雑兵
ちょっと追加しました。
平凡にして平凡、毒にも薬にもならない、それが雑兵。
将からすれば意見を述べず命令に従う扱いやすいただの駒。
それでも、その数が多いだけで十分な戦力になる。
その程度のはずなんだけど…。
ルッシェと名乗った見習いから上がったばかりのあの兵士は本当に同じ人間なのか疑わしく思える。
先日の流星のような災害により、勇者に同行した騎士のほとんどがレベル70に達した。
レベル15前後だった若い勇者達も60近いレベルになったハズだ。
あの日、勇者を含め、50人近い一団が三十から最大四十オーバーのパワーレベリングを果たした計算になる。
神話の怪物の討伐に同行したかのようなレベルアップ、果たしてこの世界にいままでこんな経験をした一団があっただろうか?
恐らく無いはずだ。
世界の記録で最高がレベル1から15なんて記録は残っていたそうだが、二桁以上の記録はないそうだ。
でも、だからこそ異常な事態に対応出来ず全員軟禁状態になっているのだが…。
ルッシェという彼も同じ訓練をしている。
…いや追い立てるたりして、それ以上に動いているハズなのに何であれは息切らす程度ですんでいるんだろう?
人?
◇◇◇◇◇
「オレ自身が人かどうかと問われたら人だと答える。」
全員筋肉痛の状態で野営に入る事になりました。
明日の朝になれば、スキルに頼らずとも何人かは手加減をしっかり把握するだろう。
出来なきゃ明日も明後日も同じようにシゴくだけ。
因みに柔軟やストレッチ禁止だ。
「よーい始め。」
「「「オォォッ!。」」」
津波とはいかないが、集まっていた人が一斉につかみかかってくる。
一対四十のハンディマッチ、相手の狙いは俺が腰に巻いた帯。
くるくるあ~れ~をしたら勝ちと言うルール。
一見不利に見えるかもしれないが、オレ以外は全員筋肉痛なので動きが遅い。
「おっ…おっ…おぐっ。」ど、一歩足を踏み出す度に声が洩れ、苦しみ悶えながらの腰帯争奪戦。
そのうちなれますよ。
「おっにさんこっちら♪手の鳴る方へ♪」
へいへいピッチャービビってる♪(やじ
オレより《強い》んだから頑張って下さい。
さぁよけてよけてよくまくるぞ
◇
「ん~?」
獅子累々いや、死屍累々?
割と元気なオレだけが訓練所に立っている。
最後まで追っかけてきていた勇者も先ほどついに力尽きた。
これが、ガキ共とやってたなら全員脱がすんだけどな。
とりあえず今日は、痛さが激痛になるまでがんばらないとはなしにならないんだけどな。」
「俺はまだ…終わって…ない。」
少しの時間をおいて、ゆらゆらと起き上がる騎士たち。
いや、流石に気迫が違いますわな。
「そうだ、俺は、俺達はあの帯の先になにがあるかを…知りたいんだーっ!!」
「うをぅっ!」
筋肉痛とは思えない動きで騎士の一人が走り出した。
「おぁぁぁっ!」
なんか一部の騎士様が、途中から気迫が段違いに上がってるんだけどなんでですかね?
そのおかげでオレも珍しく汗だらけだよ。
「今だーっ!」
後ろからほかの騎士様が飛びかかってきた。
スイッと横にかわす。
いくらなんでも声だしたらまるわかりなんですがね?
「まだだぁっ!」
よけた先の騎士がさらに飛びかかってくるんだが、声が先行してるから…。
「こうなったら、全員でかかれーっ!」
「「「おぁぁぁっ!」」」
いや、さっきから同じことしてますからね?
「つかまえt…。」
「…てないぞ。」
掴みきれなかったイチローがゾンビのような動きで熱い包容をかわしたのは騎士様だ。
動ける騎士様に気を取られ、寸前まで気づかなかったがどうにもみんな気配がだだ漏れなんだよな。
なんて、みんな等間隔で倒れてるんだ。
それで、捕まえられるなら苦労はないぞ。
「…ちくしょう。」
誰が犬か、騎士様を抱きしめたままイチローが崩れ落ちる。
「…勝ったな。」
気がつけば、動かない連中は全員眠り込んでいるようだ。
さっきまで追いかけてきていた騎士様もうつ伏せに倒れている。
守り抜いた帯を外して空を仰ぎ見る。
戦いはいつも虚しい。




