後悔⑧
ナナーは、アリスをそっと抱きしめた。
「本当にありがとう。私をぶってくれて、感謝しているわ。あなたのおかげで、分かったことがあるの。私は甘えていた。アリス、知っている?私には王族の血が流れているの」
それはアリスも知っていた。ロウマの話によるとナナーの家は建国以来の王族の血が流れているらしいが、その血は現在の王族から見れば限りなく薄い。
ナナーは話を続けた。
「一族の者が不正を働いたせいで、私の家は家財の半分を失ったの。でも、私はそれでも王族の血が流れている誇りを捨てなかった。その誇りがロウマとの婚約で邪魔をしていたみたい」
アリスは徐々に理解してきた。王族の血が流れているナナーからしてみれば、ロウマの家のアルバート家は低い家柄。気安く自分を呼び捨てにしたり、手紙を送り付けたりすることが許せなかったのだろう。
ましてや、ロウマにはアルバート家の血は流れていない。彼の父がアルバート家の養子になって家督を継ぎ、さらにロウマが継いだにすぎない。
ナナーからしてみれば出自もよく分からない人物と縁組みさせられたことが、ますます気にくわなかったのである。
人は誇りというものを持ってもよいが、時にはそれが邪魔をしてしまい、罪の無い者を傷付ける。
ナナーは誇りの使い方を間違ってしまった。
アリスもナナーを抱きしめて、背中をなでてやった。
「ナナーさん、私は誇りがあってもよいと思います。今度は別の誇りを持てばよいじゃないですか」
「別の誇り?」
「そうです。右宰相ロウマ=アルバートの婚約者という誇りです」
そうだった。それこそが、自分が持つべき本当の誇りだった。ナナーは嗚咽した。止まる気配はまったく無く、逆に多量に涙があふれてくる。
アリスも同じだった。ナナーの涙につられて、自分も泣き続けた。
二人は抱き合ったまま、お互いの感覚を共有した。
側にいたグレイスは、ただ黙ってその様子を眺めていた。
***
「もう泣かなくてもいいのか?」
グレイスが尋ねた。




