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エノク第二部隊の遠征ごはん  作者: 江本マシメサ


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最終決戦! その十二

 騒ぎの発端は、巨大竜に跨がってやってきたリオンさんの登場からだった。

 フォレ・エルフの村に封印されていた邪龍が復活するかもしれないと、忠告しにやってきたのだ。

 リオンさんの目的は、『邪竜殺し』の称号を持つ、シエル様に報告すること。

 彼女はアイスコレッタ家の者で、シエル様の孫娘なのだ。

 ところが、シエル様は不在。帰ると言っていた予定はとうに過ぎていたが、いまだ戻ってきていない状態であった。

 シエル様は大英雄であるので、心配はいらないと思われるが……。

 問題は、邪龍のほうだろう。

 歴史の中で、世界を危機に陥れた存在の多くが、邪龍と呼ばれる悪しき存在であった。

 それは、魔物が最強の幻獣『竜』と同等かそれ以上の力を得ており、世界を滅ぼそうとする存在であるから。

 多くの邪龍は、『魔王』と呼ばれ、『勇者』に倒されていたらしい。

 封印された邪龍が、魔王だったら大変だ。

 リオンさんは国へ報告し、急遽、邪龍討伐部隊が組まれることとなった。

 それに、第二遠征部隊が参加することになったのである。

 なぜか幻獣保護局のリヒテンベルガー家の親子まで、参加することになっていた。

 邪龍が幻獣であった場合、保護するとか主張しなければいいが。

 稀に、悪堕ちした竜が、邪竜となる場合もあるという。

 シエル様が以前倒した邪竜は、幻獣のほうだと聞いていた。

 邪竜も邪龍に匹敵する強さを持つ、危うい存在だ。保護なんて、無理だろうが。

 ただ、リヒテンベルガー侯爵は国内最強の回復魔法の遣い手。娘のリーゼロッテは、炎系の魔法を操る貴重な魔法使いである。同行していたら、心強いだろう。

 幻獣絡みで暴走しなければの話だが。

 普段はクールな親子だが、幻獣が関係すると興奮して手が付けられなくなるのだ。

 やっぱり、リヒテンベルガー家の親子の同行は断ったほうがよくない? と、思ったが、私の一存でどうにかなるものでもなかった。


 奇しくも、私は一年半ぶりに実家のあるフォレ・エルフの村へ帰郷した。


 村では、魔術医の先生に迎えられた。そこで、とんでもない話を聞く。

 邪龍を呼び出したのはリスリス家の者達で、責任を取って生け贄になっていたと。

 さらに、先生は邪龍を殺そうと、シエル様を召喚したらしい。

 しかし、シエル様は現在、行方不明だという。

 先生は森の結界の力を強めたため、祭壇のある村から動けないという。

 私達はまず、シエル様捜しから行わないといけないようだ。

 出発前に、ザラさんを家族に紹介した。呆れたことに、両親は私が作った苦い雑草茶をわざとザラさんに飲ませて、試すようなことをしたのだ。そんな状況にあったとは知らないザラさんは、ふつうに雑草茶をおいしいと言ってくれた。そこで両親は、私とザラさんの結婚を認めると、涙ながらに叫んだのだった。

 って、なんでザラさんが私に結婚を申し込みにきたみたいになっているんだ!

 ザラさんは優しいので、盛り上がっている家族に物申すことはしなかったけれど……。


 まあ、いろいろあったが、邪龍が封印されている森の調査が始まる。

 まずは、シエル様捜しだ。

 そう思っていたが、とんでもない事態となる。

 突然転移魔法が発動し、私達はフォレ・エルフの村とは異なる森へ飛ばされてしまった。

 それだけでも不測の事態なのに、なんと、食料を詰め込んだニクスの中身が、ほとんど零れてしまったのだ。


 妖精鞄であるニクスは、申し訳なさそうにしていた。


『ごめんなのねん』

「いえ、ニクスは悪くないです」

「おい、リスリス、鞄に何が残っているんだ?」


 隊長に聞かれ、ニクスの中を探る。すると、ムッチリとした肉(?)を掴んだ。


「あの、これだけです」


 鞄から出てきたのは、真っ白な毛並みを持つ鼬。


『ア、アルブムチャン、ダヨォ』


 鞄には、アルブムだけ入っていた。何かぎゅっと抱きしめているなと思って見てみたら、私が作ったクッキー入りの革袋を持っていたようだ。


「えーっと、鞄の中には、アルブムとクッキーが入っていました」


 アルブムの私物である、唐草模様の包みも、しっかり首に巻いていた。


「クソ……!」


 隊長は凶悪な山賊顔で、悪態を打つ。

 なんと、各隊員のベルトに吊していた携帯食料も、なくなっているらしい。

 食料だけなくなっているということは、落としたというより、誰かに奪われたと判断したほうがいいだろう。

 防げる事故ではなかったようだ。


「そもそも、俺たちはどこに転移してきたんだよ」


 隊長の疑問に答えたのは、リオンさんだった。


「おそらく、邪龍の魔力波動を受けて、斜め上方向に成長したフォレ・エルフの森だろう」


 村の木々は先生の結界があるので、影響を受けずに枯れるばかりだった。

 一方で、邪龍の支配下にある森は、謎の成長を遂げている。

 近くにある木は、天を衝くような勢いで伸びていた。てっぺんは見えない。

 雑草はナイフのごとく、鋭く生えている。転んだら、血まみれになりそうだ。


『パンケーキノ娘ェ、見テ~~!!』


 アルブムが巨大なキノコを持って、走ってくる。


「なっ、それは、胡椒茸ですか!?」


 通常の五倍ほどの大きさの胡椒茸を、アルブムは発見したようだ。まるで、傘のように持っている。


「これも、邪龍の影響なんですか?」

「だろうな」


 アルブムの食べ物レーダー曰く、食べてもとくに悪影響はないらしい。

 アメリアやステラにも見てもらったが、『大丈夫。ただの大きく成長しただけの食材だから』と、言っていた。


 これから、食材を探しつつ、シエル様も捜さないといけないだろう。

 隊長は、瞬時に判断する。


「ここを拠点(キャンプ地)とし、二手に分かれ、食料を探す班と、アイスコレッタ卿を捜す班に分かれ、夕方までに合流する」


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