の壁に着地、衝撃を殺した直後、這うように屋敷の壁を上っていき……………………窓から鮮の寝室に入っていった。

「…………」

 呆然とその様を見送っていた彩は、ようやく自身を取り戻して舌打ちする。

 ……どこがまともだ。

 普通の人間が、あんなあっさりと壁を登れるか……?

 逃がさないと、彩も駆け出して薫のあとを追った。


 彩はそっと玄関を開いて、屋敷の中に戻る。連がわざと開けておいたのか、扉には鍵がかかっていなかった。そのまま、彩は二階へと駆け上がる。向かうのは、もちろん鮮の部屋だ。

 薫と同じように屋敷の壁を上って、なんてことは考えなかった。時間がかかるのもそうだが、もしも薫に待ち伏せされていたら、彩は避けようがない。

 彩は、できるだけ音をたてないように駆けた。眠っているであろう猪戸兄妹を起こして、この戦いに巻き込んでしまうわけにはいかない。あんな、ヒトの常識を外れた相手だ、庇いながら戦うなんて、さすがの彩でも無理だ。

 鮮の部屋に入る。部屋を突っ切って、彼女の寝室に行かなければならない、そのわずかな時間でさえ、彩にはもどかしい。

 彩は迷わず、寝室の扉を開いた。あまりの勢いに大きな音がなったが、かまっていられない。すかさず、彩は寝室の中を見渡す。唯一の光源は、開け放たれた窓。外の弱い光が流れ込んで、そこだけ靄のように白く輝いている。そのまま寝室全体を横切って、ベッドの場所で視線を固定する。

「――薫」

 ギリギリまで抑えた声で、彩は相手を呼びつける。薫は、ベッドのすぐ側にいて、――――鮮に覆い被さっていた。

「おい、おまえなにして――――」

 耐えきれず、彩がさらに踏み込むと、ようやく薫は顔を上げ、彩のほうへと振り返った。

「やっと来ましたか、お兄様。少し、遅かったですね」

 微笑(わら)った薫の口元に、黒い滴が一筋流れた。いや、この暗がりのせいで黒く見えただけだ。本当は……。

「……鮮に、なにをした?」

 ベッドの中の鮮は、まだ眠ったままだ。起きる気配はない。……いや、どこかうなされているみたいに、身動(みじろ)ぎしている。

 にいぃっ、と。薫は狂喜の笑みを浮かべる。

「なにって、決まっているじゃないですか。僕は破壊者です。その起源をもつ者です。――なら、過程はどうあれ、目指す結論は唯一です」

 薫は口元を拭って、さらに続ける。

「お姉様の身体の中に、僕の血液を流し込みました。僕の破壊はなにも、触れるだけで起こるものではありません。血の滴一滴だって、細胞をぐちゃぐちゃにできます」

「そうやって、毎晩毎晩、鮮の身体を壊していたわけか」

 ふふっ、と薫は苦笑を漏らす。

「これでも加減していたんですよ。一度に大量に流し込むと、人的要因を疑われてしまいますから。あくまで『原因不明の病気』に見えるようにしないといけませんでした」

 でも、と薫は口元の笑みを強くする。

「お兄様にバレてしまいましたから、その努力も無意味になってしまいました。それに、一日でも我慢すると、結構辛いんですよ。衝動というのは、それほど抑えがたいものなんです。だから――――――――――――――――――たっぷりと、()らせてもらいました」

「……っ。てめーッ!」

 耐えきれず、彩は飛び出した。大股で五歩、いや四歩の距離か。これではまだ決定打を与えられない。だが、そんなことにかまっていられない。そんなふうに落ちついて間合いを測るなんて、面倒だ。

 薫は悠然としてその場から動かない。すでに身を起こし、鮮とは五十センチメートルの距離。すっと、薫の手が伸びる。向かうのは、彩ではなく鮮の枕元。人質にとったつもりか?すでに毒を盛った状態で?手遅れだ、再び手をくだそうというのなら、彩の手はそれより先に薫を止めてみせる。

 駆けた勢いに任せて、彩は薫に掴みかかる。いや、殴ろうとしたのかもしれない。しかし、薫は鮮に手を出すことなく、あっさりと身をかわした。くるりと、まるで円舞のように彩の背後に回り、がらあきになった彩の背中を――――。

