↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エノク第二部隊の遠征ごはん  作者: 江本マシメサ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
325/414

最終決戦! その十一

 ザラさんと一緒に、実家に向かう。

 アメリアとステラは、先生の家でお留守番しているという。

 エスメラルダは一緒に来る気だったようだが、弟妹にもみくちゃにされるよと言ったら、「いってらっしゃい」と見送る側に回った。

 アルブムは私の首元で襟巻きの振りをしている。果たして、騙されるのか。

 ニクスは黙っていたら、妖精だとバレないだろう。


 ミルは無理矢理家を出てきたので、少し気まずいらしい。ちょっと時間をおいて帰るという。

 ウルガスも誘ったが、遠慮された。

 そんなわけで、ザラさんと二人村を歩いている。


 森の中にあるフォレ・エルフの村は、驚くほどのどかだ。

 木の幹に結界の呪文が刻まれていたり、森の妖精が行き来していたりする様子はザラさんにとって珍しい光景のようだ。

 村を案内しつつ、実家を目指す。


 一年半ぶりに、我が家に戻ってきた。


「ザラさん、これが、実家です」

「これがメルちゃんが育った家なのね」

「はい!」


 嵐がやってきたら倒壊しそうな木造平屋建ての家は、当然ながら何も変わっちゃいない。洗濯物は風通りがいい玄関前に干しているという、生活感丸出しのいつもの我が家だ。


 洗濯物を避けながら扉を開こうとしたら、勝手に開かれる。

 玄関からひょっこり顔を覗かせたのは、五つ年下の弟・ロロだった。


「うわっ、姉ちゃん」

「ただいま!」

「騎士、首になったの?」

「そんなわけないでしょう」

「じゃあ、なんで突然帰ってきたんだ?」

「それは――」

「うわっ、姉ちゃんが、男連れてる!」 


 ロロは回れ右をして、家の中に向かって叫ぶ。私が、男を連れて帰ってきたと。


「みんな~~! 姉ちゃんが、男連れて帰ってきた~~!」

「な、何言ってんの!?」


 首根っこを掴んで捕獲しようとしたが、素早い動きで逃げられてしまった。

 ぐぬぬ……!


 そして、居間に家族全員集まるという、珍しい状態となる。

 なんというか、狭い空間に十二名もいるので、圧がすごい。

 仕事は休みにしたらしい。大雨や大雪の日だって、休んだことなんてないのに。


 父は緊張の面持ちで、ザラさんを見ている。

 母は震える手で、お茶を差し出した。


「あの、粗茶ですが」


 母がそっとザラさんへ差し出したのは、私が一年半前に作った雑草茶である。


「お母さん、一週間くらい前に、王都の良いお茶を送っていたでしょう?」


 母は目を泳がせながら言った。


「ああ、あれ、あまりにもおいしいから、みんなでごくごく飲んじゃって」

「ええ……三ヶ月分くらい送っていたはずだけれど」


 ザラさんはニコニコしながら、雑草茶を受け取って飲んでくれた。


「うん。おいしい……」


 ザラさんがそう呟いた瞬間、父は「合格!!」と言った。


「え、合格って、何?」

「二人の結婚を、認めよう!」

「待って。なんでそんな話に飛躍しているの!?」


 母がしどろもどろと説明する。


「メルの最高に苦いお茶を難なく飲んでくれる人ならば、任せても安心だろうって、話をしていたの」


 私特製の雑草茶は、苦みが強い。幼い弟や妹達は飲みたがらない。

 だから、一年半経っているのに、消費されずに残っていたのだろう。


「あの、ザラさん、本当においしかったですか?」

「ええ。私の実家は、雪深い場所でしょう? こういう、豊かな緑を感じられるものって、尊いと思うの」

「ザラさん」


 ザラさんの出身を聞いた父が、食いつく。父は雪国に憧れているらしい。あとで、話を聞かせてくれと嬉しそうに話していた。


 それから、ザラさんは幼い弟妹達にもみくちゃにされていた。

 ついでに、生き物だとバレてしまったアルブムも、おもちゃになっている。


『アアアアア~~! 困リマス! アルブムチャンハ、オ触リ厳禁デスノデー!』


 その、なんだ。アルブムの犠牲は忘れない。


 どさくさに紛れて、ミルも戻ってきた。

 心配していたけれど、両親はミルを怒らなかった。それどころか、よく頑張っていたと、褒めていた。

 ほっこりした瞬間である。


「なんか、良い匂いがする!」


 目ざとく気づいた弟妹の前に、先生の家で作ってきた料理を差し出す。


「なにこれ!?」

「お団子?」


 それは、蒸した丸芋に塩コショウで味付けをし、チーズを包んで丸め、油でカラッと揚げたもの。ザラさんと一緒に、お土産用に作ったのだ。


「おいしそう!」

「食べてもいい?」

「どうぞ」

「やったー!」

「姉ちゃんの手料理、久しぶりだ!」


 弟妹達は、いっせいに手を伸ばす。


「んん、表面はサクサクで、中はホクホクだ!」

「まんなかに、しょっぱいチーズが入っている!」

「おいしい!」


 やはり、子どもにはチーズに限る。手持ちの食材で、いいお土産が作れた。


 家族の見送りを受け、実家をあとにする。

 一年半前は胸が締め付けられるようだったが、今日は隣にザラさんがいる。

 ぜんぜん、寂しくなかった。


「お姉ちゃん、待って!」

「ミル、早く!」


 隊長や幻獣組と合流し、シエル様のことを報告すると、皆驚いていた。


「祭壇に行く前に、シエル様と合流しておいたほうがいいでしょうね」

「お祖父様は、何をしているのか」


 リオンさんがぽつりと呟く。

 邪龍など、大英雄シエル様の敵ではない。それなのに、行方不明だと。


 その理由はすぐに明らかとなる。

 森へ一歩足を踏み入れた瞬間――体が宙に浮かぶ。別の空間へと飛ばされてしまった。


「どわっ!」

「メルちゃん!!」


 ザラさんが私の腕を引き、アメリアが首根っこを銜える。ステラは背中に乗せてくれた。

 エスメラルダとアルブムを胸に抱き、歯を食いしばった。


 着地したのは、フォレ・エルフの森と似て非なる森。

 みんな、同じ場所に着地したようで、ホッとする。


「ここは、どこですか?」


 答えられる者は一人もいない。

 そして、重大なことに気づく。


「た、大変です」

「どうした!?」

「ニクスの中身が、ほとんど空になっています!」

「なんだと!?」


 空間転移中に、ニクスの中身がこぼれてしまったようだ。


 第二部隊最大の、ピンチである。

 

仕事やプライベートのことで忙しいため、しばらく更新できないかもしれません。

かならず最後まで完結させますので、しばらくお待ちいただけたら幸いです。

コミカライズの最終話は、7月5日に更新されますので、チェックしていただけたら嬉しく思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。