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もしもゲームのライバルキャラが全員転生者だったら~未プレイ主人公と既プレイ転生者の鬱ゲー攻略~  作者: 紗沙
幼少期編

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第14話 魔王リフィル・フローディア【エヴァSide】

『お久しぶりです、ウリアさん。これからは私、リフィル・フローディアがウリアさん専属の侍女となります。よろしくお願いします。身の回りの世話は任せてくださいね』


お姉様が寝静まったのを確認し、私はベッドに横になって考える。


意味が分からない。

なぜ【傾国】が生きている?なぜ【傾国】がアルトリウス家に来る?

その全てが私の知っている原作とかけ離れすぎていて、混乱した。


まず真っ先に思い至ったのは、リフィルが転生者ではないか?ということである。

とはいえ自分に置き換えて考えてみる。

もしも自分がリフィルならば、彼との戦いで生き残れるか?


転生してからどれだけの時間があるか不明だが、おおよそ不可能だと思える。

そのくらい彼は強い。

ゲームを周回し続けてようやく勝ち目が見えるような化け物だ。


そんなことを考えている間に、リフィルはお母さまと話し合って、どんどん伯爵家での待遇を決めてしまった。

彼女がここに来た理由がお姉様であることも、転生者なのでは?という疑問を強める。


3人で集まったときにも、リフィルはなぜここに来たのかを話してくれた。

任務を完遂したこと。家族仲が良くないこと。それゆえにここに侍女として働きに来たこと。

なにもかもがめちゃくちゃだ。お姉様は信じているけれど、私は説明が足りないと感じる。


なにをどうすればこうなるのか、リフィルに直接聞かなくてはならない。


私とお姉様の部屋の扉がゆっくりと開き、リフィルが入ってくる。


「ちょっと、話したいことがあるんだけど」

「はい、構いませんよ」


お姉様を起こさないように小声で会話し、私とリフィルは部屋を静かに後にする。

2人して別室に移動し、ベランダに出る。

私は気になったことを真っ先に聞いた。


「お姉様は納得しているけど、私は納得していない。どうしてリフィルはアルトリウス家に来たの?任務っていうのが関係しているんじゃない?」

「……エヴァさまは時々11歳とは思えないほど鋭いですね。分かりました。話しましょう」


リフィルは目を閉じ、ゆっくりと語りだした。


「私が完遂した任務は、魔王【天】の討伐です。魔王を、知っていますか?」


知っている。

リフィルは仕組まれたその任務に参加し、自分以外の兵士を殺され、彼女は命からがら逃げかえってくるのだから。


「うん、本で読んだことあるよ。……倒したの?魔王を?」

「いえ、倒していません。しかし、認められました」


魔王【天】ヒビキ。

数ある魔王の中でも戦闘力は突出している。

そんな彼を一言で表すなら、最強の侍である。


彼は刀一本で全てを変える。

魔法も、人も、国家も、世界でさえ彼を止めることはできない。

彼の刀術は、この世界の水準とは全く別の次元にある。


そんな彼は原作でも人気が高い。その理由は性格にある。

ヒビキは寡黙で、そして実力のあるものを潰そうとしない。

成長してさらなる強者となり、いつか自分の前に現れることを、彼は切望している。


そんな彼が作中で実力を認めた人物はただ2人だけ。

その一人が、お姉様こと、ウリア・アルトリウスである。


「認められるほど、リフィルは強いの?」

「いえ、私の実力では【天】に傷一つ付けられることなく死んでいたでしょう」


ここまでは、原作と同じ。なら、違いは?


「けれど死を意識したときに、私が思い浮かべたのは家族でもなく、婚約者でもなく、あの日パーティで出会ったお嬢様でした。これまでの人生で、初めてだったのです。ただ私のことを案じてくれた、居なくなってほしくないと言ってくれたのは。そんなお嬢様を思い浮かべると、奇跡が起こりました。私のテスタロッサが、覚醒したのです」

「…………」


私は頭を押さえたい気分だった。

良かれと思って、お姉様を懇親パーティに誘った。

その結果、まさかこんなことになるなんて。


リフィル・フローディアが使うテスタロッサは進化する。

最初はエクセラ級のテスタロッサ「ブリーズ」だった。

それが魔王になったときに、怒りでカタストロフ級の「ストリーム」にまで進化する。


しかし、これは。


「さらに、私のテスタロッサに不思議な力が宿りました。その力で、私は【天】と長時間戦い続けられました。そしてその力の発動中、私の右手はずっとあの時の……お嬢様に包まれた手の感触なのです」

「……お姉様の、隠された力」


そう、原作でその力によってウリアは目をつけられることになる。

だがそれはもっと先の話だ。学園卒業後の戦争での話だ。


「私は軍の兵士を一人も失うことなく、ユグドラシルに戻りました。兵士たちの言葉で、私は一躍国内で英雄のような立場になりました。けれど、あの力はお嬢様のものです。【天】もいつかそれに気づくでしょう。私はジルヴァ長老に相談し、エディンバラ皇国と秘密裏に交渉して、お嬢様の侍女になることにしたのです」