 ――――ギンッ。

 と。

 腕同士が弾けた。

 彩は壁に無理矢理衝撃を押し込め、対する薫はカーペットの上を滑って踏み止まる。

 にいぃ、と薫は体勢を低くして、笑う。

「熱くなったように見えて、意外と冷静ですね。僕のカウンター狙いに、正確に反応するなんてェ!」

 叫ぶ、同時に、薫は床を蹴った。彩の視界を振り切ろうと真横に跳んだが、ここは室内だ、外とは違って空間が限られている。

 逃がしはしない、と意気込む彩に――。

 ――薫は想像を超えるような驚愕を、彩に突きつける。

 壁際まで跳んだ薫は、その勢いのまま垂直に跳んで壁に手をつくと、凹凸のない壁面、果ては天井を這いずり始めた。しかも、速度は城壁を上ったときと変わらない、人が地面を走るときと同じか、もしかしたら速いくらい。

「……っ!」

 頭上から、側面から、背後からの襲撃。彩は狙いが自分に集中するように、ベッドから離れる。だが、それで精いっぱいだ。ギリギリ、その不規則な猛攻を弾くことに専念するが、縦横無尽などという異常な連撃に、防ぎきることができない。

「ぐっ……」

 背後からの一撃を、彩はもろに受ける。軌道は読めていたが、とてもじゃないが身体がついていかなかった。

 衝撃が彩の身体を吹き飛ばし、向かいの壁に激突して、その衝撃にまた身体に痺れが走る。

 ……思った以上に、ダメージが大きい。

 壁に(もた)れたまま、彩は身体の反応を確かめる。そこら中が(かす)かに震えて、動きが悪い。打撃を受けた背中だけでもこの鈍りはおかしいが、それが全身に及ぶとなれば、それは異常だ。

「……これが『破壊』ってやつか…………」

 小さく、呟きを漏らす。

 一点への破壊ではなく、全身から体力を奪うような虚脱感。疲労とは筋繊維の細かな断裂だから、それを狙ったわけだ。たった一撃でこれだけ疲労するのだ、次を受けたら、立っているのも辛くなる。

 呼吸を整えながら、ついと視線を上に向ける。薫は蜘蛛みたいに両腕両足を広げて、天井に張りついている。

 視線が合うと、薫はあの狂ったような笑みで彩を見下ろす。

「耐え切りましたか。どうもお兄様には僕の異能が効きにくいようですね。同じ破壊者同士だからでしょうか?」

「効きにくいとか、そんなのもわかるのか?」

 無理を押して、彩は強引に口を開く。

 薫は天井に張りついたまま、なんでもないように笑う。

「いろいろと、試しましたから。ご存じですか?このお屋敷に、ごく稀に猫が迷い込んでくるんですよ。誰かがこっそり餌をあげていたんですかね?ああ、もちろんお父様がまだ健在で、お屋敷に他の人たちが大勢いたときの話です。それで、僕も猫たちに餌付けして、すっかり懐いて、僕を見ただけで近づくようになったら、壊す練習をするんです。どのくらい触ったらどんなふうになるのか。最初の頃はすぐに痛がって暴れるんですけど、そのうち、暴れないように均等に壊す方法を覚えたんです。あっさり壊しちゃう方法や、じっくりゆっくりと壊していく方法なんかも、それで覚えました」

 彩は身体の隅々に探りを入れる。わずかに筋肉を動かして、反応を確かめる。薫との会話も、次に備えての時間稼ぎだ。だから彩は、こんな反吐(へど)みたいな話でも、我慢して聞いていなければならない。

 でも、と薫は声の調子を一つ落とす。

「それも昔の話です。後片付けが結構大変なんですよ。跡形もなく破壊しようとしても、実際にはそう上手くいかないで、細かい毛とか、小さな肉片、あと血液なんかは消しきれません。だから、最後には土の中に埋めないといけない。本当に最初の頃、こっそりやっていたときは、他の人に見つからないようにするので、気を遣いました。隠れて壊すのもそうですけど、返り血で汚れた服を処分するのも、ハラハラドキドキしました」

 彩の呼吸は、安定した状態を維持できるようになってきた。身体も、十分に動きそうだ。体力の消耗を抑えるために壁に寄りかかっているが、すぐに動けるように足を引いておく。

 またニヤリと、薫は口元を歪めて笑う。

「でもですね。犬猫と人間では、手応えが全然違うんです。大きさもありますけれど、構造が違う、っていうのもありました。でも、人のほうが断然楽しかったですね。これも、医者の家系というのが関係するんでしょうか。猫なんかよりもずっと大きいから壊すのが大変でしたが、それ以上に気持ちが良かったです。達成感、とは違うんですよ。衝動が満たされるという感覚で、僕自身が満たされるんです」

