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28:生き様

効率が悪い、金にならないと無下にする彼らに対して主人公アールの思いとは?

効率、それはどんなゲームにおいても切り離すことはできない重要なものだ。

例えば、経験値100を入手できる雑魚モンスターと経験値150を入手出来るモンスターがいるとすればどちらを取るかと言われれば、間違いなく後者だ。



前者は10体倒せば1000に対し、後者だと1500も入手できるため500の差が生まれる。この差はゲームをやり込めばやり込むほど顕著に現れてくる。



前者のみを倒していたプレイヤーと後者のみを倒していたプレイヤーの差など比べるまでもない。さらに二体のモンスターの強さと戦い方が100よりも150の方が強い場合。150のモンスターを倒していたプレイヤーの方がプレイヤースキルも磨かれていくのでステータス以外の差も大きくなる。



また、倒しやすいが経験値50のモンスターと倒しにくいが経験値500のモンスターどちらを倒すかと言われると当然倒しづらいが経験値が10倍の500のモンスターを倒すのは至極当然とも言える。



今回で言えば効率の悪いモンスターがゴブリンだ。数が多いくせに素材は劣悪、ドロップする武器も粗悪品。経験値も多くない。さらに言えば種類が多くそれによっては倒すのがめんどくさい奴もいる。



それを倒すなら海岸でヤドカリ倒すか、森で狼かスライム倒している方が明らかに効率はいい。正直RPGではなく育成ゲーム等だったら俺だって効率のいいやり方をする。あえて効率の悪い方法でやる理由はないし、やるとしても縛りプレイや特定のアイテム入手のためにやるのが関の山だ。



そう、あくまでそれはRPG以外での話だ。このゲーム。『プラネットクロニクル』はRPG。ロールプレイングゲーム。プレイヤーが役割ロールを持ちその世界を生きるプレイ物語ゲームだ。



そしてこの世界プラネットアークに限らず、ほか様々なゲームの世界においてNPCを始めとする人類、知的生命体含め全ての存在は生きている。彼らが困っているならばそれは彼らにとっては危機的状況にほかならない。



この効率厨になったつもりの馬鹿どもはそれを全く理解していない。効率が悪い?誰でも倒せる?馬鹿か。それはあくまでプレイヤーに限った話だ。これを現実に置き換えれば離れたところに包丁を持って襲いかかろうとする凶悪犯がいて、それをすぐ近くにいて、凶悪犯を簡単に倒せる人に助けを求めていることと同じなんだ。



それを理解せず、ただゲームだから、イベントも何もない出来事だから無視、もしくはスルーということは助けを求める一般人を見殺しにすることと同じことだ。



それは傭兵連中にも同じ事が言える。だが、彼らは生きるためにそれを行う。彼らも必死に食いつなぐために、明日の糧を得るために例え悪と言われてもそれを行い続けるだろう。



けど目の前の中年どもは違う。酒を飲む金がある。酒に酔う余裕もある。その上で金を巻き上げて自分たちが贅沢をしようとしている。もしこれで街が滅びたり、壊滅したら彼らはきっとそこから金品のみを拾い上げてほかの場所へと拠点を変えるだろう。



それはもはや盗賊と何ら変わり無い。そんな彼らに便乗している時点でプレイヤーだの時代人だの効率だの色々言ってる奴らは皆盗賊と何ら変わり無い。



プレイヤー相手に戦いを挑むプレイヤーキラー共の方が全然マシだ。

あくまで持論だが、彼らはPKで得る成果ではなくその過程と結果を楽しんでいると思っている。もちろん成果も大いに楽しんでいるだろう。でも彼らには彼らなりの矜持がある。あって欲しい。あくまで願望だ。



けど初心者狩りだけは絶対に許さん。見つけたら即斬る。むしろ地獄の底まで追い詰めて土下座させるまで斬る。



話が逸れた。

別に効率を求めることは悪いことじゃない。何度も繰り返して攻略法を見つけ出し、考えられない攻略法・効率を見つけ出して実践する。何度も失敗と成功を繰り返してこそ結果がしっかりと出る。



それを楽しむこともゲームでは重要で楽しいと思える要素なのだから。けど、そればかりを優先して助けを求めている誰かを助けない理由にしてはいけない。



少なくとも、俺が知っている真の効率厨たちはその辺はきっちりと区別をつけていた。今目の前で起こっていることは彼らに対する冒涜だ。



そして同時に、全ての時代人プレイヤーを貶してしまう悲しい行為であることを誰ひとりとして理解していない。



「なぁお兄さん」



「っ!・・・あぁリア充爆発の人ですか・・・・・」



目に見えて落ち込み気を落としている男性職員に声をかける。ってか覚え方それかよ。まぁそれは今はいいや。どうでも。



「露骨に落ち込むなって、ゴブリン討伐してくるからよ」



「はいはい・・・どうせ受けるなんて・・・・えぇ!?受けてくれるんですか!?」



大きな声に視線が集まった。皆がこちらを見ている。そんな変わり者を見るような目で見てくる奴もいれば、驚いている奴もいる。俺としては今の今までこうして名乗りを上げる奴がいなかった事に驚きを隠せないんだが?




