36:剣聖の伝承とリアルハード
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みなさんのお陰でここまで来ることができました。本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
ついに知れ渡るリアルハードモードクリア者の名前。そして判明する驚愕の真実(アールは知っている)
「まさかあの発表は冗談とかじゃなかったのかい!?」
「俺も最初はそう思ったさ。けど実際に見て経験してな。俺の結構本気の一撃を片手で受け止められた挙句『恋爪レオ』を食らったんだ。信じるしかねぇさ」
「れ・・・恋爪レオ!?」
どよめきが走る。リアルハードモードクリアというのはそれだけありえない出来事ってことだ。俺もよくやろうと思ったと今でもたまに思う。半分以上はまたやろうって気持ちが強いけど。
「私とメス猫が証人よ」
「なんならアールの戦闘録画あるけどみる?」
「ぜ・・ぜひ頼むよ!!」
録画ってお前いつの間に。ガンテツさんたちNPC含めプレイヤー達はレイレイの頭上に映し出された動画に集る。それはマー坊との戦闘、恨血の木との戦闘。頼まれて海岸でやってみせた鏡雀の実演。
どれも中々に良い画質で取れている。今度ゆっくり見せてもらおうか。技の研究にはちょうど良さそうだ。
「ははは・・・これはもう信じるしかないね。アール君。君はすごいな」
「化物って言わないで最初から素直にそう言ってくれた奴はあんたが初めてだ。ルシオン・・・だっけか?」
「そういえば自己紹介してなかったね。僕はルシオン。クラン『天界調査団』でマスターをやっているんだ。そしてこっちの首が落ちてる彼女が『戦国華激団』のサブマスターチーザー紫さん。君の噂を聞いて興味が湧いてここまで来たんだ」
「俺はアールだ。今リークが言ったとおり『剣聖』で通してる。こっちではそれで通すつもりなんでよろしく頼む」
くっつきかけている右手で握手に応じるとルシオンは嬉しそうに笑顔を浮かべた。その瞳の奥には隠せていない対抗心が浮き彫りになっていた。
「アール。まだ繋がりきっていないから力入れないで」
「すまん。ただこういう男の握手には応じたいだろ?」
「こんな状況で握手を求めるこの男はゲスだと思う」
「あはは・・・・ごめんね?」
「ルシオン。アンタさ?対抗心隠すならもっと上手く隠しなよ?バレバレだよ?」
「いやいや、さすがは暗殺者だね。バレちゃったか。うん。僕は彼に対抗心を燃やしているよ」
指摘されたルシオンは隠すことなく素直にそれを告げた。案外正直者なんだろうか?
「素直に認めるのな?」
「本当の事だからね。隠して関係を悪くするよりも素直に打ち明けて関係を作っていくほうが僕の今後の為になると思ってね」
「自分に素直なやつだなアンタ」
「僕のような人間は嫌いかな?」
「いや?結構好きなタイプの奴だよ」
「それは良かった。ここで紫さんのように悪印象だと大変そうだからね」
そう言って指さした先にはギルファーに頭をお手玉に、体は座布団がわりにされているチーザー紫がいた。表情は落とされた時から変わってないが意識はしっかりあるため、きっと動けるなら騒ぎ立てていることだろう。さっきのやり取りでなんとなくわかる。
「おい小僧」
「小僧じゃなくてアールって呼んで欲しいんですけど・・・ダメっすか?ガンテツさん」
黙っていたガンテツさんが口を開いた。ずっと目の前でどっしり座っていて途中から話さなくなったのでちょっと気味が悪かった。
「言っただろう。俺が認めるのは俺が見て認めた奴だけだ。昔話の英雄だろうと関係ない。お前は少なくとも俺からすれば小僧で十分だ」
「お厳しい評価ですね」
自分で見たことしか信用しないのは結構正しい。結局人から聞いた評価なんて参考にならない。最後に決めるのは自分の判断だ。
「ガンテツさんがボンクラ呼びしないのは十分認めてくれてる証拠だから大丈夫だよ?」
「こら嬢ちゃん!!余計なこと言うんじゃねぇ!!」
リークの言葉に顔をほんのり赤くする大男ガンテツ。需要が無さ過ぎる。けどそういえば確かにボンクラ呼ばわりされなくなってる。最初なんてボンクラとしか言われなかったのに。
「あ、そうだガンテツさん。俺アンタに謝んないといけないことがあった」
「・・・・刀のことか?」
そう。俺はガンテツさんから借りた自慢であろう愛刀を根元からぼっきりと折っている。謝罪と弁償はしっかりしないといけない。
「あなたから貸してもらった刀を俺は折ってしまった。すみませんでした」
「謝罪はいらん。その代わり小僧、俺の目を見て正直に答えろ」
「なんですか?」
「ハッキリ言え、俺の刀をどう思った?」
「・・・・・・いい刀でした。でもまだ足りない。そう思う刀でした」
「ちょっ!?アール!?流石にそれは私も弁解できないよっ!?」
ここにいる全員が同じことを思ったんだろう。首をブンブン振るやつ、怒り狂うと考えておびえている奴。ゴミを見るような目で俺を見る奴様々だ。
けど俺は正直に答えろと言われた。だから答えただけだ。ここで世辞を言うのは簡単だがそれは彼を侮辱していることだと俺は思う。
「・・・・・・・・ふ・・・・・」
「「「「「・・・・・・・・」」」」」
「フワハハハハ!!!そうかそうか!!!あの刀をお前はそう評価してくれるか!!」
それはもうこれ以上ない大笑いだった。激怒すると身構えていたギルド職員の男性もあっけに取られて固まっている。
「あの刀は少なくとも俺が生み出した最高の一品だ!!けどそれに満足する奴はいても不満に思う奴なんざ今までいなかった!!!」
「・・・だから貴方の刀はそこで止まった」
「おうよ!俺は満足しちまった!今の現状でな!だがそれでは足りんという奴がここに出た!!嬉しいじゃねぇか!!それがあの伝説の天匠流五代目継承者の生まれ変わりだとしたら尚更な!!」
五代目天匠流継承者、つまり『剣聖物語』の主人公の最終経歴。つまり俺のことを知っている?
