3日で飽きるか慣れるか
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毎朝早くにクロフォード邸に行って、夕方帰り、それからお菓子やパンを作る、という生活も1週間が過ぎ、きょうはお休みの日だ。
園芸店は基本的に休日はない。店舗は休みでも、農園や温室は世話をする必要がある。まあそれは半日で住むので、午後からは休日となる。
レベッカは久しぶりに友人たちとランチの約束をしている。
クレア、ドロシー、アリスたちとは学校のクラスメートだった。クレアとドロシーはデザイナーの会社でお針子をしている。アリスはカフェでウエイトレスだ。クレアはもうすぐ結婚式をあげる。ドロシーとアリスはどちらも恋人がいて、近い将来結婚する予定だ。
「キャロル、恋人できた?」
友達は挨拶代わりにこれだ。
「お花が恋人。」
「またそんなこと言ってる。いいかげんに誰か見つけなさいよ。」
「そんなこと言ったって、モテないんだからしょうがないじゃない。」
「うそよぉ。キャロルは学校にいた頃、ファンがいっぱいいたじゃない。」
「そうよね、全部断っちゃうんだもん、もったいなかったわ。」
「そのときのツケがまわってきて、今じゃだーれも相手にしてくれましぇん。」
「あっはははは、キャロルったらまたそういうこと言ってー。」
女友達は良いものだ。その日は薄暗くなるまで喋り、涙を流して笑いあった。
次に会うのはクレアの結婚式だとみんなで約束をして別れた。
休み明けの朝はいつも体が重たい。
勤勉なレベッカだが、それでも怠けたいなあと思ってしまう。
それでもブランに急かされてレベッカはクロフォード邸に遅刻せずに着いた。
「おはようございます、デニスさん。今週もよろしくおねがいします。」
「おおっ、おはよう。今週もよろしくな。今週は雨の日が多そうだな。」
「そうですね。温室のほうがはかどります。」
「そうだな。じゃ、まずは木の方からいこう。」
「はい。」
朝は怠けたいと思っても、仕事に来てしまえば楽しくなってくる。
例によって歌を歌いながら剪定をしていたら、
「おはよう。」
という声が聞こえた。
あ、ティモシー様だ、と声だけでわかってしまった。
「おはようございます。今週もまたよろしくおねがいします。」
「きのうはよく休めたかな?」
「はい。きのうは午前中は仕事でしたけど、午後は友達と会ってました。」
「午前中仕事したのか?」
「園芸は年中無休なんです。水やりと、どこか具合の悪いところはないか見るだけですけど。」
「そうか。大変な仕事なのだな。」
『好きなことですから苦になりません。」
「えらいなあ。」
「でもね、実は今朝はちょっとしんどいなあ、もっとおふとんの中でごろごろしてたいなあって思いました。ブランに早くしろって言われて起きたんですよ。えへへ」
「ははは。それが普通だよ。」
「昨日の午後は友達とおしゃべりして、笑って、とっても楽しかったです。3人の友達と会ったんですけど、学校のクラスメートで、そのうちのひとりの結婚式が近くあるんです。平民の結婚式ですから気楽なんですけどね、でもみんな何着ていこうとかおしゃべりの種がつきなくて。あとの2人は婚約者がいるからその人と出席するんですけど、私は兄と一緒に行くんです。兄はハンサムだからきっとまたモテモテで私に文句言うと思います。」
「兄上はモテて喜ばないのか?」
「もう相思相愛の人がいますから、モテてもわずらわしいだけだって言ってます。」
「なるほどな。」
「レベッカはどんな格好をしていくんだ?」
「私は、まだはっきり決めてないんですけど、たぶん薄紫のドレスにしようかなって思ってます。紫、好きな色なんです。」
「そうか、似合うだろうな。」
「美人だったらいいんですけどねえ。」
「美人じゃないか。」
「あははは、ティモシー様、それはお世辞すぎです。」
「そんなことはないぞ。」
「ティモシー様は優しいですねえ。ありがとうございます。まあね、どこかの言葉で『美人は3日見たら飽きるがブサイクは3日で慣れる』っていうのがあるんですって。私は3日で慣れるから、長持ちします。あははは」
「なんてことを。君はほんとに自覚がないのだなあ。」
そこにデニスがやってきた。きょうはデニスもレベッカと共に剪定をする。
「ティモシー様、おはようござっす。」
「おはよう。」
「レベッカなーに笑ってんだ?」
「いまね、どこかの言葉で『美人は3日見たら飽きるがブサイクは3日で慣れる』っていうのがあるけど、私は3日で慣れるから、長持ちするんだって話をしてたんです。」
「おめえ、レベッカは3日で飽きられないように気をつけろよ。慣れるのはうちのかーちゃんだな。」
「あー、言いつけよう。」
「こら、言うなよ。わかったな。」
「デニスさん、焦ってるー。」
レベッカはケラケラ笑っている。
「お前、結婚式はいつだっけ?」
「えっと、来週の土曜日の夜です。その日はちょっとだけ早退させてください。」
「ああ、構わねえよ。レベッカ、お前また兄さんと行くのか?」
「兄はいやいやなんですよ。恋人がやきもち妬くからって。やきもち妬く必要ないんですけどね。兄はもう、べた惚れですから。ふふふ」
「いいねえ、若いもんは。」
「ねー。」
「ねーじゃねえよ。レベッカだって若いんだぞ。」
「そうですねえ。」
「なんか他人事だなあ。」
「今度のカップルはね、クラスメート同士なんです。だから私両方知ってるんです。とってもいい感じのカップル。」
「おお、うちもそうだぞ。学生からかーちゃん狙ってて卒業してから他のやつに盗られたらいかんと思って結婚したんだ。」
「あらー、素敵!」
「おれだって若い頃はな。」
ふふふ、レベッカは楽しそうに笑っている。
「ティモシー様、デニスさんのところはとっても素敵なご夫婦なんですよ。あんなご夫婦になりたいな、って思うような。ね、デニスさん。」
「よせやい。どこにも転がってる夫婦だろ。」
「そうだな。わかる気がする。親方はいい旦那だろうな。」
「へっへ、ティモシー様にそんなこと言われると照れますぜ。」
「そのうち奥方をどう攻略したか、指導をお願いしたいものだ。」
「とんでもねえっすよ。うちみたいなのは、ただのくっつきあいでさあ。もう、押しの一手でね。」
「あーそれ奥様から聞きました。デニスさんはすっごくしつこく付きまとったって。断るのがめんどくさくなったから結婚したとか。」
「まあな。おりゃあそれを狙ったのさ。」
「なるほどな。」
「ま、ティモシー様もがんばっておくんなせえ。応援してますぜ。相手がニブいと手こずりますけどな。」
「・・・ッ そ、そうか。」
デニスがにやりと笑った。
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