「……そんな快楽のために、おまえは肉親を殺すのか?」

「だから『壊す』ですってば。世間的には同義でも、僕にはこっちのほうがしっくりきます。…………ええと、その質問は『良心の呵責』を期待されていますか?同じ異能者に言われるのは、すごい違和感があります。確かに、表向きは世間に沿うように見せますけど、でも本質的に僕たちは異能者で、異端じゃないですか。そこに倫理観みたいなものを持ち込むのは、ちょっと違う気がします。僕たちは異能者です。その起源から生まれ、その衝動にしたがう。それが、僕たちという存在じゃないですか」

 いい加減、我慢の限界だ。もう、身体に不調はなさそうだ。いつまでも、こんな反吐に付き合う必要はない。

 彩はわざとらしく体を動かして、再開の合図とする。

「…………さっきのことでわかっちゃいたが。おまえはもう、情状酌量の余地なく、記憶を剥奪するしかないな」

「別にお兄様の許しを得る必要はありませんけど。でも、お断りします。お兄様は、僕の最後のお楽しみさえ許してくださらないのですから。本当に僕は、お姉様さえ好きにさせてもらえるなら、喜んで全てを手放してもいいんですよ?」

「――交渉決裂だ」

「そもそも、交渉にすらなっていませんよッ!」

 張りついていた天井から、薫は真っ直ぐ彩のほうへと飛びかかる。彩はギリギリまで耐え、薫が腕を振り下ろす、寸前、床を蹴って真横に回避する。薫はもろに壁に衝突して、反動で床に転がる。どうやら、力そのものは見た目通りらしい。だが、その一撃は生命を破壊する。油断してくらってはいけない。

「……ッ」

 薫は床の上で体勢を立て直すと、再び床を這い、壁を這い、天井を這って、彩を撹乱する。彩は相手の動きを()て、攻撃の瞬間だけ、最低限の動きで回避する。先の一撃で、余計な体力の消耗は避けたい。こちらから強引に反撃を入れても効率が悪いから、決定的な瞬間で決めるしかない。

「いいんですか?お兄様。ずっと避けているばかりで」

 蛇のように這い回り、不断の猛攻を続けながら、薫は口を開く。

「お姉様に流し込んだ僕の血液は、いまもお姉様の身体を壊し続けていますよ」

 彩はベッドのほうを一瞥(いちべつ)する。闇の中でも、鮮が苦しみ、悶えている様が見て取れた。もぞもぞと布団自体も動いて、その緊急性は傍目に見てもわかるほど。

 ハハハ、と薫の笑い声が耳につく。

「今回はたっぷり流したって、言いましたよね?朝になって染衣先生に診せても、間に合わないかもしれませんよ」

 彩は薫の動きを読むことに集中する。

 ――安い挑発だ。

 もちろん、鮮が危険な状態にあることは、重々承知だ。だが、焦って決着を急いでも、この不利な状況では勝負を覆すことはできない。

 ……室内になって、こんなに不利になるとはな。

 外よりも空間が狭まれるため、壁や天井を平然と這い回れる薫のほうが、動きの幅が広い。対する彩は、床に立ったまま、その全ての攻撃を防がなければならない。反撃したくても、壁や天井まで上られたら、手の出しようがない。

 だから、彩は待つしかない。薫が攻撃してきて、その隙、カウンターを狙うしかないのだ。

 もう何度目の攻撃か。もう何度、鮮の苦痛を無視したことか。

 体力には限界がある。彩もそれを知っているから、最低限の動きで回避を続けていた。しかし、薫に奪われた体力は思った以上に彩の負担になっていたらしい。薫が隙を見せるよりも先に、彩の足がわずかに落ちるのが早かった。

 ……っ。

 そう、わずかだ。ほんの少しだけ、踏ん張りがきかなかった。別に慌てるほどの事態ではない。逆の足を引いて重心をずらせばいい。距離にして、一歩ていどの移動。それだけで済む話。

 ――その隙を。

 薫は見逃さなかった――。

 壁から天井に上りかけていたのを、薫は即座に壁を蹴って離脱し、彩の斜め後方、重心に引っ張られた軸足に飛びついた。

 ガクン、と彩の身体が背後に傾く。支えの足を払われたのだ、それは当然の結果。

「……!」

 動揺を抑えつけ、彩は即座に状況を把握する。身体が落ちていく。床の上には、あの蛇が待ちかまえている。威嚇するように、右手の牙を剥いている。三日月に輝く狂喜の笑みが、崩れゆくこちらを嘲笑っている。

