祝福
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明日が最終話となります。
翌日、クロフォード家にホートン家から使いがあった。
婚約の件を王に伝えなければならないので、相談したい、ということで、クロフォード卿とティモシーはホートン家に向かった。
今日はバーナードは父の代理で魔導師団に出仕している。
2人がホートン家に着くと、レベッカが花のような笑顔で出迎えた。
痣が・・・ない。
「レベッカ、痣が、すっかりなくなっているが。」
「はい、実はゆうべ精霊王様が治してくださいました。」
「そ、そうか。」
「そのことで、父がお話したいと言っています。」
クロフォード卿とティモシーはサロンに案内され、そこにはホートン卿とオードリーが待っていた。
まず、陛下と神殿への報告。
それにはいくつか書類の提出が必要で、書類は今日、バーナードが手に入れてくるということだ。
もうひとつ、しなければならないことがある。
それは精霊王への挨拶だ。
精霊王はすでにゆうべ、レベッカにあって報告を受けている。喜んでくれたそうだ。そしてレベッカは夫となるティモシーにも会って話をしたいと言われたそうだ。
「レベッカ、精霊王様にはどうやって会いにいけばいいんだ?」
「呼びかけるといらっしゃいます。」
「そうか・・・なんだか緊張するな。」
「大丈夫。とっても優しいお方です。私はいつもお会いすると心が満たされて、とっても幸せな気分になります。ゆうべ、ティモシー様のことを話したら、とても喜んでくださいました。ティモシー様の心はとてもきれいだって仰って、そういう方と共に暮せばお互い幸せになるだろうと仰ってました。私もそれを聞いてとっても嬉しかったです。」
ホートン卿が、
「それではまず2人で精霊王様とお会いして、お話させていただくと良いな。ティモシー君、ひとつ訊いてもらいたいことがあるのだが、よいか?」
「はい。」
「実は、ティモシー君はもう気付いているだろうか、キャロルは類まれな美貌を持っている。そして類まれな清らかな心を持っていて、精霊たちがいつも助けてくれている。儂はそれが怖いのだ。キャロルの存在は王家やその他たくさんの善悪両方の人間が熱望するだろうと思う。金儲けや悪事に利用されるかもしれんし、逆に祀り上げられて籠の鳥になってしまうかもしれん。それが怖くて常に変装させてきたし、社交には出さず、貴族の学校にもやらなかった。キャロルを守るには一生そのようにするしかないのか、それとも普通にしていても精霊たちから守ってもらえるのか、それを訊いてもらいたい。」
悲痛な表情でティモシーにそう言った。オードリーはキャロルをそばに引き寄せて肩を抱いている。
ティモシーは、しばらくの間黙って考えていた。
「確かに・・・そうですね。レベッカには、普通に幸せに暮らしてほしいと思います。ですから私は今、レベッカと呼んでいるのですが、果たして、どのようにするのが一番良いのか、伺ってみます。」
レベッカは小声で
「私、そんなに美人じゃないし、そんなにいい人でもないと思うんですけど。」
と言ったが、その場の皆にそれは却下された。
ティモシーが、
「では、レベッカ、精霊王様にお目通りを願ってくれるか?どこに行けばいい?」
と訊くと、レベッカは
「では私の部屋に。」
とティモシーの手を取って自分の部屋に行った。
部屋に入ると、
「ティモシー様、お呼びしてもいいですか?」
「うん。頼む。」
「では・・・・・・」
レベッカが目を閉じてしばらく念ずるような仕草をしていたと思うと、あたりがとても明るく輝き、大きく美しい男とも女ともつかない方が姿を現した。
レベッカがとても嬉しそうにニコニコしながら、
「精霊王様、こんにちは。お越し下さりありがとうございます。ご紹介いたします。こちらが昨夜お話したティモシー様です。」
精霊王はにっこり微笑み、
「ティモシー、キャロルの夫となるのだな。ゆうべキャロルから君のことをいろいろ聞いたよ。ブランからも聞いている。君のような清く正しい心の持ち主と出会えて、安心だ。これからキャロルと共に生きていくことになるが、どうかキャロルを守り、慈しみ、愛し、共に幸せになってくれ。」