「もちろん受けるさ。報酬は金じゃなくてギルド発行してる一日一回限定の食堂フリーパスで頼む。食い物に困りたくないからよ」



「えぇ!?そんなんでいいんですか!?」



お互いの立場のためにはこういう報酬に関することはしっかりしておくべきだ。親切にしすぎて自分の手足のようにこき使われるのはゴメン被る。でも今回に限り、実は報酬は特に欲しいとは思っちゃいない。



「いいって、俺がそれで納得してるんだ。それでどうなんだ?いいのかダメなのか?」



「は・・・はい!!お願いします爆発の人!!」



「呼び方変えろよ・・・んじゃ行ってくるわ」



手を握り嬉しそうに振る男性、わかったからとりあえず落ち着けって。アイテムに余裕はなかったから少し買っていこうか。毒消し草と回復のブドウがあればなんとかなるだろう。価格も手頃だし。



「ついでにアイテムも売ってくれ。ブドウ10個と毒消し10個頼めるか?これお代」



「はい!!待っていてください爆発の人!!ギルドの一番いいやつを持ってきますから!!」



嬉しそうにバックヤードへ向かう職員。渡した金額足りただろうか?ブドウ一個200Dで毒消しが100Dだったはずだから一応4000D渡したし足りるとは思うけど。



「おいおい兄ちゃん、悪いことは言わねえからやめとけや」



戻ってくるのを待っていると、さっきまでガンテツさんと殴りあいそうだった中年の男性が手を肩に置いてそう言ってくる。っていうか酒くっさっ!どんだけ飲んでたんだこの親父。それ以上に酒の匂いまでここまで再現するのか。すごいなプラクロ。



「物語の英雄希望かなんか知らねぇがやったところでお前にはなんの得はねぇ。それだったら高い報酬出させてでもこんな面倒な依頼を受けてやるのが頭のいい奴のすることだ」



そこにいたプレイヤーも含めて同じ考えの連中が遠巻きにそうだと訴えてくる。くだらない。そんなもんなるつもりもないしお前らみたいに盗賊まがいに堕ちる気もねーよどアホ。



傭兵というのはなにより信頼が大事であると俺は思っている。信頼があればどんな依頼だろうと紹介してもらえるし信頼価格で商品を値引きしてもらえる可能性だってある。逆に信頼がなければ適当な依頼しか紹介してもらえないし値引きもない。



その信頼を蔑ろにする連中の言葉なんて戯言でしかないので聞く価値を感じない。



「俺は俺がしたいようにする。あんたら盗賊紛いの連中になにか言われる筋合いはねーよ」



「おい待てって?盗賊呼ばわりしたのはとりあえず置いておいてやるけどよ?おじさんがせーっかく優しく上手な世渡りを教えてやってるの気づかないのかお兄ちゃん?」



「お前のそれは世渡りじゃねぇ、人の弱みにつけこむ詐欺って言うんだよ。良かったな?そのない頭に新しい知識が加わったぞ?」



無言のまま男の力が強くなり始めた。生意気言って、しかも自分たちの金の邪魔になる俺を黙らせよってか?こんなただの力任せで?



「おいクソガキ。調子にのるイヂデデデ!!?!?!」



「わかったら離れろ中年オヤジ。酒臭いんだよ」



桜華戦流の基礎中の基礎。掴まれたり捕らえられた場合の抜け技術でその手から抜ける。かなり痛いように握り返した男の手首はなかなかごつい。これなら半分位になっても支障はないし問題ないだろ。このまま握り絞ってやらん勢いで締め上げると男は悲鳴を上げてその場に崩れ落ちる。



「動くな取り巻きども、その壊れた武器で何するつもりだ?」



「「「っ!?」」」



こうした時に仲間が武器を構えて襲いかかってくるのはもはやお約束。だから先にちょいと武器を斬っておけばこいつらはステゴロしか仕掛けてこれなくなる。まぁ余程の馬鹿じゃなければ武器を壊した相手に向かってくるなんてことしないだろうさ。



ちなみにいつ斬ったかと言うと男性職員のもとへ歩いて行く時だ。丁度無防備に置いてあったのでちょいっと斬っておいた。綺麗な断面で斬った””モノ””は衝撃が加わらなければ斬られたことにすら気付かないんだぜ?



