表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/69

65. 決着

 才牙の頭脳が導き出した、守護者の倒し方。

 幾つか思い浮かんだうち、最初に試すのは、回復能力を越えた連続攻撃だった。


「はぁ!!」


 才牙が気合の声を放ちながら踏み込み、守護者の懐近くへ。そして鋭い左ジャブを打ち込む。

 守護者は盾で受けようとしたが、ジャブのあまりの速さに、盾の縁をすり抜けるようにして顔面に攻撃を食らってしまう。


「―― ――」


 守護者の頭部が後ろに弾かれ、一瞬身動きが止まる。

 その間に、才牙の左拳は構えの位置に戻っていて、すぐに2度目のジャブが繰り出される。

 再び守護者の顔面に拳が命中し、体勢が仰け反る。

 3度同じ光景が繰り返されたところで、守護者は仰け反った体勢のままに盾を動かす。才牙の位置からのジャブでは顔面を狙えない位置に。

 これで攻撃を防げた、はずもない。

 才牙は守護者の盾の位置が動くのを見た瞬間に、自身から見て右斜め前へステップし、守護者の左側面を狙える位置に移動していた。


「盾が邪魔だな」


 才牙は言葉を零しながら、右拳を繰り出す。狙いは守護者の顔面――ではなく、盾を持つ右手の手首。

 守護者の身体は赤竜の鱗で覆われている。しかし、その鱗と、そして手首の骨まで砕かれてしまう。


「――――――」


 声なき悲鳴に似た、守護者の吐息。同時に、手首を砕かれた手から、盾が滑り落ちて地面に転がった。

 盾という優秀な防具を失った守護者に対し、才牙は攻撃の頻度を上げていく。


「ふッ!」


 ジャブからストレート。フック、ボディ打ち。打つ場所も、顔面、胸元、腹部、脇腹と様々に変化する。

 才牙の左右の手から繰り出される多種多様な攻撃に、守護者の身体にある鱗が全面に渡ってひび割れを起こす。骨にも影響があり、何か所かは骨折も発声している。

 だが守護者とて殴られてばかりではない。盾を失いはしても、剣は残っている。

 才牙の攻撃に合わせる形で、守護者は剣を横振りする。刃が当たれば両断間違いなしの威力の攻撃だ。

 しかし才牙は冷静に踏み込むと、拳の横打ちで守護者の剣を握る手指を殴った。

 指の鱗と骨が砕ける音が響き、握力を失った守護者の手から剣がすっぽ抜ける。

 剣と盾を失った守護者に、才牙の連撃が繰り出される。ボクシングスタイルからシュートボクシングスタイルに構えが変わり、殴打だけでなく蹴撃も含めた連続攻撃だ。

 才牙は前蹴りで守護者の体勢をくの字に曲げさせたうえで、下がってきた頭に対して左フック。横に流れた頭を右手で掴んでから、膝蹴りを叩き込む。膝蹴りの威力で仰け反らせたところで、下段蹴りで腿の筋肉と大腿骨を壊す。壊れた足が体重を支えられず、片膝立ちになったところで、拳の連打と回し蹴りの連続が放たれた。

 守護者の身体は攻撃の滅多撃ちに合い、鱗が砕ける音の後、肉が潰れ骨が折れる音が連続する。

 もはや勝負は決したかに見えた。

 だが、しかし迷宮を司る黒玉が生み出した守護者は、耐久力も高く持ち合わせていたようだ。

 片膝立ちで全身がボロボロの状態でありながら、力強く腕を振り回すことで、才牙の攻撃を中断させることに成功する。


「予想したよりも耐久度がある。連続攻撃で仕留めるには、やや骨が折れるか」


 才牙は連続攻撃で仕留める案を破棄し、別の攻略法に移ることにした。


「セイレンジャーの攻略法を踏襲するようで忌避したが、やはり回復能力を超越する高威力の1撃こそが、至上ということだな」


 才牙は呟きながら、まるで守護者の回復を待つように佇んでいる。

 いや、まるでではない。

 本当に守護者の肉体が、その回復能力で修復されるのを待っているのだ。

 守護者は才牙の行いに疑問を抱いているような仕草をしていたが、腿の折れた骨がくっ付いたのか、膝立ちの状態から立ち上がる。

 しかし手放した剣や盾を拾うおうとはしない。その拾う隙を、才牙が突いてくるに違いないと、そう警戒していた。


「学習能力もあるようだな。だが、この場面では拾うことが正解だ。まあ、その時間を与える気はなくなったがな」


 才牙は守護者に評価を伝えるような口調で言葉を放つと、エッセンスドライバーにある引き金を3度引いた。


『メイズドラゴン・エッセンス――チャージ、チャージ、チャージ』


 ドライバーから黒い煌めきが溢れ、才牙の両足と背中に集中する。

 やがて黒い煌めきは両足を包む紫電と、背中から吹き出す黒い突風へと姿を変えた。


「必殺――」


 才牙は呟きながら、背中を押す突風に身を任せるようにして突発。一瞬にして守護者の直前へ。

 そして両足を揃えたドロップキックを、守護者の胸元へ叩き込んだ。


「――メイズドラゴン・ストライク!」


 才牙が必殺技の名前を叫ぶと、両足の紫電が竜の顎の形に変化して守護者に噛みついた。


「―― ―― ――」


 守護者は噛まれた場所から紫電を注入されて、激しく痙攣を始めた。

 そうして才牙の足の紫電が丸ごと守護者の中へと入った後、才牙は守護者の胸を蹴って宙返りし、地面に着地した。

 守護者は才牙が離れてからもしばらく痙攣をおこしていたが、急にピタリと止まった。


「―― ――」


 守護者が放った呼吸音は、攻撃に耐えきったと言いたげなもの。

 しかし直後、守護者の胸元――才牙の脚にあった紫電が入り込んだ場所が、急膨張する。


「―――― ―――!」


 守護者は自分の身体の変化に戸惑う仕草をするが、その間にも膨張は続いていき、やがて胸元の肉と鱗が裂けた。

 直後、裂けた場所から黒い煌めきが吹き出し始め、そしてその煌めきが可燃物だったかのように大爆発を起こす。

 黒い煌めきを含んだ、爆発の赤色。

 それに全身を包まれた守護者は、爆発が収まった後には、姿も形もなくなっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 変身物の必殺技はやっぱこうでないとねえ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