ブランカ=カストリオ⑤
すでに九月の半ばを過ぎていた。凍てつくような冷たい風が吹いており、体を貫かれるようだった。レストリウス王国にいたころには、こんな寒さは無かった。
「寒いな」
馬上からロウマは身震いした。吐いた息はすでに白かった。
「これが寒い?序の口だぞ。二か月たつと、今よりもっとひどい寒波がやって来るぜ。果たしてお前は耐えられるかな?」
「さあな。耐えたらほめてくれ、ロバート」
「断る」
ロウマとロバートは、お互い笑い合った。
周囲では兵士達が休息をとっていた。武器の手入れをしている者、馬の毛並みを綺麗にしてやっている者もおり、練兵場は活気に満ち溢れていた。
一か月前にロバートに案内されて、連れて来られたのが、この練兵場だった。ロバートによると、全て彼が率いている民兵だった。普段は農作業に従事しているが、三日に一度だけ調練に励んでいた。
どうやらロバートが住んでいる一帯は盗賊が多いらしく、それに備えての訓練らしい。
ハルバートン家は代々、民兵を組織して盗賊から土地を守ってきたらしく、農民からの信頼も厚かった。現在の調練の指揮官はロバートと六人の姉妹だった。指揮官としての腕は、全員悪くなかった。
だが、問題はやり方だった。ただ武器を振り回し、馬に乗っているようにしか見えなかった。
右宰相のころだったら迷わず指摘していたロウマだが、無駄な口を叩くわけにはいかなかったので黙っていた。
しかし、意外にもロバートから指摘を要求された。遠慮をしていたロウマだが、どうしてもと言われたので駄目なところを全て指摘した。
ロバートとライナ、レイラ、シャリー、ルミネの五人は素直に納得してくれたが、次女のディナと三女のイメールが反発の態度を示した。
ライナが口で分からせようとしても二人は納得しなかった。逆にロウマに兵士達を率いて勝負するように要求した。
シャリーの時と同じで避けることが不可能だったので、ロウマは承諾した。
ディナとイメールは自分の兵士達を三十人選んだ。ロウマはロバートの兵士達を貸してもらった。
全て騎兵だった。
勝負はすぐに終わった。
ロウマは一騎も減らさずに、全ての兵士を全て馬上から叩き落とした。
ディナとイメールも同じ運命をたどった。




