未来探偵ミツオ(麗しのクーマ その1)
早朝から入店したミツオは喧噪の中で我を忘れていた。買い足した煙草は二箱を超え、のどの痛みがきっかけとなり腕時計のデジタル表記を確認した。もうすぐ日も変わる時刻。一心不乱でリールを回し続けた。日中は勝ったり負けたりを繰り返していたが、日が落ちるとツキは逃げだしたようだ。負けがこみだした。傷の浅いうちにやめればよいのだが、そういう訳にはいかなかった。生活費のすべてをすでにつぎ込んだからだ。いよいよ最後の寺銭もつきた瞬間、日付がかわった。
よろよろと立ち上がるしかなかった。ミツオは自責の念に駆られるが、時はすでに遅すぎた。空腹にも襲われてはいるが、食べ物を買う現金はすでに持ち合わせてはいなかった。空腹を紛らわせる煙草も最後の一本となった。
からからに乾いたのどに煙が鋭く差し込む。そんな時、背後から声をかける男がいた。
「ミツオさん、そのすっかり落ちた肩は、負けですね」
ミツオは聞き覚えのある声を感じて振り返る。自業自得とはいえ、人に指摘されると腹も立つというものだ。
「サブ、余計なお世話だ。そういうお前はどうなんだ」
サブと呼ばれた男はミツオよりも二回りは若い男だ。ミツオの事務所の入る雑居ビルの中にある「サンチェ」というバーで雇われ店長をしている。ハンチングをいつもかぶり、ツイードのニッカボッカとベストが彼のお気に入りのスタイルだ。ミツオのことを兄貴のように慕っている。




