表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もしもゲームのライバルキャラが全員転生者だったら~未プレイ主人公と既プレイ転生者の鬱ゲー攻略~  作者: 紗沙
魔法師団編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/131

第88話 魔王【世界】とエンシェントエルフ

「師匠、なんでユグドラシルに居るんですか?」

「あ?エリアとキルシュの温泉に旅行に行ってる途中なんだよ」


黒い球体を倒し、辺りを散策した後に、私たちはユグドラシルへの帰路についていた。

男の人たちの拠点も、あの泉の近くにあった。

行方不明のエルフさんが見つかるかなと思ったものの、中はもぬけの殻だった。


私の前では、エヴァとテスタさんが会話をしている。

さっきから話しているのはこの2人ばかりで、エリアさんは後ろから微笑んで2人を見ている。


「え?じゃあ、ここに居るのは弟子のピンチに駆けつけてくれたってことですか?」

「いや、お前別にピンチじゃなかっただろ」

「ユグドラシルに来て、エヴァちゃんのことを聞いたら、何も言わずに、すぐに向かったのよ」


他愛のない話をする3人。

以前聞いた通りなら、男性がテスタ・ワーグナーさん。

女性がエリア・ワーグナーさんの筈だ。


「あ、あの、テスタさん、私ウリア・アルトリウスと言います。いつも妹がお世話になっています!」

「お……おう……そういや姉がいるとか言ってたなぁ」

「まあ、ご丁寧にどうも。エヴァちゃんが来てくれて家も少し賑やかになったんですよ」


両手を叩いて、ニコニコ笑顔でエリアさんはそう言ってくれる。

イメージ通りの、ほんわかした人だ。


テスタさんは私をじっと見てくる。

まるで探るような目線だ。


「あ、あの……?」

「ああ、悪いな。本当にこいつの姉かと思ってな」


え?確かに私はエヴァと血は繋がっていないけれど。


「お淑やかすぎるだろ。なんで姉みたいにならなかったわけ?」

「お姉様がお淑やかなのは認めますけど、失礼ですよ、師匠」


なるほど、性格の違いを言っていたのか。

エヴァは私にはもったいないくらい良い妹だ。

悪く言われるのは心外である。


「エヴァは可愛い可愛い妹ですよ」

「……姉妹仲がよろしいことで」


テスタさんは小さく溜息を吐いた。


「戻ってこれたね」


ライネスさんの言葉に前を見ると、世界樹ユグドラシルが近くに見えていた。

ようやく戻ってこれたようだ。


私たちはそのまま長老の家へと向かう。

テスタさん達も、ついてくるそうだ。


ジルヴァ長老の部屋に入ると、以前と同じように彼は待っていた。

その後ろには、アインスタットさんも居る。

ロゼリアさまは、今回の事の顛末について説明を行った。


「なんということを!」


全てを話し終わった後に、ジルヴァ長老は怒りを露わにしていた。


「ローズ小隊の皆さん、苦労を掛けたようじゃ。このようなことになったのじゃ、報酬は上乗せして支払おう」

「ありがとうございます。ですが私達としては、今回の事件の背後も気になるところです」

「うむ。捕えてくれた男たちについては、こちらで尋問を行う予定じゃ。詳細が分かり次第、皆さんには共有をしよう」


そこまで話をして、ジルヴァ長老はテスタさんに目を向けた。


「テスタ殿、ご助力感謝する。始祖様も、ありがとうございます」

「俺が気になったから行っただけだ。それに、特に何もしていない。気にするな」

「始祖様はやめてください……」


テスタさんはぶっきらぼうに、エリアさんは苦笑いをしながら答える。


「始祖様?」


気になる単語を聞き返すと、ジルヴァ長老はエリアさんを見た。

その視線に、エリアさんは困ったように答えた。


「えっとね……私はエンシェントエルフっていう種族なんだけど、ジルヴァ長老は私のことを始祖様って呼ぶのよ」


エンシェントエルフ。そういえばそんな話を以前エヴァから聞いた気がした。


「今のエルフとエンシェントエルフは系図が異なるんだろ?先祖ってことでもないんじゃないか?」

「何をおっしゃる。全エルフにとって始祖様は始祖様じゃ」

「ふーん。まあ、敬うのは別にいいんじゃね?」

「いや、こそばゆいんですよ」


