第6話 領都に行こう⑥
街灯がまばらな田舎の道をのんびり歩いていく。雨は上がり、土の匂いが漂っている。夏を迎えるにはまだかかりそうな気温だ。ほろ酔いも覚めていく。
そうこうするうちに『7』の数字の看板が見えた。全国にあまねくある、ありがたいコンビニだ。
「ファッション雑誌もいくつかと、ほかにも買っていくか」
雑誌ゾーンで女性ファッション雑誌を複数選び、車、アニメ雑誌などをかごに入れる。
「お邪魔するなら手土産だよなぁ。スフレさんはいらないって言いそうだけど」
不要と言われても社会では必須だ。あいさつの代わりでもあるのだ。
もらったものがお菓子であれば休憩時間につまめるし、それで話に花が咲くこともある。お菓子は職場を滑らかにする潤滑油なのだ。
「コンビニに銘店なんてないから、明日の帰りにスーパーで買おう」
包装されたお菓子などコンビニにはない。が、クッキーがホワイトチョコに興味を持ったことを覚えていた構は、チョコ菓子を中心にカゴに入れていく。
「ポテチは指が汚れるからダメかな。ダメなら俺がつまみにしちゃえばいいか」
買う正当性を紡ぎ出す。なんやかや構も食べたいのだ。
いろいろ買いこんだ構が工房に戻ったとき、目に入ったのは大きな布だった。シャワー室やキッチン、仮眠ベッドを隠すように仕切られていた。
ラスクは庭の扉を開け、そこに立っていた。
「お嬢様とクッキーがシャワーっす」
「あ、だから仕切りか」
スフレと補助のクッキーがシャワーを浴びているようだ。構が帰って来た時に見られないようにだった。ラスクは護衛だろう。
洗い物はクッキーに任せた方がよさそうだ。構はそう判断した。
「雑誌を買ってきたんで、ここに置いときますねー」
作業台に雑誌を載せ、構は工房を出た。
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翌朝。工房で朝食だ。構はいつもの食パンと目玉焼きのラピュタトーストにした。スフレたちは昨晩の残りのシチューにパンとサラダだ。
「それ、遠征の時によくやるっす。立ちながらでも食えていいっすよね」
ラスクが構のパンを見ている。構は初めてラスクにシンパシーを感じた。やはり男はこうでなければ。
「私もやるぞ」
「お嬢様は張り合わなくて結構です」
スフレがアピールするもクッキーに阻止された。ぐぬぬするスフレだ。
「仕事に行ってくるので、お昼は買ってきたパンでお願いします」
構はコンビニで購入したロールパンと黒糖パンの袋を作業台に置く。おかずはクッキーにお任せだ。畑の野菜と果物もあるので何とかなるだろう。
今日の仕事は町立の幼稚園の空調の更新工事のお手伝いだ。本職の設備業者がやるのだが人が足りないので応援だった。構もいっぱしの作業はできるのでちゃんと戦力扱いになっている。
「うむ、武運を祈る」
「戦いに行くわけでも……まぁ仕事は戦いか。行ってきまーす」
凛々しい顔のスフレに見送られ、構は軽トラに乗って車庫から出て行った。
「さて、カマエ殿がいなくなったから、探索といくか」
「お嬢様、森に入っちゃダメっすよ?」
「行かぬさ。聖獣の怒りを買ったらカマエ殿に追い出されてしまう。工房の周囲を回るだけだ」
腰に細剣を佩いたスフレは庭に出て行った。本当っすかーとラスクは疑いの目だ。
「クッキーはどうするっす?」
「カマエ様が持ってきてくださったこの本を読んでいようかと。紙質もさることながら、色彩が見事でまるで本物のようです。印刷なのでしょうが、どんな魔導具を使えばこのような絵になるのでしょうか」
うっとりした表情のクッキーはファッション雑誌に夢中だった。活版印刷の技術はあるのだが、コーティングされた紙は存在せず、また写真という技術もなかった。
主人であるスフレを放置気味にするほど読み込んでいる。
「これなどは町娘のようなスカートですが、デザインが素敵ですね。繊細なレースが当たり前に使われていますし、服の生地もかなり高品質に見えます。この細身のシルエットはお嬢様によく似合いそうです」
クッキーは何かとデザインや印象をメモしながら雑誌をぺらぺらめくっている。ランジェリーのページには付箋代わりのナイフが挟まれ、チェック済みになっていた。
「んじゃ俺はロードコッコたちの世話っすね」
3人はバラバラに行動を始めた。




