残党の村④
「ミリアン殿も案外、楽しんでいました。きっとそうすることが、まんざらでもなかったのでしよう。今の二人の会話がよく似ていましたので、びっくりしました」
「そうですか。どうも失礼しました。みっともないものを見せてしまいまして……」
エレンは顔を真っ赤にしながら、頭を下げた。
「気にしないでください。私達も久し振りに面白いものが見られたので、嬉しいくらいです。ところで、あなたは誰ですか?」
「エレンです。このセイウンの……」
「俺の妻です」
セイウンが急に話に割って入って来た。
こういう時だけ話に入りたがるので嫌な気分になるエレンだった。
「結婚されていたのですか?」
サイスが尋ねた。
「そうです。こいつが俺に熱い思いを体ごとぶつけてきたので、参りました」
「ちょっと、どういう意味よ?」
「どうもこうも、お前が寝ている俺のベッドに入って来て、無理やり夫婦の既成事実を作らされて……俺の純潔は無惨にも散って……」
「ちゃんと婚姻の儀を挙げたでしょうが!話を勝手にねつ造するな!」
さっきより顔を真っ赤にさせながら、エレンは叫んだ。
セイウンはそんなエレンを無視してさらに話を続けた。
「サイスさん、ガリウスさん。聞いてください」
「どうかしましたか?」
ガリウスが尋ねた。
「エレンは見ての通り美人です。俺も納得するくらいです」
「まあ、確かに」
サイスも頷いた。
「ですが、こんな美人でも足りないものがあるのですよ」
「なんですか、それは?」
「これです」
セイウンは、エレンの胸を指さした。
「見てください、この貧相な胸。こいつ何歳だと思いますか?十七ですよ。それなのに、こんな小さなボールほどしかない胸なんて異常です。本当にどうしてこんな風になったのでしょうか?幼なじみであり、夫の俺としては頭が痛いくらいです」
実にわざとらしい声でセイウンは語っていた。
聞いていたサイスは、わざわざ涙まで浮かべるほどかと疑問に思った。




