残党の村⑤
「俺は努力しました。色々精のつくものを食べさせたり、健康法もためしました。他にも涙ぐましいことがたくさん……」
「セイウン殿」
サイスが突然、低めの声で話しかけた。
「何ですか?これから俺がどれほど苦労したか詳しく話すところですよ」
「後ろ」
「はっ?」
セイウンが振り返ると、そこにはいつも通りの光景があった。
エレンは笑っていた。しかし、笑っているのは表情だけで目からは殺気を放っていた。指もわざわざ、ぽきぽきと音を立てている。
「覚悟はできたかしら?」
どうやら殺しはしないが、半死半生にするつもりのようだ。それでもセイウンは、不敵な笑みを浮かべていた。
「エレン、よく聞け。いつも簡単に殴られるだけの俺だと思ったら大間違いだと思えよ。今日の俺は一味違うぞ」
「面白いことを言うわね。どれだけ成長をしたか見せてもらおうかしら」
これは今まで以上にまずいかもしれない。あの世の一歩手前まで行くかもしれなかった。だが、自分は簡単に捕まるわけにはいかない。
「さらば!」
セイウンは一気に窓から逃走した。
「待ちなさい。セイウン!」
エレンもすぐに後を追った。
残されたサイスとガリウスは、ぽかんと口を開けていた。二人とも考えていることは一緒だった。
「血は争えないな、ガリウス」
「そうですね」
感心とあきれの両方が、二人の心中をかき乱していた。
しばらくすると、遠くからセイウンの悲鳴が聞こえてきた。
***
次の土地はまだ決まっていなかった。このままレストリウス王国の別の街に行くか、他国に行くかであるが、どうしようか迷った。
ハイドンは地図とにらめっこしていた。
どこに行けばいいのだろう。南方や西方は避けた方がいいかもしれない。熱病でやられてしまう可能性があった。