 身体が落ちる。向こうが跳ね上がる。右の牙が、いまにも放たれようとしている。

 ……っ。

 彩は身体を(よじ)った。相手の攻撃とは反対に倒れるように、左肩を上げ、右腕を下げようとする。しかし、彩の身体はすでに宙空(ちゅうくう)。このていどでは回避もできない。

 衝撃が左肩に走る。痛みは、しかし全身を駆け巡っているだろう。その破壊は左肩を壊すものではなく、全身の動きを停止させるもの。

 ――だが。

 衝撃は、左肩を突き上げる方向――。

 その衝撃を利用して、彩は身体を回転させる。左腕が跳ね上がり、加速させるように右手を振り下ろす。

 衝撃は、あっさり奥まで入った。狙い通り、彩の拳が薫の鳩尾(みぞおち)に決まる。

 反動で、両者の体は対極に弾け飛んだ。勢いを殺すように彩はカーペットの上を転がり、薫は不意の反撃で反応すらできずに転がって壁に激突する。

 …………ここで、決めないと……。

 彩は壁を支えにしてなんとか立ち上がる。ぐらりと身体が傾くが、壁のほうに重心を落として凭れかかる。

 …………くそっ。こんなにもってかれたか……………………。

 息が荒い。引きつれを起こしたみたいに、呼吸が乱れる。身体を安定させるための休息が必要だ、が、そんな悠長な時間がないことを、彩は知っている。

 ……………………急がないと。

 あんな攻撃では、薫を止めることはできない。隙をついた反撃のだけで、動きを封じるための一撃にはなっていない。

 足を立たせて、壁から身を離そうと、

 ――クフフッ。

 する、寸前。

 彩は、その不吉すぎる声を耳にして凍りついた。

 床に伏せていた薫がガバッと身を起こし、堪え切れないとばかりに哄笑を上げる。

「……アハハハハ、ハハハハハハハ、ハハハハハハハハハハハハハハッ!すごいです、お兄様!そんなふらふらになっても、まだ反撃してくるなんて!」

 まるで痛みなど感じていないかのように、薫は平然と立ち上がる。いや、痛覚以前に、内臓を強打されてすぐに起き上がれるなど、それは異常だ。

 ――化物が………………。

 精神どころか、肉体までも、人間の常識というものを外れているらしい。これでは、人の急所をついたとしても、動きを封じられるか怪しくなってきた。

「……………………くそがっ…………」

 荒い呼吸とともに、吐き捨てる。

 それでも、彩は倒れない。壁に寄りかかったまま、立った姿勢を維持する。動けるようにと壁に手を当てているが、これも苦し紛れの抵抗に近い。

 そんな彩の無様を見て、薫の口元がニイィと吊り上がる。

「いいですよ。何度だって……」

 その台詞は、最後まで続かない。

 闇に覆われた室内が、突如、(みどり)の光で輝きだしたのだ。窓から差し込む月光さえかき消してしまうほど、その光は圧倒的だ。

「なに……?なに、なに、なに!これはなに……!」

 驚愕し、困惑しきって、薫は叫ぶ。彩だって、突然のことで理解が追いつかない。苛烈で、激烈で、鮮烈で――――。部屋を翠に染め上げたその光は、この空間そのものを支配する。

 愕然と、薫はその中心に目を止めた。

「お姉さ…………」

 その言葉すら、最後まで言わせない。

 ゾッ、とするほどの気配。空気さえ、それに侵食される。瞬く間に、この場所は、掌握される。

「なんだよ……。なんだよ、これ!」

 薫の叫び声。それは、悲鳴か。だが、それは遠い。そんなものすら、この現実――悪夢――にはほど遠い。

 ――一面を覆い尽くす、腕の草原。

 風になびくよう、ではなく、なにかを求めるように、獲物を狩りとろうとするかのように、腕は、手は、五指は、蠢く。

 遠くで、薫が悲鳴をあげている。

「この!この!この!この!この、この、この、この、この、この、この、この、この、この、このこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのこのォ!」

 殴打し、引き裂き、引き千切り、打ち砕き……。そんな無残な音が、しかし微かにしか聞こえない。それよりも――。

 ――ザアアアアアアァ!