「『刑束リブラ』」



「カヒュっ・・・」



流石に中年の仲間たちは馬鹿じゃなかったようだ。手元で壊れる武器を見てこちらに対する敵意を失った。あるのは得体の知れない何かに怯えるオヤジ連中だけだ。このボス中年に『刑束リブラ』を叩き込み意識を消す。後で追いかけられては面倒だ。男は口をあんぐりと開けて膝から崩れ落ち焦点をぐらつかせた。



その光景がよほど珍しかったんだろう。NPCプレイヤーに限らず、全員がありえないものを見るようにこちらへと視線を向けていた。唯一そんな視線を向けていないのはネタを知っているリークとその身を持ってこの技を理解しているギルファーだけだ。



「あ・・・あのぉ・・・」



戻ってきた男性職員の手には頼んだアイテムが詰められた袋があった。そしてこの状況を見て唖然としながらもそれを渡してくれた。



「お、ありがとう。料金足りたか?」



「あ・・・はい、これお釣りです・・・あの・・・爆破人の方・・・?」



「時代人な?それだと俺が爆弾魔みたいだから、どうかしたのか?」



「いえ・・その・・・こんなことになってしまってから聞くのも申し訳ないんですけど・・・どうして受けてくれるんですか?確かにその方たちの言うとおりなんです。ゴブリンは言ってしまえば厄介な雑魚モンスター。誰も見向きもせず、倒しても大した成果は得られません。そのくせ中々に戦いにくいモンスターです」



「それは知ってるよ。その上で受けたんだ」



「でしたら何故です?私たちギルドも簡単には受けてもらえないと覚悟はしてた依頼だったのにこんなにもこちらに都合が良すぎる条件で受けてくれたんですか?」



「お前が言ってたろ?『助けてくれ』ってよ?」



「えっ!?」



「お前は声を上げて言ったろ?『助けてください』ってよ?なら助けるさ。それが俺のあり方で生き方だ。たとえ誰がどう言おうともこれだけは絶対に曲げない。だから助けるんだよ」



「そ・・・ぞんな理由でだずげでぐでるんでずがぁああああ!!!あ゛り゛が゛ど゛う゛ご゛ざ゛い゛ま゛ず゛ぅぅぅぅぅ!!!!爆人ォオオ!!!」



「あぁもう泣くな!!爆人てなんだ!?俺の名前はそんな自爆しそうな名前じゃないからな!?アールだアール!覚えろよ?な?」



「わがりまじだぁあああ!!!」



ったく、泣くんじゃないよ。男だろ。くっついてきた男性を剥がしながら近づいてきたリークへ言葉を向ける。



「そういう訳でリーク。お前どうする?」



「うん。やっぱりアールはどこにいてもアールなんだね。うん。アールが行くところは私の行くところだから行くよ」



「ありがとよ。ギルファーお前は強制だ」



『ゴブリンは不味いのだがな、仕方がない。我はお前のそういう所は嫌いではない』



渋々ながらもついてきてくれるギルファーと嬉しそうな表情でついて来てくれるリークに感謝しつつ、男性を剥がし出口に向かう。


「おいボンクラ!!」



ガンテツさんの声はこんな時でもよく聞こえる。静かだから余計だが。表情は・・・まぁ特に変わらない。若干目元が湿ってるがそれを指摘する気はない。



「おっさん。行ってくる。帰ってきたらまた剣打ち直してくれ」



「・・・・・それは帰ってこない奴のセリフだろうがバカ野郎っ!!さっさと行って帰ってこい!」



「はっ!!そんな常識知らんな!!俺はなにが何だろうと帰ってくるさ」



敵はゴブリン。数不明。いっちょ行きますか。





例えどんな時だろうと、その心の中に宿ったアールの信念は曲がらない。

魔剣聖ロールであろうとも剣聖ロールであろうとも、励久であろうとも。

その根幹にあるものは何も変わらないんです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「もちろん受けるさ。報酬は金じゃなくてギルド発行してる一日一回限定の食堂フリーパスで頼む。食い物に困りたくないからよ」 絶対にお金にした方がお金かからない酷い悪徳商法じゃないですかー!(ギル…
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