【7話改稿:貴女達はとんでもない別嬪さんでした!】
前回の一人称主人公表記から改稿してみたいとちょっとづつですが、弄り直し始めました。本来のシナリオは変わらない予定ですのでご容赦くださいますようお願いいたします。
身体探索用でサギが作った光の玉はまだ、部屋の隅の方で青白い光を放ったまま浮遊していた。ちょうど彼が入った入り口と反対側にはさらに小さな出入り口があり、その前で彼をご主人様として待つ従者の様に、ふわりふわりとその場で浮遊しながら光っている。
彼は光の玉のところまで歩いて行くと、その入り口から隣の部屋の内部を覗き見て彼女達の身体を其処に見つけた。
下層の部屋で彼が横たわっていたのと同じような寝台が二つ並んで置かれていて、その上に彼女達であろうと思われる人物の身体が仰向けで横たえてあった。まるでお伽噺の眠れる森の美女の様に……。
絶句するほど美しい、ひとりは金色に輝く腰まである長い髪の毛が特徴の目鼻立ちのくっきりした顔立ちの美少女だった。女性特有の丸みを帯びた身体のラインをはっきりと出す、天女の羽衣のような透明に近い薄桃色の絹地の服を着ていて、眠っていても艶めかしい雰囲気を醸し出していた。
もうひとりの彼女も、つややかな銀色の髪を肩のとこですっきり切り上げる、いわゆるショートカットの髪型で出で立ちはボーイッシュであるが、小顔の顔立ちは愛らしくまさしく、女の娘っていうたとえがぴったりの美少女だった。しかも金髪の彼女に勝るとも劣らないスタイルは、これも身体のラインにぴったりとした革生地のタンクトップとホットパンツ風の戦闘衣をまとって露出が多い分、彼も目のやり場に困る状況であった。
「おや、お主、発情しておるの……!」
「サギさん、純粋なご主人様をいたぶるのはおよしなさい! 蘇生魔術の際に動揺したらこまるでしょ!」
「おおっ、そうであった、そうであった。主殿、では後での……」
「だから、それがだめだって言っているでしょうが! コラッ……ウギさん!」
「いやいや……、マジにウギさんもサギさんも、すごい美人なんですね……びっくりしましたよ、こんな美しい方々とは……」
「主殿…」
「ご主人様…」
彼女達の寝姿に心を奪われて見蕩れて続けていた彼が、ハッと我に返ったのはそれからしばらくしてからのことであった。流石にそれだけ見惚れていれば……彼自身の女好きを指摘したウギにも今後、反論は出来ない事をあらためて認識したであろうと思う。
「さあ、ご主人様、始めましょうか! 蘇生魔術! お願いします」
心なしかサギの声色がとても嬉しそうに聞こえる。気のせいでは無いであろうが彼もここで集中力を切らすわけにはいかないことを十分に感じ、返答もうわずり気味になっていた。
「はっ、はい! では、始めますから……フォローをよろしくお願いしますね!」
「大丈夫ですよ、ご主人様! 自信をもってください」
まずはウギからの蘇生を始めることにした。彼女等、曰くサギが直接フォローをするためにも彼と同化した魂の型の方がやりやすいとの事で、サギの方を後回しにする判断である。
銀髪ショートの髪型の娘がウギらしく、彼女の額に彼の右の掌を当てた状態で蘇生魔術を念じ始める。
蘇りの意識をイメージして掌からウギの額に彼の魔力を注入する。
右の掌がまばゆく青白い光を放ち始めると、彼女の額の周辺が赤く輝いてきた。そうしてウギの身体全体にその赤い光がまわり始めると更に輝きは強くなって、今度は彼とウギのふたりの身体全体が黄金色に輝き始める。
やがて光が緩やかになってくると共に輝きは収束していき、最初の頃の様にウギの額の部分だけに赤色光を残していた。その状態で暫くすると息づかいと共にタンクトップ風の上着姿のウギの胸のあたりが上下に動き始め、彼女がゆっくりと呼吸を始めたのがわかった。
――しかしこの娘、巨乳……! Fカップはあるかな!
若干だが彼も魔術中に余裕が出てきたのか僅かに邪念が漏れ始めたようである。上下に揺れる彼女の撓な胸の谷間に目を奪われ我を忘れて呟いてしまったようだ、むろん心の中でだが。
そのとたん彼女の眼がパッと見開き、そのかわいらしい口元が動いた。
「お主、スケベだな! まあ、それはそれとして嫌いじゃ無いがの! 触っても良いぞ! ほれほれ!」
と、ウギはいきなり胸を突き出して軽く揺さぶりながら胸の大きさを誇示しようとした、そうしたところ……呻きながら身体を縮ませる。
「あっつ……うっうっつ…痛っ! 痛ぃいいっ!」
――ああ、やっぱり!
「ほら、痛いでしょ! 蘇生間際でいきなり動くのは身体に毒ですよ、ウギさん」
ほらねと脳裡をよぎった思いとそんな彼とまだ同化しているサギのあきれた様子の唸り声が念波として彼の頭の中に響き渡った。
そんなこんなでウギの蘇生魔術式は事無く終わった。ただ、回復魔術はサギが蘇生してからの作業となるので、ウギには寝台に横たわったままでいてもらう。
サギの蘇生魔術式は彼としても二度目の術式となるので、特に気になることも無く、順調に終わった、流石である。まあサギの艶めかしい色気に負けぬ集中力を維持する為、彼自身が邪念を払う事に使った気力は半端なレベルではなかったと言う事実は今は伏せておくとしよう。
サギが目覚めた後は三人ともサギに回復魔術をかけてもらい、蘇生後の身体の調整を早めてもらうことも忘れなかった。
しかしこの回復魔術のすごいところは、かけて貰った直後に一気に身体が軽くなったのがわかったし、まず動きが格段に早くなった。筋力も増した感じだったし、なんだか強くなった気もするらしい。たぶん気のせいだと思うが……。
彼もこの魔術が気に入った様で教わりたい……と、サギに回復魔術の伝授をお願いしたところ、「ご主人様、後でね!」と軽くいなされて終わってしまっていた。彼には断られる理由が何故だか分からなかった様だったが……。
「お主、馬鹿か? 回復魔術を覚えたら底なしだろ……! △欲!」
「はあっ! ……あっ! えっ!!」
「ご主人様は純粋ですね! って、純粋と書いてウブって読みますが……そこが、かわいいところでありますねぇ……!」
「いやいや、そんな事は全く思っていませんでしたよ、本当に……」と言い訳をしようとして……気が付いてやめたようです。蘇生した彼女達を間近に見てサギの艶気とウギのグラマラスボディに彼の貞操観念が崩壊し掛かって自信を持てずに……眼をそらしていましたから。
――確かに、スケベですから俺! もう勘弁して下さい。
との彼の魂の呟きは蘇生し終わった彼女等のこころにはもう届かなかったようです。