第73話 学園卒業と私の友人たち
「皆さん、3年間お疲れさまでした。この後、皆さんはそれぞれの道を進むでしょう。それでも、この学園での生活が良い影響を与えることを祈っています」
大講堂に第1寮から第5寮までの3年生の生徒が集まっている。
今日は卒業式の日。ベリアル学園長は礼服に身を包み、卒業生への言葉を告げている。
その言葉を聞きながら私はレアさんの件について考えていた。
あの後、レアさんとシンシアさんは姿を消し、二度と帰っては来なかった。
2人に関しては記録と、私たちの記憶の中にしかない。
『アンドロメダ子爵家ですが……屋敷には誰もいませんでした。私が出会った当主も、使用人も、誰も』
ロゼリアさんいわく、レアさんの家名であるアンドロメダ子爵家もすでにもぬけの殻だったという。
むしろアンドロメダ子爵家自体が、存在しなかったかのような。
そんなレアさんは、名前だけが国内に公表された。ヒビキも同様だ。
魔王【緋色】レティシア・アンドロメダ
魔王【天】ヒビキ
長らく秘匿されていた魔王の名前に、エディンバラ国内は大いに盛り上がった。
ジン先生は、自分だけが知っていた【天】の名前が知れ渡ったことに不満げだったが。
それに、レアさんの専属侍女であるシンシア・ラグナゲイト。
エンシェントエルフという聞いたことのない種族名を知っていたのは、エヴァだった。
『師匠の奥さんがエンシェントエルフなんだよ。世界に師匠の奥さんしか残っていない古代に滅んだはずの一族。それがエンシェントエルフらしいよ。師匠に話したら、他にも居たのかって驚いていた』
1000年ほど前に滅んだはずの絶滅種。
エンシェントエルフは私たちの知らない魔法を使う、というのが伝説として伝わっている。
そしてそれは、事実だった。
シンシアさんの使用した火の魔法や重力を操る魔法。
それらは私たちの知らない魔法。けれどテスタさんの奥さんは覚えがあるという。
今回は、レアさん達に助けられた。
彼女たちが居なければ、私たちは今頃みんな死んでいただろう。
そのくらい、ヒビキは強く、だれにも止められなかった。
『ウリアさん……分かっていますか?次に会うときは本気での戦いになるでしょう。……あのヒビキと』
ロゼリアさまの言葉が頭の中をめぐる。
手も足も出なかったあの侍。そんな彼を相手に、私たちは勝たなくてはならない。
全ての力を集め、仲間を護るために、打ち倒さなくてはならない。
そのために、私は。
「また、魔法師団に進む方は実技も魔法も両方バランス良く努力する必要があります。テスタロッサの扱いも上手くならなくてはいけないでしょう。国を護る戦士となるためにも、一層努力してください」
私は、魔法師団に進む。
いつか来るべき戦いに備えて。
そしていつか戦うであろう、魔王アインとの戦いに備える。
(でも……ヒビキを助けた最後の魔法……)
1つだけ気がかりがある。
ヒビキは魔法が使えない。だから、最後に彼を助けたのは別の人物だ。
けれど、誰が?
もし仲間なら、もっと早い段階で助けるはずだ。
それにレアさんを攻撃した闇の剣に、移動用の門。
そのすべてが、魔法使いとしてのレベルが段違いであることを表している。
そう、まるでクロムのような。
(……いや、そんなわけ)
クロムは2年生の時に間違いなく倒した。
死体もエディンバラ国に回収されている。
もしも復活したようなことがあれば、すぐにロゼリアさまに報告が行くだろう。
「それでは皆さん、卒業おめでとうございます」
ベリアル学園長の言葉に、思考が現実に戻される。
拍手が鳴り響き、卒業式が終わりを迎える。
他の生徒が席を立って大講堂を出ていく。
慌てて私もその流れに乗った。
見慣れた学園の玄関を出て、少し歩く。
しばらく進んでから、私は不意に振り返った。
いつも通っていた校舎が、少し寂しげに見える。
この学園で、3年間、いろいろな経験をした。
それが、昨日のことのように思い出される。
強大な敵と戦って、そして勝った。
直近のヒビキとの戦いは、勝ったとはとても言えないけれど。
(けれど、大切な人を誰も失わずに、今を迎えられた。だから勝ちでいいよね)
校門に目を向ければ、いつものメンバーが待っている。
「お姉様!こっちこっち!」
「行きますよ、ウリアさん」
幼いころからずっと一緒に居てくれたエヴァとロゼリアさまが声をかける。
彼女たちが居たから、私は救われた。地獄から、拾い上げてくれた。
だから、私は彼女たちを護りたい。失いたくない。
「ウリア!このあとどっか行こうよ!」
「それはいいですね」
ルナとムースが今後の話を打診してくる。
準備舎で出会った、大切な友達。彼女たちが、私の知る世界を広げてくれた。
いつも明るいルナと、親切だけど自分を押し殺してしまうムース。
彼女たちも、失いたくない。
「……『マリア』……また見せて」
眠そうな目で、ぼそぼそとミストが呟く。
クロムの魔法に囚われ、命を狙われた。
そんな彼女を、なんとか助けられた。護り抜けた。
私の大切な、5人。
これからも一緒に過ごしていきたい、大切な友人。
皆と、この先も一緒に。
「うん!」
私はそう言って皆に駆け寄る。
皆と合流し、一緒に帰路につく。
その途中で、私は振り返る。
もう一度、もう訪れないであろう校舎を目にした。
これまでの感謝を込めて、深く一礼する。
(ありがとうございました)
「ウリア!行くよー!」
「うん、今行くー!」
名残惜しそうに校舎を見ながら、ルナの声に急かされ、私は走り出した。
(以下、原作設定資料集から引用)
◆実績
新たなる旅路
【解除条件】
学園パートを終了する
【実績テキスト】
エディンバラ学園を卒業した証。
そして新たな世界への旅路の始まり。




