ブランカ=カストリオ⑥
ロバートが貸してくれた兵士達は、何もせずにロウマに付いて来ただけだった。みんな何が起きたのか分からずに、ただ口をぽかんと開けていた。
様子を見ていたロバートは、その場でロウマを調練の指揮官に任命した。辞退したロウマだったが、ロバートはその場から解放してくれなかった。延々と説得され続けたので、とうとう根負けした。
それから一月の間、調練で悪い部分の改善に努めた。最初は、苛烈な調練に付いていけない兵士達が多く文句もあったが、最近は慣れたらしく文句も無くなった。
「ロバート、お前は私のことを、どれくらい知っている?」
「なんのことだ?」
「とぼけるな。普通、会って間もない奴を調練の指揮官にするわけないだろう。私のことをどれくらい調べたのかしゃべってもらおう」
「俺は何も調べてないさ。ただ、お前にこの練兵場を見てもらいたかっただけさ。他意は無い」
本当だろうか。もしかしたら、ロバートは自分がレストリウス王国の右宰相だと知っているのではないだろうか。最近は、そんなことを考えるようになった。
ライナが話したのだろうか。いや、彼女は簡単に約束を破る女ではない。おそらく何もしゃべっていない。その証拠に、シャリーや他の姉妹は自分に今まで通り接している。
ロバートはロウマの方を振り向いた。
「俺は知られたくない秘密を、こそこそ調べるほど有能な人材じゃない。そこだけは分かってもらいたい」
語気に力が入っていた。自分の疑念が、ロバートを少々怒らせたようである。
「……悪かった。許してくれないか」
「いや、こっちもムキになってすまない」
話はそこまでになった。兵士達に休息の終わりを告げた二人は、調練に戻った。
ロウマとロバートは二手に割れた。お互い、実戦を想定しての調練になった。合図の角笛が鳴るとロバートの率いる騎兵が、動き出した。素早さだけは認めるが、動きがまだしっかりとしていなかった。
ロウマは副官に指示を送ると、自分の騎兵を二つに分裂させて疾駆した。
少しずつ騎馬が近付いていく。
徐々に徐々に。
とうとうお互いに。
ぶつかった。
ロバートの騎兵は勢いよく、ロウマの騎馬隊を蹴散らそうと必死だった。ただひたすら馬上から突き落とすのみである。
しばらくするとロウマは後方に退いた。
ロバートも追いかけた。
一瞬にして、ロウマの騎馬が反転した。不意を突かれたロバートの騎兵は動揺した。
落馬する兵士達が相次いだ。さらにロウマが分けたもう一つの騎馬が、追い打ちをかけた。
勝負は決まった。
ロバートはロウマに突き落とされた。
調練が終わると、兵士達を再び休息させて、ロウマとロバートは幕舎に入った。