 押し寄せる津波の如く、(ことごと)くを呑み込む、音。悲鳴が、溺れる。もがき苦しむ声は、もはや深海の底。

 ……ああ。

 すべてが遠く。

 彩の身体は、無数の腕に呑まれた……。


 笑い声が聞こえる……。泣き声がが聞こえる……。叫び声が聞こえる……。呻き声が聞こえる……。

 それは歓喜か…………?それは慟哭か…………?それは絶叫か…………?それは苦痛か…………?

 なにも見えない。辺りは、ただ真っ白だ。光り輝き、そこにはなにもないのか、全てを包み込もうと、覆い隠そうとしているのか。

 天上の地――。空白の地――。虚無の地――。忘却の地――。

 ただ、声だけが聞こえる。いや、あれは音なのか?ガヤガヤ、と。ザワザワ、と。彼方から。此方から。押し寄せる。退いていく。あれは、波だ。さざ波。潮騒。泡沫が溢れ、散り散りに。浮かんで、弾けて。満ちていく。溢れていく。

 暑くもなく、寒くもなく。まるで揺籃だ。白いのは雲なのか、空気なのか。それは平穏。ここは平穏。ただ、緩やかに流れていく。いや、揺れるだけだ。ここでは、時間すら停滞している。世界にあやされるまま、微睡んでいる。

 ……ああ。

 音が聞こえる……。声が、聞こえる……。産声が…………。

 ――産声?

 そうだ、これは産声だ。生命の証明。誕生の兆候。

 世界は、生命に満ちている――――。世界は、生命に溢れている――――。世界は、生命に塗れて――――……………………………………。

「……っ!」

 彩は目を開けた。胸の下で、心臓が激しく鼓動を打っている。知らないうちに息が乱れ、荒い呼吸を繰り返している。

 ――なんだ?いまのは。

 そんな思考も、しかしすぐに寸断される。

 ――なんだ?これ。

 目の前で、巨大な芋虫のような、細長い白い物体が蠢いている。長さは五十センチメートルか、大きなものでは一メートル近く。幅はあまり大差なく、五センチメートルを少し超えたていど。それが、目の前だけでなく、彩の身体をすっぽり覆っている。ザワザワと衣擦れがあるから、きっと身体の上を這っているのだろう。

 しばらくして、彩はようやく状況を思い出す。

 ――ああ、あの腕か。

 鮮の寝室を覆い尽くした、無数の腕。それが彩や薫を呑み込んで、こうして彩はその腕の下に押し潰されてしまったらしい。押し潰されたというか、実際には身体の上を這い回るていど。圧迫はそれほど感じないから、鬱血の心配もないだろう。

 ……感じる?

 彩は腕の隙間から自分の右腕を突き出し、目の前にかざした。

 ――まだ、感覚遮断を弱めていたのか?そんなつもりはなかったんだが…………。

 這い回る腕、指の先に、手袋の淵を引っかける。指の動きに合わせて手首を動かし、手袋を外す。

 ……暑くも、寒くも、ない。

 彩は腕を伸ばし、手袋を引っかけたままの腕に触れる。

 ――――ああ、わかる。

 これは、生命(いのち)だ。

 腕のような身体の一部でも、そこには生命がある。生命は、量だ。だから、たった一本の腕にも、生命はある。

 これは、奇形か?ああ、そうだろう。そこに間違いはない。だが、彼らだって戸惑っているんだ。自分たちは、本来どんな姿をしているのか、一人一人、一本一本が理解している。だから、苦しみ、悶えている。だが、彼らに害意はない。ただ、己が姿、その奇形に絶望し、悲鳴を上げているにすぎない。

 ――だから。

 響彩は、感覚する。

 触れた腕は、跡形もなく消えてしまった。まるで、人魚の泡だ。自分の願いを叶えられなかった人魚は、その苦悩を一身に抱いたまま天に召されていく。

 彩は、自分の右腕を薙いだ。断ち切るような荒々しさではなく、救いを示すように優しく導く。

 ……それは驕りだ、傲慢だ。

 響彩はなにも救わない。響彩が与えられるものは唯一、破壊のみ。安らかな眠りなど与えない。人として、生命としての尊厳など、全く考慮しない。ただただ、純粋に、跡形もなく、破壊する。

 波が引く。弾けた泡は、次々と空気に溶けていく。彩の回り、直径一メートルの範囲に空白ができる。そこだけ、どんな生命も存在できず、悉くが破壊尽くされる。

 つい、と。彩は対岸へと視線を向ける。部屋全体が腕に呑まれている中で、そこだけが異様に膨らんでいる。まるで獲物を一匹呑み込んで、ゆっくり、時間をかけて消化しているように。

