セイウンと暴れ馬⑧
セイウンは遠くを見つめた。
同時に白馬が一声、嘶いた。
よろしくな。
セイウンには、そう言っている感じがした。
***
城の軍議室に集まったのはバルザックとセングン、ハイドンの三人だった。
机上にはレストリウス王国一帯の地図が置かれていた。セングンが、地図の中央を指で突いた。
「首都に帰って来た貴族達が何人かいる。筆頭となっている男は、ブランカ=カストリオ。二年前にロウマの手によって、地方に左遷された男だ」
「会ったことがある」
「本当か、ハイドン?」
「ああ。私が会ったのは、随分昔の話だ。まだ闇商人の修行をしているころ、育ての男に彼の屋敷まで連れて行ってもらったことがある」
目が合った瞬間から、油断のならない男だと感じていた。少しでも隙を見せれば、確実にやられる。ブランカという男はそういう気を放っていた。
しかし、相手を納得させるだけの論理も持ち合わせていた。育ての男は、ブランカに何かを買ってもらいたかったようだが、逆に言い負かされてしまって帰らざるをえなかった。
あの時の話は、ハイドンもすでに忘れており人に話すことは不可能だが、筋が通っていたことだけは間違いなかった。
セングンはバルザックに目を向けた。
「バルザック、ブランカに関しての報告を頼む」
「ブランカは現在、三十歳。二年前まで中央で裁判官の最高職である大裁判官の書記官をしていたようだ」
「ロウマとの関係はどうだ?」
「はっきり言って最悪だ。ロウマの右宰相就任に一番反対していたのも、ブランカだったからな。ロウマに面と向かって、『お前のような馬鹿に国政を任せるわけにはいかない』と言ったらしい」
「それで左遷か」
「まだいい方だよ。ロウマの右宰相就任に反対した人物の大半が、不可解な死に方をしているそうだ。世間ではロウマ派に殺されたらしい、とささやかれている」
セングンは唸った。話を聞いた限りでは、ブランカという男はエリートであることは間違いない。早い話、天才型だ。セングンはロウマと一度しか会ってないが、彼は努力型の人間だろう。まさに水と油の関係である。おそらくブランカが殺されなかったのは、使える人材だったからだろう。