ジルヴァ長老、テスタさん、エリアさんの話を聞きながら、あることを思い出す。

エンシェントエルフ。その言葉を、もう一人から聞いたことがある。


「魔王【天】……ヒビキも、とある女性をエンシェントエルフと呼んでいましたが……」


レアさんの侍女、橙色の髪の耳の長い女性。

それを見て、ヒビキはそう呟いていた。


「あぁ、弟子から聞いている。まさかエリア以外にもエンシェントエルフが居るなんてな」

「出会えたらお友達になりたいですね」


エンシェントエルフは1000年以上前に絶滅した種族の筈だ。

テスタさんの話を聞くに、エリアさんとシンシアさん以外には見つかっていないのだろう。


「エリアさんは、1000年以上生きてるんですか?」


もしそうなら、私たちが知りたい情報を持っているかもしれない。

そう思って聞いてみたのだが、彼女は目じりを下げた。


「ごめんなさいね。私は封印されていて、300年前まで眠っていたのよ。だから封印される前のことはあんまり覚えていないわ。村が襲われたときに母が私を封じてくれたの」

「あ、そうなんですね……」


聞いてはいけないことを聞いてしまったかな。

そんなことを思ったが、エリアさんは気にしていないようだった。

むしろニコニコと上機嫌だ。


「それでねそれでね。その封印が、運命の人なら解けるってものだったの!そこで当時冒険者だったこの人が私のことを起こしてくれたのよ!」

「えー、なにそれすっごくロマンチックじゃないですか!」


エリアさんの暴露話に、ルナが反応する。

隣を見てみると、ムースも目を輝かせていた。


「そうなのよ!この人、当時は低ランクの冒険者だったのに、私が攫われて売られそうになったら、その会場に乗り込んできてね!『俺の女に手を出すな』って。もう思い出すだけでも幸せで!」

「…………」


テスタさんは顔を真っ赤にしてそっぽを向いていた。

エヴァを見ると苦笑いをしている。

どうやら、初めて聞く話ではないようだ。

ひょっとして、定期的に惚気られている?


「それでねそれでね!その時に私たちは力に目覚めたの!目を付けた【天】や【深淵】も2人の愛の力で退けて、私たちは幸せな生活を手に入れたの!」

「……エリアさん、もうその辺で。師匠は死にそうです」


テスタさんはついに恥ずかしさにプルプルと震えていた。

流石に見かねたエヴァが助け舟を出すと、エリアさんは困惑したようにテスタさんに近づいた。


「あ、あなた?ご、ごめんなさい?」

「いや、お前が楽しいなら、それでいい」


何を見せられてるの?私達。

砂糖を吐きそうになるような2人の関係を見せつけられ、私は苦笑いをした。

この空気で何年も付き合っているエヴァが、正直にすごいと感じた。


「ふむ、お二方はこれからどうするのじゃ?」

「俺たちはこのままキルシュに向かうつもりだ」

「エヴァちゃん達の邪魔をするわけにもいかないですからね」


テスタさんとエリアさんはキルシュの温泉に向かうのだろう。

あの温泉は絶景で気持ちも良いので、ぜひともリラックスしてもらいたい。


(でもこの二人で温泉って……それってつまり……)


大人な想像をしてしまい、私は思わず首を横に振った。

多分、顔も赤くなっていることだろう。


「それでは私たちは尋問が終わるまでユグドラシルに滞在しますね。また明日、訪ねさせてもらいます」

「それで構いませんぞ。明日には背後関係が分かっていると思われます」


取り決めをして、私たちは長老の部屋を出る。

黒い球体との戦いに、テスタさん達との出会い。

今日一日で、ぐっと疲れたように感じた。


(それにしても……エンシェントエルフ)


エリアさんは封印されていたと言っていた。

かつて滅んだエンシェントエルフの一族。その滅びから逃れるために、彼女の母が行ったと。

なら、シンシアさんも同じなのだろうか。


思い出すのは、ヒビキと戦ったときに見ていた、橙色の髪の女性。

そして、その主人でもある【緋色】と名乗った少女。

学園では別れてしまったけれど、またいつか会えるのだろうか。


会えた時、また一緒に過ごせるのだろうか。


そんなことを思いながら、私は空を見上げる。

世界樹ユグドラシルの枝の間から射し込む太陽の光は、眩すぎるほどだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