370:EX-Sシナリオ『その恩恵は他が為に、その力は主の為に』Ⅵ
ついに新しいEXジョブ獲得・・・
「なるほどなー、俺からは認識できなかっただけなのか」
無事に合流・・・というのは変かもだが、とりあえず合流した俺たち。俺は変わらずギルファーの背中に乗ったまま進み、その両隣をリークとルークが、後方は未だ融合状態の卯月と弥生が歩く。
ディアとバンデはいつものポジションでふにゃっとしている。癒しかな? 癒しだな。
何でもバンデのあのデカくなった姿は『刻録龍顕現』という能力発動時の姿らしく、その能力発動中だけあの姿になれるらしい。今はその能力を切っているらしく、いつもの可愛らしい姿だ。
あの大きさなら背中に乗って飛べそうだよな。今度頼んでみるか。
「どちらかというとアールがいる次元がズレていた。みたいな?」
「不思議体験しちまったな」
「何度か助けられなかったから私としてはもう味わいたくないなぁ」
聞けば聞くほど不思議な現象だったらしい。同じ空間に二つの存在が次元を変えて存在していたという事実。EXダンジョンとは言え超技術のオンパレードだよな。
「僕としては師匠がリーク姉ちゃんの変な状態の声を聞き分けられてたほうがびっくりしたんだけど?」
「愛だよ、ルーク。私に対する愛が強いからアールは私の声を聞き分けられたんだよ」
「・・・愛であの摩訶不思議な声を聞き分けられるものなの? 完全に地球語以外の言葉だったよ? 聞いてた限りは」
「愛は全てを解決するんだよ」
実は剣聖物語のアフター冒険中にやったアルバイトで同時に五人の注文聞いたり、複数人の指示を一斉に聞く聖徳太子みたいなことをしてたから二人同時くらい余裕なんだよ。
とかいう空気の読めないセリフを言うとリークが膨れそうなので黙っていることにしよう。かなり上機嫌でウキ✩ウキ✩ルン✩ルンしてるし。
それはそうとして多重人格・・・いや、詳しく考えるなら人格分離ってところだろうか? 本能と理性が分離して同時に思考し、同時に事を成す的な。
恐ろしいスキルを作ったもんだぜエクスゼウス運営陣。これ持つ奴が持つと一騎当千の活躍するパターンじゃないのか?
「でもアールだって二重思考してる時あるよね? 体がおかしな動きしてるのにかなり繊細な動きしてるとかさ? そう考えると今回のUtSってそこまででもなくない?」
「いきなり何の話かはリーク姉ちゃんのいつもの読眼術だとして、確かに師匠のこと持ち出されると量産型師匠を作る感じのスキルだしそこまで・・・いややっぱりおかしいのは師匠なんじゃないのかな?」
「アールってそれを自前でやってるし確かにすごいかもね」
『ふん。小僧も小娘のようやく気づいたのか』
『ヨヨーヨ』
「キュルァ!」
『クルォーン』
そう言う4匹は『自分たちは最初からそう思っていた』と言わんばかりにちょっと得意げに言っていた。バンデと卯月弥生はちょっとわからんが、ディアとギルファーはこっちで付き合い長いしそうかもしれんな。
そんな話をしながらボスフロアを越えた先の一本道を進んでいく中、ついに道の終わりが見えてきた。
「恩人さん達だべ!! 流石だべ!!」
「うんうん。それも全員揃ってここまでたどり着いたね。想像以上に強い絆を持っているみたいだ」
道の終わりにいたのはナナシ氏とゴンベ君。俺たちが全員無事に到着したことを喜んでくれているみたいだ。
「ねぇちょっと? ダンジョン挑ませるならもう少し説明あっても良かったんじゃないの?」
”不満あります!”と言うようにジト目で彼らを見るリーク。ゴンべ君は少し申し訳なさそうにしているが、ナナシ氏は笑顔を崩さすに言葉を返してくれた。
「そう言われても仕方ないね。けど、君たちはもう気づいているとは思うけど、ここは星の歴史を紡ぐ僕らにとっては重要な神殿だからね。資格の有無に関わらず困難には立ち向かってもらわないといけないのさ」
「むぅ・・・そう言われると反論しにくいんだけど・・・」
「しかし君たちは全員揃って心が折れることなくここにたどり着いたんだ。お互いがお互いを信じた結果だよ」
確かに今回のダンジョンは自分以外の誰かを信じないと攻略できない仕様だった。自分を守ってくれる相手を信じて託すことしか出来ない状況の中で、誰かを信じることの大切さって奴を試してくるダンジョンだった。
『星読み人』のダンジョンでは自分が持つ強さを。『星の錬金術師』のダンジョンでは初心に帰り戦うことの大切さを重要視していた。
そう考えると『EXジョブ』習得のためのダンジョンは、何かの課題があり、それを越える強さが試されるダンジョンなんだと改めて思った。
「それでは、時代人たちよ。君たちの絆の強さを見せて貰った。その強さ、その絆、僕らが紡いできた力を受け継ぐ資格ありと認めるよ」
いよいよか。三つ目、存在だけで言えば四つ目のEXジョブ。一体どんなジョブなんだろうか。その効果は? 気になることは多くあるが、それは全てこのあと分かることだ。
「じゃぁはいこれ」
「「「・・・はい?」」」
――――◇――――
・アイテム『重要品:星従主の証』を入手しました。
・アイテム『重要品:星従の証』を入手しました。
――――◇――――
「えっと・・・ナナシ氏? ジョブが貰えるんじゃないのか?」
渡されたのは星のマークが象られたエンブレム。翡翠色に美しく輝くそれは見ているだけで引き込まれそうになる。それはいいんだけど、そうじゃなくて。
