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無理

 怖い。


 昨日まで何事もなく住んでいたはずの部屋なのに、別の部屋みたいに感じる。


 温度が少し低い気がする。


 壁にあんなシミあったっけ? なんだか顔に見えない?


 なにかが啼くような、嗤うような、音が鳴っている。気がする......。


 え? 今なんか影みたいなの通った?


 えっ、えっ、どこかでサイレン鳴ってない⁉︎


 れ、れ、れ、冷蔵庫がっ、なんか唸ってる.....!


 うわぁっ! スマホがなんか震えてるっ




 怖いっ......!


 ああ、もう、だめ......!



「誉?」


 さすが要さん。ワンコールで出てくれた。


「夜分に、すみま、せん」


「どうしたの? 大丈夫?」


「あの、家が、怖すぎてっ......」


 私のただならぬ様子に、要さんは落ち着くよう宥めながらも、速やかに状況を把握しようと適切な質問をテンポよく投げかけた。


 特に何かが今この瞬間に起こっているわけではないことを把握した要さんは、緊急性は高くないと判断をしたのか、口調がややゆっくりになり、より私を落ち着かせるための語り口となった。


「良い? シミも、音も、全部物理現象なの。物理的な原因があって、結果がある。本当に起こっているなら、具体的な原因も生じてるはずだよ。確かめてみた?」


「怖くてっ、できない......」


「んん......少なくともさ、急にシミができるなんてないんじゃないかな。今までなかったの? 今までもあったものが、急に気になったとかじゃない? 音だって、気のせいってことない?」


「わ、わかんないっ、ですっ......」


「そもそも冷蔵庫の音とか遠くのサイレンは不気味でも不思議でもないよねっ?」


「わっ、わかんっ、ない! わかんないですっ! うー、わかんないっ......!」


「ちょっと、落ち着きなさい。......ああ、どーにもなんなそーね。ね、ウチ来る? 来れる?」


「い、いく! 行きます! 行きたいですっ」


「おけ、電車ある?」


「あ、あるけど、今から駅向かって、だと、ま、間に合わないかも」


「とにかくがんばって。もし電車なかったらタクシーで来な。深夜料金入れても多分五千円くらいでいけるはず。今手元にお金ある⁉︎」


「あ、ありますっ! ろっぴゃくえん」


「あーもう! 私が出してあげるから、とにかく落ち着いて、気をつけて来なよ⁉︎ 不安だったらずっと通話のままにしてて良いから」



 明日学校に行くなら、その準備も忘れずにと言っていた要さんの言いつけは守り、なんとか準備をして最低限の荷物を小型のキャリーケースに詰め込んで家を出た。


『今出ました』

『気をつけて。歩きながらメッセージはダメだからね。電車かタクシー乗ったらまた送って』


 電池が切れたらもっと怖いので、通話は切らせてもらって、変わりにメッセージを送り合いながら要さんの元へと急いだ。



 あぁっ、怖いよぅ!

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