後悔⑨
「十分泣きました。でも、ロウマに会ったら、また泣いてしまうかもしれません」
ナナーは鼻をすすった。
「勝手にすればいい」
興味が無いというような感じでグレイスは、そっぽを向いた。
アリスは、くすりと笑った。思った以上にグレイスという人物は、優しいのかもしれない。口はぶっきら棒かもしれないが、そこに隠れた優しさというものが伝わって来る。きっと本人も自分の優しさには気付いてないのかもしれない。なんだか自分だけが知っているという気がしてアリスは嬉しくなった。
しばらくナナーとアリスは、たき火の炎を見つめていた。
グレイスは疲れたのかすでに、横になっていた。
「ねえ、ナナーさん」
「ナナーでいいわ。ロウマから聞いたけど、あなたも十八歳なのでしょう。だったら、呼び捨てで結構よ」
「でも身分が……」
「そんなものどうだっていいわ。今の私には身分なんて、ちっぽけな肩書きにしか感じないわ。それに……友達になってほしいの」
「友達?」
「うん。友達にね」
ナナーは、にこりと笑った。
素敵な笑顔だった。あまりの美しさにアリスは圧倒されてしまった。ロウマがほれたのも分かる気がする。やはり自分は到底足下にも及ばない。アリスはうつむいた。
「ありがとう。喜んで友達になるわ、ナナー」
「こちらこそよろしく、アリス」
お互い固い握手をした。
「ナナー、ロウマ様のことで一つ言いたいことがあるの。どんなことがあっても、恐れずに接してあげて」
「自信が無いわ。ロウマはもう、私なんてどうだっていいと思っているかもしれない。それよりも、あなたが優しく接してあげた方がいいかもしれないわ」
「違うわ。ロウマ様が愛しているのは、あなたなの。どんなに変わっても、あの人はあなたを愛しているはずよ」
どうしてと疑問を投げかけようとしたが、それより早くアリスが首を横に振った。何も言わないでという意思表示である。
おっとりしているようで鬼気せまるものがあった。どうしてアリスはここまで必死になっているのだろうか。よく理解することができず、ナナーは首をかしげた。
「どうしてそんなことが分かるの?」
「分かるわ。彼を四年間も見てきたのですから」
アリスは、にこりと笑った。
ナナーは、はっとした。
アリスの表情は笑っている。だが、目は悲しげに訴えかけていた。
あなたがうらやましい、と。
「そうね……そうするわ」
ナナーは、こくりと頷いた。
寝るふりをして聞いていたグレイスは、微かに溜息をついた。