 ――薫か。

 薫の破壊をもっても、彼らは破壊できなかったらしい。それも、当然か。いくら生命を破壊するといっても、それは筋肉や骨、血管といった、肉体的なものだ。意識や意思なんていう概念的なものには、響薫は触れられない。

 ――(あいつ)も、助けてやらないとな。

 母親を殺し、父親を殺し、血の繋がった姉までも殺そうとしたけれど、それでも薫は、彩の弟だ。血は半分しか繋がっていなくても、彩の家族だ。

 ……家族。

 その単語は、響彩にはとても遠かった。物心ついたときから一人、西館に放り込まれ、誰とも関わらない生活を過ごしてきた。十年前の事件以降は、勘当され、親戚の家に放り込まれた。そこでも、彩に関わろうとする人間はなく、親戚のおじさん・おばさんとの交流は、ほとんどない。

 ――それでも。

 そんな彩を、家族と呼んで迎えてくれた人がいる。もう、十年近く会っていなかったというのに。まさか、そんな遠い昔のことを覚えていたわけでもあるまいし。

「なあ、鮮――――」

 翠に煌めく深海の底、その中心で揺蕩(たゆた)う彼女に、彩は声をかける。


 響鮮は、しかし彩の呼びかけになんの反応も示さなかった。ベッドの上に立った鮮は目を閉じたままで、意識があるのかも怪しい。実際、鮮は目を覚ましていないのかもしれない。彼女の身体から放たれた翠の光も、その光に触発されて湧き出た無数の腕――生命――も、全ては彼女の意図しない、無意識で行われていることかもしれない。

生命(いのち)の危機に、咄嗟に覚醒し(めざめ)たのか。だから無意識的…………」

 彼女の放つ光が、部屋を翠で包み込み、無数の腕で覆い尽くす。床も、壁も、天井も。そこかしこに生命が溢れている。唯一、彼女のベッドだけが腕の入り込めない不可侵の領域となっている。

 神々しくも、悪魔めいた光景。それは神の所業か、それとも悪魔の所業か。無数の生命に囲まれて、彼らの主は一人、静かに佇む。

「これが、おまえの異能なのか?鮮」

 彩の問いかけに、鮮は当然のように応えない。意識がないのだから、それも当たり前のこと。

 ……しかし。

 この状況は、あまりよくない……。

 異能の暴走――。薫の破壊によって命が危なかったとはいえ、これをそのままにしておくわけにはいかない。

 ――だが、どうする…………?

 地下の禁じられた部屋から暦を連れてくるのか?暴走した異能を封じ込めるには、彼女の異能(ちから)が必要だ。薫にだって、彩は同じことをしようとしていた。

 ――だが…………。

 彩は一歩、前へと踏み出した。寝室の扉へではなく、鮮がいるベッドのほうへ。

 彼女は、彩が助けなければならない。きっと、暦でも彼女を救うことはできないと、そんな予感がある。

 彩の進む先で、腕の海が割れていく。触れたときと同じだ、泡のように砕けて消えていく。もちろん、それは彩が生命(かれら)を感じているからだ。

 それは、怯えや恐怖……。

 この世に産まれてしまったことへの恐れ。世界と己の食い違いから生じる断絶、そしてそのことへの絶望。

 ――その(おそ)れは、彩も感じている。

 自分は、この世界にいてもいいのか?全てを破壊(こわ)してしまう自分は、この世界にいてはいけないのではないか?異端で異物な自分は、この世界から消えてしまったほうがいいのではないか?

 だが、彩はここで立ち止まるわけにはいかない。そんなところで立ち止まるのは、十年前に止めている。例えその懼れを抱いていたとしても、響彩は、進まなければならない。

 ――自分(さい)が存在してもいいと、存在する理由を見つけるまでは…………。

 一歩一歩、確実に。彩は鮮のほうへと向かう。彼女への道を開けるように、腕が引いていく。いや、彩が破壊しているのだ。彼らを感覚し、その絶叫を一身に受けながら、しかし彩は立ち止まることも、引き返すこともしない。

