エリーゼのために
夕方、ナックルも預けて、モンスター狩りも出来ない状態だ
「そうだ、エリーゼに会いに行ってみようぜ。ポーションの他にも、何かあるかもしれない」
このジマの発言で薬屋に行くことになったのだが、薬屋の前は不穏な空気が流れていた。
「星5のポーションを、もっと格安で販売しろ」
「それは致しかねます、時間も労力もつぎ込んで、適正な価格で販売しておりますから」
「おい、嬢ちゃん。今はログアウト不可でみんなが困ってるんだよ」
「そうそう。値段の面で割り引きして少しでも攻略に貢献するのが、得策じゃないかな?」
「値引きはお断りしています」
攻略組?いや準攻略組がエリーゼに対して、無理な値段交渉を行っている。
「おい、それくらいにしておけよ」
「そうだそうだ!エリーゼちゃん困ってるじゃん」
「ああっ!なんだお前ら、関係ないんだから引っ込んでろよ」
「ただこっちは、ポーションを安く売ってくれと交渉しているに過ぎませんから」
「攻略組でもないんだろうし、口出しすんなよ」
これにはジマ逹も頭にきた。
「そんなにポーションが欲しいほど強いんなら闘技場で白黒つけようぜ」
「やってやろうぜ」
「師匠こっちは余裕綽々ですよ」
「上等だ!」
「三本勝負のうち、二本先取した方が勝ちでいかがですか?」
「もしこっちが勝ったら、二度とケチつけてくるなよ。それと持ち金の半分はもらっていく」
「良いぜ。それならこっちが勝った時は、二度とエリーゼのお店で騒ぎを起こすなよ。それと持ち金の半分をもらっていく」
「その条件でオーケーだ。早速、闘技場に行こうじゃないか」
こっちもやる気満々だが、相手も気合い十分と言ったところだ。改めて相手の装備を見てみると、剣に槍、鎖鎌だった。
それに対してこっちは丸腰。アクセサリーは身につけているも、肝心のナックルは預けたまま。さてどうしようか。
「こっちはナックルなしですよ。大丈夫でしょうか?」
さっきまで強気だったナナが不安を訴える。
「リアルでのいつも通りだと思えば、楽勝ムードだろ」
「喧嘩で剣や槍は出されないですよ・・・」
「一人は任せろ」
ナナの不安を吹き飛ばすように、ジマが言う。
「俺も一人任せてもらおうか」
リュウが立候補する。
「それなら私も行きますよ。こういうのはユリさんより慣れっこですから」
ナナも立候補する。
「頑張れ、皆の衆。苦しゅうないぞ」
ユリがふざけた口調で言うと、場の空気がホッとしたムードに変わった。
闘技場に着くと、
「さて、早速始めようか」
「望むところだ!」
試合が始まろうかという時に
「みんな全額ジマに賭けたからねー」
と呑気な声が聞こえてきた。勿論ユリの声だ。
「全く仕方ないな」
これは意地でも勝たなくてはならなくなった。
相手は剣使い。スピードで圧倒してやる。心の中でそんなことを思う。
試合開始直後
「ダッシュ」
で、一気に距離を詰める。
「スラッシュ」
剣使いもスキルを発動させるが、間に合っていない。ストレートを放つと剣使いの右目の上をカットする。赤いエフェクトが散る。これで攻撃力20%アップだ。
「三連突き」
背後に回って避ける。後ろからハイキックをかますと剣使いはよろける。ローキックで尻餅をつかせると、ローキックの連打で一気に終わらせる。
「ナイス勝利」
リュウからねぎらいの言葉が入る。
「次の試合、勝てよリュウ。俺もお前に、全額賭けるからな」
「おう」
「二本先取なら俺が勝てば終わりだな」
リュウが両手の拳を打ち付けて、気合いを入れる。相手は槍使いだ。
試合が始まる。
「ダッシュ」
例に漏れず、一気に距離を詰める。
槍使いは後ろに下がりながら、突きを放つ。だがリュウは、ダッキングしながら避けつつ距離を詰め、ワンツーでダウンを奪った。その際持っていた槍を蹴飛ばしておいたので、槍使いも丸腰になった。こうなると勝負は、火を見るより明らかで鬼の形相で殴りかかってきた槍使いの攻撃を全て避けきると、じわじわとボディー攻めをして倒しきった。
「おめでとうリュウ、そしてありがとうリュウ」
「こっちこそありがとよ」
こうしてジマ逹二本先取で、試合は幕を閉じたのだった。




