大好き
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「私ね、きのうティモシー様たちがお酒飲んでらした時、母とおしゃべりしたんです。母が父のことが大好きだって言うので、大好きってどんな感じ?って訊いたんです。そうしたら、結婚する前に、お父様に会いたいなって思ってて、会うと嬉しくて、お父様が帰る時悲しかったって言ってたんです。私、いままでそんなふうに思った人っていませんでした。でも、ティモシー様にはお会いしたいなって思うし、お会いできないと寂しいなって思うので、私、ティモシー様のこと大好きなんだなって思いました。」
「・・・ッ」
「ティモシー様?」
「君は、なぜそんなにまっすぐなんだ。こんなに可愛くて、惚れない男がいるのだろうか。レベッカ、頼みたいことがあるのだが、聞いてくれるか?」
「はい」
「俺は君が貴族が嫌いなのはよくわかったつもりだ。たしかに俺も嫌いだ。だが、俺は貴族だ。そんな俺だが、君の夫として一生君を守ることを許してはもらえないだろうか。」
「・・・・・・」
レベッカは少し考えている。
「あの、ティモシー様」
「ティモシー様は私のことがお好きですか?」
「すまない。なんということだ。肝心なことを言うのを忘れていた。レベッカ、’俺は君が好きだ。大好きだ。ずっと一緒にいたい。どうか、一緒にいさせてくれ。」
レベッカはそれを聞いて花が咲いたような笑顔を見せて、
「あの・・・ティモシー様は私と一緒に暮らしたら幸せになるとお思いですか?」
「ああ、全力で君を幸せにする。」
「ティモシー様ご自身は?」
「もちろん君と一緒にいられれば幸せだ。」
「じゃあ私、ティモシー様のおそばに置いていただきたいです。」
「本当か!ありがとう!ああ、夢のようだ。夢ではないよな?」
「ふふふ、私、とっても幸せです。大好きなティモシー様のおそばにいられるなんて。」
「レベッカ」
「はい?」
レベッカはきらきらした目でティモシーを見返した。
「抱きしめてよいか?」
「・・・はい」レベッカの顔は真っ赤である。
ティモシーはレベッカをそおっと抱きしめた。なんだか強く抱きしめると壊れてしまいそうに感じるからだ。
しばらくして、レベッカは深呼吸?をした。
「ティモシー様の匂いがする。いい匂い。ティモシー様の体って大きくて硬くてとっても頼りになる感じがします。」
「レベッカ、そういうことを言わないでくれ。もっともっとと思ってしまう。」
「あら、私だって、ずうっと抱いていていただきたいです。」
「やめてくれ、降参だ。」
「なにが?私が勝ったの?」
「ああ、レベッカの勝ちだ。俺の完敗だ。レベッカ、愛してる。」
「私もティモシー様を愛してます。大好き。」
しばらくそのままでいたが、ジェフリーがドアをノックした。
「失礼致します。お父上様がそろそろお帰りになると仰っていますが。」
「ああ、少し待ってくれと伝えてもらえるだろうか?」
「畏まりました。」
ジェフリーが行ってから、
「レベッカ、婚約したことを話そうと思うが、良いか?」
「はい、もちろんです。嬉しいことですもの、早く言いたいです。ふふふ」
レベッカの屈託のない笑顔がまぶしい。
ふたりでホートン卿とクロフォード卿のいるサロンに行った。
「おお、来てくれたのか。」
「はい、少々お話したいことがありまして。」
ティモシーがそう言うと、クロフォード卿が
「なんだ?」と訊く。
「いままでレベッカと話をしておりましたが、私達は婚約致しましたことをご報告させていただきます。」
「「な、なに?」」
両家の父は驚いて立ち上がり、やがて嬉しそうに相好を崩して
クロフォード卿が
「いやー、そうかそうか。息子よ、よくやった!」
と言えば、
「キャロル、そうなのか。幸せか?」
と訊く。
「はい、お父様、私はとても幸せです。」
と言うと、ホートン卿は
「そうか、よかったよかった。・・・そうだ、おおい、ジェフリー、オードリーを呼んでくれ。」
そう言いながら、目に涙を浮かべている。
母は来るなり察したようで、ホートン卿から聞くと
「まあ、キャロルちゃん、よかったわ、おめでとう。嬉しいわ。」
と言ってレベッカを抱きしめた。
母が
「バーニーたちにも言わなきゃね。」
と言い、ジェフリーが去ると間もなくバタバタと足音がして
「何事ですか、母上。」
と部屋に入ってきた。
ホートン卿が
「キャロルがティモシー殿と婚約したんだ。」
と、少し寂しそうに言うと、バーナードは
「おお、そうか、おめでとう。でも、ティモシー殿、こんなはねっかえりで良いんですか?振り回されますよ。」
と、すこし意地悪く言った。
「振り回されたいです。レベッカが良い返事をしてくれて、まだ夢のようです。」
ティモシーはそう言った。
「キャロルちゃん、おめでとう。よかったね。」
アーロンも祝福してくれている。
その夜はクロフォード家の父と息子はさらに帰宅が遅くなった。
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