「鮮――――」

 彩は鮮の真正面、ベッドの端まで辿り着いた。目を閉じたままの鮮を、彩は見上げる。翠の光に、彼女の髪が揺れている。ベッドの上に腕はなく、時折、泡のような光が湧き出して、彼女の頭上で消えていく。彼女のその立ち居振る舞いは、海の底、腕の珊瑚や海藻に囲まれて一人眠りにつく聖母のよう。

「いま、助けてやる」

 彩はベッドの淵に足をかけ、彼女と同じ目線に立つ。躊躇せず、彼女に歩み寄ろうと、

 ――腕が湧き上がる。

 瞬く間に何十、いや百近い数の腕が彩の前に立ち塞がり、鮮の姿を隠してしまう。

「……!」

 間欠泉に踏み行ってしまったかのような猛威。その不意打ちに彩は体勢を維持できず、反対側の壁まで吹き飛ばされる。

「……っ」

 その衝撃に、(たま)らず彩は咳きこんだ。

 ……いまのは、なんだ…………?

 身体にまとわりつこうとした腕を右手で払い、彩は立ち上がる。先ほどの猛威が嘘のように、鮮の周囲は再び静寂に包まれている。彼女の周囲、ベッドの上だけ腕はなく、鮮は翠の光に抱かれて目を閉じたまま。

「…………」

 もう一度、彩は鮮のすぐ前、ベッドの手前まで足を進める。ここまでは、なにも起こらない。部屋中に溢れた腕も、彩が感覚すれば泡のように消えてしまう。

 ベッドのすぐ前で、彩は足を止める。

 ――なにもない、が…………。

 特に変わった気配はない。辺りには、生命(いのち)産声(こえ)が聴こえるばかり。警戒を解かないまま、彩は右手だけ前に差し出す。ベッドには上らずに、伸ばせるところまで伸ばそうと、

 ――腕が湧いた。

 聖域への侵入を拒むように、腕は天井まで溢れ返って、鮮の姿を隠してしまう。

「……っ」

 慌てて、彩は右手を引いた。途端、腕はボロボロと崩れていき、泡となって消えてしまった。

 ――他のヤツと、現象が逆だな。

 彩が感覚することで実体を失っていた腕が、ベッドの上だけは、彩の感覚をきっかけに溢れ出す。それまでは、姿形もなかったというのに……。

 外からの侵入を阻むための結界のようなものか?普段は姿を消しているが、特定の範囲まで近づくと発生するような仕組みか?

 彩は試しに、手袋をつけたままの左手を差し出した。右手が阻まれたラインまで、右手はベッドの淵に置いたまま、左肩を突き出して伸ばす。

 ――なにも起こらない。

 腕が湧き上がったラインを超えても、なにも起きない。それはつまり、この結界は彩の破壊にしか反応しないということになる。

 ……いや。

 彩は思案する。…………厳密には、違う。

 ここは、生命(いのち)で溢れている。器から溢れた生命(いのち)は、主人の望みもなく、ただ溢れたままに形を帯びただけだ。

 ……それが、末端で起きている現象。

 では、中心部ではなにが起きているのか?

 濃度が高すぎて、肉体すら得られなかった生命(いのち)の泡。遥か太古、地球上で生命が誕生する、その寸前の泡沫が、鮮の周りで溢れているものだ。それは純粋な生命であるがゆえに、肉体を持たない。時折、煌めく泡は、生命の塊だ。それが天井で弾け、散り散りになって、天井や、壁や、床で、姿を現している。

 ――だから、彩の破壊によって濃度が下がると、そこから形を得た生命が溢れ出す。

 鮮に近づくのなら、彩は右の手袋もはめて感覚を遮断しなければならない。しかし、その瞬間、彩の周りだけかき消えていた腕が、再び溢れ出すだろう。

 …………どうする?

 この腕の発生源は鮮だ。だから、鮮だけベッドから引きずりおろしても、意味がない。やはり、地下へ行って暦を連れてくるべきか?ベッドの手前までは彩の破壊で道を開き、ベッドから先は暦単独で鮮に接近する。左手で試したとおり、鮮の近くは逆に無防備だ。

