第7話 領都への道中①
再開します。
第1章と同じく2000文字程度の区切りにしました。
領都パウンドへ向かう構たちは、森を出てすぐは道がないので草原をえっちらおっちら低速で走っていた。時折遭遇する穴で車体が大きく傾いたり跳ねたりして車内はジェットコースターだ。
低速なのは軽トラだけで、コッコはこともなさげに先導する。
「不思議な荷車だな」
「本当に乗騎無しで動くのですね」
スフレとクッキーが軽トラの後ろをのんびり歩いていた。通常、荷車はコッコや力のあるトカゲが引くのだ。
15分ほど難儀し、ようやく舗装された道にたどり着いた。ゆすられまくってリバース寸前だった構もほっと一息だ。
「5分だけ休憩させて……」
リバースしなかっただけで限界ではあったのだ。構は道に座り込み、手のひらを地面にあてる。
「少しざらついてるけど、ほぼフラットだ。外側に向けてわずかな傾斜があって、雨水を逃がす設計にもなってるっぽいな」
構は異世界の道路設計に舌を巻く。道の先を眺めても継ぎ目が見当たらない。アスファルト舗装ですら明確な継ぎ目ができてしまうのに。
「こんなところまで舗装されてるのってすごいな。これも魔法ですか?」
「うむ、土魔法だな」
「すごいな魔法」
技術ではどうしようもないものが魔法でできている。オーバーテクノロジーだ。
「領には騎士団と魔法師団がある。共に領と領民を守る組織だが、道を整備したり田畑を荒らす獣退治もする」
「魔法師団もあるんですか! すげー」
「人数は少ないが、領内から生活魔法以外も使える素質ある人間を集めているからな」
構のそばに立っているスフレがふふんと胸を張る。褒められて嬉しいのだろう。
「その言い方だと、生活魔法ってのは誰でも使える感じですけど」
「使えるともさ」
「生活魔法を全員が使えるのか、すごいなぁ。って生活魔法って?」
構は仰向けになるように顔を空に向ける。ぴたりとスフレに焦点が合う。「ほほぅ」とでも言いたげなスフレの青い瞳が細まった。
「生活魔法は、その名の通り生活に欠かせない種火や少量ではあるが水を作り、夜に明かりとなる光を灯し、物を乾かすための風を起こす魔法だ」
「なるほど、ちょっとしたことをできる魔法ですか。それをすべての人が使えるのはすごいなぁ。俺も使いたい」
「はは、森の賢者殿も魔法が使えぬのは不便だろう」
「代わりになる機器はあるけど、手ぶらで済むならそれに越したことはないし」
空いた手で別な何かを使うことができる。太古の昔から、人間はそうやって進歩してきた。そして今に至る。
「生活魔法は人が生きていくために神が与えもうた英知だからな」
「神様っているんだ」
日本にもいるぞ。
「森にもいるだろう。間違いないぞ」
クッキーの鑑定で神の蜂蜜酒を見ているスフレは断言した。構は「そう?」と首をかしげるばかりだ。
「我が弟が魔法使いでな。いまは王都の学園に行って不在だが、将来は領主になる。それまでは魔法師団に属することになっている」
「弟さんは魔法使いなんですね、すごい!」
「ふふ、すごい男だぞ。カマエ殿も元気になったようだし、そろそろ出発するぞ」
「ア、ハイ」
構は軽トラに乗り込んだ。
「おお、すごい快適!」
道はかなりフラットで軽トラを走らせてもほとんど揺れない。タイヤから聞こえてくる音も静かで、日本の道路よりもよほど滑らかだ。
「思ったよりも文明度は高いな。分野によっては日本よりも快適なものがあるんじゃないかコレ」
ハンドルを握る構も欠点をあげられないレベルの快適さだった。
ロードコッコに合わせて時速20キロでのんびり走る。軽トラとはいえ時速20キロは余裕過ぎる。
「道路に出たらずいぶん変わったな。妙な音はするものの揺れもない。速度もコッコと変わらない」
並走するスフレが話しかけてくる。ロードコッコは二足歩行なのでどうしても上下に揺れるが、それも大きくはない。馬に比べれば揺れはかなり穏やかだ。
林が点在する草原の景色を眺めながら軽トラは走る。さすがに草原の手入れはされておらず、背丈くらいまでの草が生え放題だ。
窓を開けて走っているので風と一緒に土と草の香りも入ってくる。
「のどかだなー。うちの周りも負けてないけど」
山間部の田舎はちょっと走れば山しか見えなくなる。草原と山の差でしかない。こんなところまで道を敷くということは、森の近くに何かを作る予定があるのだろうか、などと構は考えていた。