「……お姉様のその力を知っているのは、ユグドラシルのジルヴァ長老だけなの?」

「はい、エディンバラと交渉の際には出していません。部隊の皆は、私が実力で【天】とやりあえたと思っています」


詳しく話を聞いてみると、リフィルはジルヴァ長老から特殊な任務を受けたという名目でエディンバラに来ているようだ。

ユグドラシルの軍内部ではリフィルがどこの国に居るのかすら知られていないという。

とりあえずお姉様の力が知れ渡ってはいないようで良かった。


「じゃあリフィルはお姉様を守るためにここに来たんだね」

「はい。その通りです」

「……お姉様には、聞かせられないね」

「そうですね。絶対に知られないようにしてください」


ヒビキは殺人鬼ではない。彼には彼なりの思想がある。

だから、リフィルをすぐに殺しに来ることはない。

また、お姉様の力が原作通りなら、リフィルからお姉様にはたどり着けないはずだ。


もはや原作とはかなり違う流れになってしまったが、リフィルが生きていて、味方なのはかなり大きい。

今すぐヒビキと戦うような事態になるなら話は別だが、とりあえずは良い方向に進んでいる。


「分かった。ありがとう。この話、ロゼリア皇女にもしていい?」

「ロゼリア皇女殿下ですか?」

「うん。私たち、ロゼリア皇女と友達なんだ」

「……なるほど。皇女さまならば構いません。ただし、必要以上に多くの人には知られないようにしてください」

「大丈夫。ちゃんとわかってるよ」


リフィルはその言葉を聞くと頭を下げてベランダを後にした。


視線を王城の方に向けて、ロゼリアの部屋を見る。

遠くにある部屋は、肉眼では米粒ほどにしか見えない。


「おはよう、オーバーライト」


お姉様と同じ言葉を呟き、オーバーライトを右手に出現させる。

固有能力を発動し、ロゼリアの部屋のベランダまで一気に「跳んだ」

誰かに見られていたら大問題だが、この瞬間移動は目にもとまらぬ速さ。


窓ガラスを数回叩くと、薄い明りがついた。

しばらくすると、ケープを肩にかけた寝間着姿のロゼリアが現れた。

いつ見ても美人で、正直ちょっとうらやましい。


「どうかしましたか?こんな夜更けに」

「アルトリウス家にリフィル・フローディアさんがお姉様の侍女として来たよ」


2人きりの時は、私はロゼリアに敬語は使わない。

リフィルの登場に目を見開くと思ったのだが、彼女は眠そうな目をこするだけだ。


「はい、聞いていますよ。他国の軍人を専用侍女にするなんて、アルトリウス家はすごいですね」


ジトっとした目でロゼリアは私を見返した。


もしかして、私が手を回したと思っている?

そう思い、私は首を横に振る。


「今から話すことはこの国では私とリフィルさんしか知らない。リフィルさんは任務で魔王【天】に実力を認められた。お姉様も知らない力のおかげらしい。だからリフィルさんは、お姉様を守るために、お姉様の専属侍女になったみたい」

「……はい?」


普段のロゼリアとは思えない声に、少し笑いそうになった。


顎に手を当てて何かを考えていたロゼリアは、やがて合点がいったように「あぁ」と呟いた。

そして私を強く睨みつける。


「……8歳のときの懇親パーティですね」

「……すみませんでした」


ロゼリアの言いたいことが分かり、反射的に謝罪する。

家族での旅行のときにも痛感したが、この世界、思った以上にコロコロ流れが変わる。

こういった転生作品では原作の流れは絶対、というものもあるのだが、ミストフィアは違うようだ。


私がお姉様を懇親パーティに連れて行っただけで、リフィルは生き残り、魔王にならなかった。

私が旅行の行き先を決めただけで、お姉様とお母様の関係は良くなった。

あの旅行から、私は原作の流れを極力壊さないように言動を考えるようになった。


今は良い流れが来ている。しかし、いつ悪化するかが分からないからだ。


「ずいぶんと、ウリアさんに都合が良いように進みますね」

「……?私たちが介入しているんだから、そりゃあそうでしょ」

「……リフィルが……っ!……いえ、なんでもありません」


やがて押し黙ったロゼリアは息を吐き、深く考え込む。

おそらくリフィルやヒビキのことを考えているのだろう。


それに先ほどの反応、ロゼリアもリフィルが転生者なのではないかと疑っているみたいだ。

私から見てもその可能性は高いけれど、今は様子見と考えている。


「軍人であるリフィルさんがウリアさんの侍女になるのは良いことです。私たちでは教えられないことを、彼女ならば教えられるでしょう。お話はそれだけですか?」

「うん、もしまたお姉様に聞かせられないような話があれば、夜に」

「はい。……エヴァ、あなたは……いえ、なんでもありません」

「?」


最後のロゼリアの言葉が気になったものの、話すつもりはなさそうだった。

私は仕方なく踵を返し、アルトリウス伯爵家へと跳んだ。

そんな私の背中を、ロゼリアが微妙な表情で見ていたのには、気づかなかった。


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