「身に余るお言葉、ありがとうございます。私はキャロルをとても愛しております。これから一生命に代えてもキャロルを守ります。そのことでひとつご教示いただけますか?」
「もちろんだ。そんなに固くなることはないよ。君に私以外の精霊王を紹介しよう。キャロルは癒しに力を尽くすための祝福を授けた。だから木や花や美味しい食べ物など、人々を癒す物を作り出す能力に優れている。そしてその精霊王は私だ。ティモシー、君はいつだったかキャロルに戦わなくても幸せになるような方法を模索している、というようなことを言っただろう?私はそれを信じる。そして君には守り、理解し合う力の精霊王の祝福を受けてもらおうと思う。そして、夫婦で平和で心地よい世界を作ってくれ。いますぐなら君はその祝福を拒否できるが、どうだ?祝福を受けるか?」
ティモシーは迷わず、そしてレベッカを見ながら、
「ありがとうございます。ぜひ祝福をお授けください。そしてキャロルを支え、協力して幸せな世界を作るよう精一杯の努力を致します。」
と言い、レベッカはそれをとても嬉しそうに聞いていた。
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、あたりがまた光に包まれ、仁智の精霊王が現れた。
「ティモシーだな。これから君に私から祝福を授けよう。」
ティモシーの体が光で包まれた。
「これからは君は人々を守り、理解し合えるように尽力してくれ。心のなかで私に呼びかけてくれればいつでも話はできる。また、精霊が君を助けるだろう。なにか訊きたいことはあるか?」
「人々を守り理解し合えるようにする方法は、私が自ら考えるわけですか、それとも、精霊王様のご指示に従うのでしょうか?」
「君にわかりにくいかもしれないが、これから私は君を導いていく。何か岐路に立った時など、心を澄まして私の声を聞いてくれ。いつだったか、キャロルに、焦らずまずは傷を治してから決めても良いと思うと助言したが、そういうことだ。落ち着いて、導かれた道を見つけよ。」
「畏まりました。」
「それからティモシーよ、君のその顔の傷はどうしたいか?治したいなら治せるが。」
「レベッカさえよければ、そのままでいたいと思います。この傷のおかげで自分の進むべき道が見えました。また、この傷のおかげでレベッカとも出会えました。ですから、この傷は大事にしたいと思います。」
レベッカはにっこり笑って頷いた。
「私は傷があってもなくてもティモシー様のお顔なら大好きです。」
「ではそのままにしよう。治したくなったら言ってくれ。」
「ありがとうございます。ところで、ひとつ伺ってもよろしいでしょうか?」
「何でも訊きなさい。」
「レベッカのお父上が、レベッカの美貌と精霊王の加護のことを知られると、悪用したり、閉じ込めたりしようとされるのではないかと危惧されていて、いままでレベッカは変装していたり、あまり外を歩かなかったりしてきたそうですが、今後もそのような必要があるか、または、自然にしていても問題ないか、いかがお考えでしょうか。」
「たしかにキャロルは本人はあまり自覚していないが、身も心も非常に美しい。汚い者はそれを悪用しようとするかもしれん。だが、ティモシー、君は守りの加護を受けた。君はキャロルを守ることができるぞ。キャロル、君はもうキャロルに戻ってもよいぞ。レベッカのままでもよいがな。ティモシーを信じて、ティモシーの助言に耳を傾けて、これからどうしていくかを決めるが良い。」
レベッカは少し考えて
「はい。ティモシー様を信じて、大事なことは一緒に考えていただこうと思います。名前は、慣れちゃったからうちの家族はキャロルと呼びますが、ティモシー様にはレベッカと呼んでいただきたいと思います。あ、ベッキーがいいかも。ティモシー様だけの呼び名がいいな。いかがです?ティモシー様?」
「ああ、ベッキーだな。よし、そう呼ぼう。」
「はははは、キャロルはいつもお茶目で愛らしいな。」
精霊王が愛おしそうに笑っている。
「さて、それでは我々はきょうはこれで帰る。何かあったら呼べ。会えて楽しかったぞ。」
「「ありがとうございました。」」
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