「やっぱりガンテツさん。もしかして天匠流と何か関わりがある人物を知っている?」
ガンテツさんは大きく頷き、腕を組んで口を開いた。
「ちと長くなる。聞いてくれ。俺は俺の師匠からずっと続く昔話を聞いてきた。なんでも俺の六代前の鍛冶師は至高の刀をある一人の剣士のために作ったらしい。その刀は決して刃こぼれせず、折れることなく、錆びることのない鍛冶師としての至高の一本だ」
「けどその剣士はあろう事かその刀をひと振りで折っちまったそうだ!折れないと自慢して作った我が子同然の刀をな!その剣士はその折れた刀を持ってきてその鍛冶師に言ったそうだ『あなたの刀を折ってしまった。すまない』だとよ?それ聞いてその鍛冶師はその剣士専属の鍛冶師になった。至高の一本を折られたにも拘わらずだ。塞ぎ込むこともせず、怒ることもなく、その男に合う刀を打つことにその生涯を捧ぐと決めたらしい」
「鍛冶師の中に生まれたのはさらなる挑戦だったそうだ。その剣士が全力を持って振るう刀が絶対に折れず、愛刀と言われるくらいに愛される刀を作るための挑戦。だが結局その鍛冶師ではその願いを叶えることはできなかった。鍛冶師はある戦いでその剣士を守るために死んじまったらしい。けどその時に剣士に渡した最後の刀は、鍛冶師の目の前で剣士を苦しめていた敵を打倒し美しい刃を保っていたって話だ。結局その後、刀は折れたらしいが、その瞬間まで剣士はその剣を愛用し続けた。そして死んだ鍛冶師の思い描いた究極の剣への情熱はその弟子へと代々引き継がれてきた」
「それをだ。彼らの意思を!受け継いできたその結晶を俺はあろう事か捨てかけちまった。素晴らしい武器だと言ってくれる奴はいても結局その結果を見せてくれる剣士はもういない。ならこれ以上その過去にしがみつくこたァねェと思った。思ってたんだ。」
「だがよ?その素晴らしい武器の最高傑作を折られた上にこれ以上の物を見たことがあるという剣士が現れた。それも死んだ鍛冶師が最後の最後までその命をかけてでも守り、その情熱を向けた剣士の生まれ変わりにだ!!」
「これで燃えない鍛冶師はいねぇ!少なくとも俺は今!!俺が捨てた情熱がどれだけスゲェものか俺は正しく思い知った!!だから小僧!!俺からお前に頼む!!これから俺が作っていく至高の作品をお前に使って欲しい!!歴代が夢見て憧れてきたお前が使い続けられる究極すら生ぬるい一本を俺はつくる!!この頼み!!引き受けてくれねぇか!!」
そうか。この人はあの『剣聖物語』で死んでしまった鍛冶師の遺志を継いでる鍛冶師だったのか。あの時の小さな弟子の意志はしっかりとここまで繋がっていた。
『エクストラシナリオ:『再燃する鍛冶師と伝わる願い』を開始しますか?』
気を抜けば泣いてしまいそうになりながら、言葉を紡ぐ。ガンテツさんが彼らの意志を継いでくれるなら、悲願を達成してくれるならこれほど嬉しく思うことはない。
「ガンテツさん。その依頼是非受けさせて欲しい。あなたが思い描くモノを、彼らの紡がれてきた情熱の結晶を、俺は見たいんだ」
「そう言ってくれると思ったぜ小僧!!先代の悲願は俺が作り出す!!」
『エクストラシナリオ:『再燃する鍛冶師と伝わる願い』を開始します。』
こうして、第二のエクストラクエストが開始された。プラクロで剣聖物語の続きの話をこんな形で味わえるとは思ってもみなかった。
ヤバイ泣きそう・・・
久しぶりのエクストラクエスト開始。これも剣聖ロールがなせる技、業物の刀の入手フラグ確立しました。
条件
①:自分のレベル以上の装備を身につけた状態でガンテツに話しかける
②:自分のレベル以上の敵とガンテツの前で戦闘し、勝利、もしくは引き分けとなる。
③:②達成後『天匠流』という単語を使って会話をする。
④:ガンテツの制作した武器を壊し、さらに上を求める。
⑤:エクストラモードでプレイしている。




