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祖父の工房が異世界の森につながっていた件~森の賢者は魔道具修理やさん~  作者: 海水『墓地ダンジョン』書籍化予定
第一章 森と工房

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第1話 祖父の工房とハネウサギ①

初日は3話更新します。

「とうとうこの工場ともお別れか」


 桜舞い散る春。物部(もののべ)(かまえ)は見慣れた工場(仕事場)を見わたした。がらんとして人の気配はなく、機械が稼働する音もしない。死んだ工場だ。


「じーちゃんが作った工場を維持できなくてごめんね」


 構は目じりにたまり始めた涙を腕でぬぐう。ぬぐってなお【物部製作所】の看板がにじんだ。看板にはまるで囲われた、交差するスパナが書かれている。工場を設立した祖父が考えた物部製作所のマークだ。

 かつては従業員もたくさんいたが、安い輸入部品に押され、また工作機械の更新に莫大な費用が嵩み、人員を減らすしかなくなっていた。

 人員を減らせば受注可能な仕事の幅も減る。仕事量に従って売り上げも減っていく。そしてまた従業員を減らした。

 止まらない悪循環。その渦中で両親が交通事故で亡くなった。

 構は大学卒業後に工場で働き始めたがまだ30歳になったばかり。経営経験などない。

 急遽、構が跡を継いだものの悪い流れを止められるはずもなく。工場を手放す判断をした。いや、融資を受けていた銀行にそうさせられた。

 構はゆっくり工場を歩いた。ここには穴あけの機械があって、その先に表面加工の機械へ流れて行った。ここで作っていた部品たちは、どこの工場が作ってるのだろう。輸入に変わってしまったかも。構は思い出をかみしめるように回った。そして最後に出口にたどり着いた。


「戸締りはした。あとはこの鍵を銀行に預けておしまいだ」


 構は最後に工場に向かって深く頭を下げ、車に乗って銀行へ向かった。



㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢㌢



 物部構30歳。祖母が外国人で髪は黒いが日本人にしては彫の深い顔と青い目をしている。ただし、両親が小柄だったために身長は160センチほどだ。一見ハーフに見える構の背が低いので、小学校などではよくからかわれていた。

 そんな構は北関東に向かって車を走らせていた。運転するのは白い軽トラック。低身長が軽トラにマッチしている。嬉しくはないが。

 荷台には工場から引き揚げてきた小型工作機械や工具類が満載だ。工作機械と言ってももはや博物館に寄贈すべきレベルの、手動の工作機械も多い。構が小学生の時に夏休みの宿題の工作で扱えるくらい簡単な仕組みの物ばかりだった。


「じーちゃんの家はどうなってるかな」


 構が向かっているのは、祖父の家だ。相続していた父親が亡くなり、構が継いだのだ。

 工場をたたんだついでに田舎にこもって便利屋でもやろう。構はそう考えていた。

 工場を売却した金で、銀行の融資を返却してなお1億円余った。都心近くにあったので土地が高かったせいもあるが、長年取引していた銀行が色を付けてくれたのだ。おかげで将来の生活のめども立った。


「ともかく安全運転だ」


 荷台をがたがた言わせた軽トラは高速を降り、関東北部のG県の山間部を走った。


「ふー、やっとついた」


 都内を出てから6時間。ようやくたどり着いた。

 目の前にあるのは古ぼけた平屋の日本家屋。屋根付き車庫が隣接している。家の周りは空き地で隣家も遠く見通しは良い。ただ、動力電源を引いてあるのか家に入る電線が多い。

 構は腕で額の汗をぬぐった。特に汗はかいていないが、頑張ったぞと主張したかった。

 軽トラをバックで車庫に入れうーんと背伸びをした。


「まずは家の具合の確認だ」


 構は車を降りて玄関に向かう。玄関は昔ながらの大きなガラスの引き戸だ。採光にはよいが中も見えてしまう。山間部で隣家は空き地をはさんで30メートルほど離れている上に家の前の道路を通る車も少ない。問題はなかった。

 構は鍵を開け中に入る。空気がほこり臭い。当然だが人の気配はない。


「玄関の滑りは問題なし。でも後で油をさしておくかな。日ごろのメンテが大事だよね」


 玄関は2畳ほどもあり、工作機械も入れやすそうだ。壁面には備え付けの靴入れもある。住んでいたのが祖父母だけなのに結構な大きさで、上部は物置でもあった。大きめな花瓶も置いてある。亡き祖母が花を入れてあったものだ。

 「お邪魔しまーす」と玄関から部屋に入る。


「変わらないな」


 6畳の部屋は古びた畳の匂いがした。

 祖父の家は6畳の部屋が4つ、バストイレ、台所がある。そして祖父の家には工房がある。工房が一番大きな部屋だ。

 まずは仏壇がある部屋で線香をたき到着した報告だ。仏壇にあった祖父母の遺影に両親も加わった。


「無事につきました。今日からここにお邪魔します」


 構は静かに手を合わせた。


「さて、チェックしないと」


 構は各部屋を回り、不足しているもののリストアップをしていく。


「タンスはあるからいらないな。水もガスもオッケー。冷蔵庫は小さいから買い替えだ。エアコンもだいぶ古いから総取り換えしよう。ウォシュレットは必須だ」


 修理で済むものは自分で、必要なものは買う。エアコンくらいは自分で工事するつもりだ。町工場クラスの製造業ではなんでも自分でやるのだ。


「暮らすなら快適な方がいいに決まってる」


 可能な限りQOLは上げる方針だった。


「最後は工房だ」


 構はあえて工房を最後に回していた。楽しみは最後に取っておくのだ。

1更新の文字数を2000文字くらいにしていますが、もうちょっとほしいなどありましたら教えてください。

2話目から変更するかもです。

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