「とても言いにくいんだけど、このダンジョンで渡せるのはそのエンブレムだけなんだよ。ごめんね?」
「リークステイ」
「アール放してぇ!! こいつ一発ぶん殴ってやらないと私の気が済まないわよぉ!!」
羽交い締めにして押さえつけたが、そうしなかればリークがナナシ氏に一発入れてただろう。すぐにギルファーから降りて正解だった。
「ほらぁ! だから言ったべ? 主さんちゃんと話さないと怒られるべってオラ言ったでねぇか」
「そうだったかな?」
うん。ちょっとイラっとした。
「ルーク、弁慶蹴るくらいなら許す」
「うん」
「オラ知らねぇべからな」
「アハハハ・・・おや?」
テクテクとナナシ氏に近寄るルーク。疑問符を浮かべて首をかしげたナナシ氏。
「Go」
「最初から言えよバァァカァァッ!!!」
俺の指示とルークの罵倒に続き、男のマジ悲鳴が洞窟の中を駆け巡ることになった。
――――◇――――
「んで? このエンブレムがあればいいんだな?」
「そうともさ。それがあれば僕らが持つ星の力『星従師』の力を宿すことができるんだ。正確に言えばそのエンブレムが資格保持の証さ。だからこの子に蹴りの構えを解かせてくれないかな?」
「ルーク、とりあえず待てだ」
「ラジャ」
「いいなぁ!! 私が蹴りたいのに!」
リークだと下手したら殺っちゃうからダメです。流石に殺したらまずい。ルークの弁慶キックでナナシを沈め、とりあえず詳しい話を聞いたわけだ。
この『星従主の証』というのは『EXジョブ:星従師』のジョブ習得資格があることを示すアイテムであり、『星従の証』というのは『星従師』の力を使うために必要なアイテムらしい。
因みにこの場所はナナシ氏が世界中に作った『星従師』の資格を確認するテストダンジョンらしく、挑戦だけなら誰でも出来るらしい。なので今回ルークも一緒に参加できたわけだ。
が、当然エキスパートモードのルークは『星従師』の資格などないので『星従主の証』はもらえない。代わりのアイテムを渡されている。それが『奇跡の星座花』。聞いたことがある名前だろう? 実はこれ以前手に入れた『奇跡の星花』の上位効果アイテムなんだ。
――――◇――――
・アイテム『奇跡の星座花』
効果:保持している時にHPが全損すると、HPを全回復する。発動後は『奇跡の星座種』となる。
・星空の力を宿す花。命が尽きそうな時、力が解放され所持者の命を救う。美しい星空の下で『奇跡の星座種』を空に掲げることで『奇跡の星座花』は再びその花を咲かせるだろう。
――――◇――――
擬似蘇生アイテムだ。それもちゃんと世話をすれば何度でも発動する便利なアイテム。言うならば再生可能な不死鳥の尾とでも言うべきアイテムだ。
しかしあくまでも全損した瞬間のみなので既に全損した人を助けることはできない。まぁ所持者が復活するだけでも十分なアイテムだろう。
そしてリークなのだが・・・
「納得いかない・・・」
「そう言われても君にはまだ『星従師』の条件を満たしていなかったんだ。こればっかりは諦めて欲しいよ」
なんと、『星従師』に必要な条件を満たしていないらしく、残念ながらルークと同じく『奇跡の星座花』を貰うことになったのだとか。
普通に考えれば超強いアイテムなのだが、俺と同様に、リークは『奇跡の星花』を複数所持している。素材さえわかればいくらでも複製可能なのだ。つまり今回もらったアイテムはリークにとっては不要・・・とまで言わないが、無くても問題ないアイテムだったのだ。さらに言えばリークは『星術師』持ちなので普通に蘇生魔術が使えるし。
「でも君にだって『星従の証』は上げただろ? それだってかなり大事なアイテムなんだよ?」
「ううう・・・そうだけど・・・」
なんと、俺が一緒にもらった『星従の証』、これは全員に渡されているのだ。なんでもこれがなければ『星従師』は力を発揮できないのだという。かなり準備が面倒なジョブのようだ。
「リーク、思う所はあるだろうけど話を進めるぞ。それでナナシ氏。『星従師』になるため、俺はこの先どうすればいい?」
重要なのはここだ。証は手に入れたが、ジョブを習得できなければ意味はない。
「うん。そこだよね。でもごめんね。それを教えることは僕にはできない。そういう約束なんだ」
言いたいことも思うところもある。けどそういう約束と言われたら無理やり聞くわけにも行かないよな。EXジョブを継ぐものとしては。
「かわりにひとつだけ。君はもう行くべき場所、会うべき人にもう出会っているはずだ。これは僕の勘だけどね」
「そっか。それだけ聞ければ十分だ。すぐに行ってみるよ。色々世話になったな」
「それは僕らの言葉さ。本当にありがとう時代人達。君ならばきっと僕たちが紡いできた全ての力を必ず継承するだろう。これも僕の勘だけどね」
「師匠?」
「アール?」
実は一つ心当たりがある。この『星従師』という名称。そして以前再会した彼らが言ったあの言葉。可能性はかなり高いはずだ。
こうして、俺たちはナナシ達と別れ、ある場所を目指すことにした。
・・・ならず!!
次回に持ち越しです。
毎度のことですが感想・評価・ご指摘・レビューなど皆さんの声を聞くことが私の励みでありモチベーションにつながっています。よければお願いします ○┓ペコリ




