どんな仕事が良いかな
「時給二千円はなかなかハードル高いね......」
要さんは難しそうな顔をしていた。
やはりそうなのか。
「まあ、大事なことだからね。急がないとならないけど焦らないよう、じっくり考えよう」
要さんは自分のことのように真剣に考えてくれている。
「理想的で完璧な仕事を探すのは時間がかかると言うか、かなり難しい。前も言ったけど、まずはやりたくないことを削っていくのが長く続けられる仕事を探すコツ。だけど、誉の場合ある程度金額の要素は必須だから、そのバランスをとっていこう」
絶対にやりたくないこと、と言われると考えてしまう。
私は何が嫌なのだろう。
単純に、筋力や体力を持続的に使う仕事は身体能力的に向いてないと思うから、その辺りだろうか。
あとは五感を酷使したり不快感を得たりする仕事は長期間従事できる自信がない。
これくらいかなあ。あまり贅沢を言っていられる身ではないから、ある程度妥協しなくてはならないことは覚悟している。
「まあそうだろうねぇ。でもそうなるとハードルは上がるなぁ。大体給料が高い仕事って人が嫌がる仕事やきつい仕事が多いからね。誉が除こうとしている仕事とそこが被る」
「そうですよね。甘くないのわかってます。我慢します」
「いやいや、実際きつい仕事は長く続けるには心身の強度やら耐久性やら、それなりの素養必要だと思うよ? 少なくとも卒業するまでは続けないとならないんだから、無理はやめとこ」
「誉ちゃんがやりたくないことであげなかった高給になりやすい仕事としては、『危険』を伴うものってのもあるよね。あと、」
今日も晩酌がてら顔を出していたしょーちゃんが口も出して来た。
彼女の方も引越しはひと段落している。
「誉に危険なことなんてさせられないでしょ! 万が一があったらどうするの!」
しょーちゃんの言葉を遮って要さんが怒っていた。
要さんはしょーちゃんが抱えていたカルパスの袋をひったくって、袋からひとつ取り出し包装を解いて口の中に放り、勢いよくビールを煽っている。
心配してくれるのは嬉しい。でも少し過保護な保護者みたいだ。
なんて他人事みたいに要さんとしょーちゃんのやりとりをおこぼれのカルパスを食べながら見ていたら、「ひとまず条件は出てるんだから、どんな仕事があるか探しなよ!」と注意されてしまった。
それはそうだ。
私は慌ててカルパスをもうひとつ口に入れてから、求人サイトを探し始めた。
要さんとしょーちゃんも、飲みながらではあるが調べてくれている。