 ハッ、と彩は吐き捨てた。

「――――もう、決めたんだろ」

 彩が、彩がこの手で鮮を助ける、と――――。

 なら、もう迷うな。自分が信じたものを選べ。躊躇はするな。決断して、前に進め。


 ――左手の手袋も外し、前に出る。


 嵐の中の暴風雨に突っ込んだみたいだ。あるいは、荒れた海に飛び込むような無謀か。下から何十、へたをすれば何百という腕が、彩を吹き飛ばそうと突き上げてくる。

「――――――っ…………」

 激痛が彩を襲う。当然だ、彩は感覚しなければならない。この嵐をかき分け、彼女に到達するために。異能の暴走を止めるために、彩は感覚し続けなければならない。

 悲鳴すら呑み込んでしまう猛威。生命(いのち)の慟哭が、彩の感覚に(すが)りつく。そこに意味はない。産まれたての赤ん坊が泣きじゃくるのと同じだ。だが、その産声(こえ)が絶叫と絶望であることがわかる。それは、直接、彩の感覚に訴えかけてくる。彩もまた、それを感覚しようとする。――だから、感覚し(わかっ)てしまう。

 たった一メートルていどの距離のはずなのに、彼女への道程は何百キロメートルも離れているかのように、遠い。腕で覆われているため、前も見えない。自分がいまどのくらい進めているのか、それも判然としない。

 ただ、左右の腕を突き出しているだけ。手袋を外した、病的なまでに白い自身の両手。道を開いているつもりが、実は波にもまれてもがいているだけなのではないか。あまりの密度に、もはや腕を破壊できているかも怪しい。感覚だけが、彩にのしかかり、押し潰そうとしてくる。

「――――――ぁ…………」

 彩は口を開ける。呼吸できているのかも怪しい。全身打撲だらけで、麻痺してしまいそうだ。だが、彩は感覚する。感覚することを、放棄しない。痛みも、嘆きも、絶望も――――。全て、彩は引き受ける。投げ出したりなんて、しない。

 彩の指先が腕をかく。削った、手応え。だが、視認できない。これだけの腕の群れ、一本壊せたところで、違いなんてわかりはしない。

 だが、彩は前に進む。進んでいると信じて、踏みしめる。

 足を抑えつけてくる腕も、胴を殴りつけてくる腕も、肩を突き飛ばそうとする腕も、腕を抑えつけようとする腕も、喉を絞めてこようとする腕も、顎を吹き飛ばそうとする腕も…………。

 どんな猛威を受けても、彩は前進を続ける。――前進を、止めない。

「ああああああぁぁぁぁっ!」

 彩は絶叫する。力の限り。

 その気合いを、彩は聞かない。聞こえないのではない、感覚しないのだ。これは、彩の決意の表明だ。相手に知らしめるためのものであって、彩が耳にするものではない。そんなもの聞くまでもなく、彩は進み続けるのだから。

 ――腕が、突き抜けた。

 なにもない空間。腕の嵐を抜けた、その先。

「……!」

 彩は、彼女を目にした。無数の腕が湧き上がる中、翠に輝く彼女の顔。意識もなく、目を閉じたまま、それは本当に、穏やかな眠り。

「……あ、ざ、や…………!」

 手を伸ばす。身体を捻じ込もうとしても、腕に阻まれる。なら、手だけでも届かせよう。

 ぐい、と右手で腕の嵐をかきわける。その反動で、左肩を強引に捻じ込み、左腕を突き出す。

 あとどれくらいだ?あと少しのはずなんだ。腕に覆われ、視界を阻まれ、距離感がわからない。触れられそうなのに、指先は空をかくばかり。

 もう一度、彼女の名を呼ぶ。叫んだつもりが、しかしそれは音にもならない。あたりの騒音、荒れ狂うノイズに阻まれて、もうなにも聞こえない。押し返そうとする力さえ、すでに遠退きかけている。ただ、衝撃があるばかり。いや、それも単なる浮遊感に近い。ふわりと身体が持ち上げられ、そのまま遠くへ飛んでいってしまいそうな、そんな夢見心地。

 彩が感じ取れるのは、遠く、微かに聴こえるノイズだけだ。意味はわからない。誰かが雑談しているようにも聞こえるが、その内容までは聞き取れない。そんなか細い、数多の絶叫。

 膨大な感覚に、彩の意識は灼け落ちる寸前だ。それでも、彩は前進する。感覚を止めない。決意したことは、絶対に手放さないと……。

 ……触れた。

 左手が、確かに彼女に触れた。彼女の(なか)で、脈打つものを感じる。いまの彼女を突き動かす、その元凶。全身を駆け回り、彼女を支配するモノ。

 だから――。

 ――彩は、感覚する。

 崩落の音が聴こえる。絶叫は、聴こえない。ただ、崩れていく。まるで深い眠りに落ちるように。あるいは、泡沫となって消えてしまうように。崩れて、散り散りになって、跡形もなくなり…………それは、消える。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