面倒事は後回し
「…もうこんな馬車乗りたくない。」
馬車を降り立った時に誰かが呟いた言葉がやたらと辺りに響いた。
装備がないとはいえ、長旅でしたからねわかります。
「あ~、目的地についたから予定通りにルッシェ君はアッチと合流しようか。」
護衛騎士さんが背中をグイグイ押すから、礼もいえずに近衛騎士様方から離されてしまった。
このままアッチに行ってしまったら、あまりに礼儀知らずな人間だと思われてしまうのではないだろうか。
とか思ってたら近衛騎士さんらが馬車を離れて走り出したっ!
「人間走りたい時もあるんだよ。いまは、そっとしといてやれ。」
解き放たれた犬ですか?
それじゃ仕方ないまた折を見て礼と謝罪をしに行こう。
とにかく、今はちょっとでいいから羽を伸ばしたい。
「どうせ時間あるなら、合流前に狩りに行っていいでしょうか?」
「狩りか?遠くに行かないなら別に構わないが…そんなに嫌かね。」
「ソンナコトナイヨーチョトヤスミタイダケヨ。」
振り向きながら喋ったらなんか変なアクセントがたくさんついた。
後ろ向き(・・・・)でしゃべるのって大変だ。
「わかった、行ってきなさい。」
ありがとうございます。
◇◇
結果、スラム育ちがよく狙う温泉の近くにいる大きなトカゲが取れた。王都の近くの秘湯ポイントにたびたび見かけるこいつらは爬虫類のくせにコウモリの程度の翼を生やしていることが多い。
小弓が威力を発揮出来るギリギリの距離まで近づいて放った矢はトカゲの頭を串刺しにした。
大きさ的には鹿や馬くらい、トカゲとしては今までで一番大きい、結構食べ応えがありそうだ。
一番美味い尻尾肉だけ切り取って野営地点に帰る。
残りの肉は久々に風魔法で作った氷メインの水の中にボッシャリと投げ込んで上から草をしいておいた。
こうすると、野生の獣に捕られないし一週間ほどなら保存が利く。
本当は燻製や干肉にしてクインテットに持ち帰りたいが、作業中は匂いで肉食獣がくる可能性があるのであきらめる。
それに、あっちでもたびたび捕まるのでそこまではいらない。
◇◇◇◇
「美味しいけど何の肉?」
野営地点で串焼きにされた肉を頬張りながらフミエが聞いてくる。
尻尾肉を口にしてみれば柔らかく思ってたより脂がのっていた。
トカゲの癖に生意気な。
「大トカゲだよ、尻尾肉だから旨いだろ?」
無言で頬張る一同。美味い物は時として沈黙をもたらす。
「美味しいけど、それにしちゃ美味すぎないか?」
護衛騎士さんはまでそんな事を口にするか。
「こいつらなら王都近辺にも割といますよ?ほとんどがスラムの子供の弓の的になりますから市場には出回りませんけど。」
「そんな話しは聞いたことがないんだが。」
「スラム育ちにとっちゃ貴重な栄養源ですからね、ご馳走だとばれたら乱獲しにくる人たちも出ますから。」
だから、あえて秘密にしてるんですと話したら、なるほどと護衛騎士が納得する。
実際は生まれたばかりなら動きが鈍いから毎日のように湧くポイントに見張りがいて乱獲しまくってんのは俺たちなんだけどね。
俺たちにとっちゃ足があって食えるならただのお肉の塊です。




