368:EX-Sシナリオ『その恩恵は他が為に、その力は主の為に』Ⅳ
ついにボス戦開始。
最初書いて予約投稿掛けたものから書き足していたら2話分に膨れ上がりました・・・
いくつもの壁を越えて、死を繰り返して、無数のキマイラを倒しては待機を繰り返し、ようやくたどり着いたボスエリアっぽい所。その前で一時間ほど休憩をとった俺とギルファーは、とりあえず万全の状態でボスへと挑むことにした。
幸いアイテムなどに規制はされていなかったので、もっていた回復出来そうな食い物はギルファーに食わせた。とは言っても、回復アイテムとたまたま持っていた携帯食料ばかりなので満足させることは出来なかったけどな。
『今はこれくらいでも十分だ。ここを出たらお前の財布を泣かせてやるから覚悟しておけ』
そんな恐ろしいセリフを言われてちょっとビクッとしたのは内緒だ。コイツが本気で食うとマジで半年金策する羽目になるし。
『・・・そろそろ行くぞ。我はもう十分休んだ』
「了解、じゃぁ頼むな」
当然のようにギルファーは身をかがめて俺に乗るように催促してくる。ありがたい。正直ギルファーに乗ってないと何度死んだかわからないからな。
乗ってても死んだけど。その度にお前のせいじゃないとは言うんだが、ギルファーは気に入らないらしく動きと警戒能力がより強くなっていくんだよ。
卯月と弥生もギルファーを攻めることはなかったが、キマイラを倒す時の速度とエグさはどんどんと増して行った。最終的に生きたまま内臓を引きずり出すなどの残虐性まで見せてくれた。野生の状態に戻っていくって感じか?
おかげで道の後半は一時間以上消えるまで時間が必要だったが、ギルファー達のおかげで死ぬことなく、ここまでたどり着いた。
「今更だけど俺今回頼りっぱなしだな」
『死なれるよりはマシだ。気にするならば出たら飯を食わせろ』
「わかったよ。けどマジで加減してくれな?」
『クックック、考えておいてやる』
後が怖いよ全く・・・
『『グゥルォォン』』
「お前らもな。ホント助かる」
『『クルォーン!』』
二匹も俺が声をかけるといつもの可愛らしい声に戻るけど、やっぱり怖いよな。もし今裏切られたり見限られてみ? 俺即死よ?
そんなこと考えつつボスエリアと思われるフロアへと足を踏み入れた俺達。フロアは丸い空間になっており、特にギミックらしいギミックは見られない。
そんなフロアの中央、もう嫌ってほど見たキマイラがそこに鎮座していた。
『・・・』
だが今まで見た個体とは明らかに別次元の貫禄を見せるそのキマイラは、俺たちに気が付くとゆっくりとその目を開いた。
『ヴヴヴヴヴヴ・・・・!!!!』
そのまま唸り声を上げ始めるとフロア全体が揺れ始めた。ギルファーは何とも無いようでそのまま立ち、キマイラから視線を動かさない。卯月と弥生も既に臨戦態勢だ。
『ふん、今までよりは楽しめそうだ』
「言ってる場合か」
『ヴァヴァヴァヴァヴァヴァ!!!!!』
やっぱり鳴き声が雑だなぁと思いつつ、案の定というか、お約束というか、不思議パワァで巨大化しましたキマイラ。
角は轟々と捻じれ、顔つきはより凶暴に、そして地面を踏みしめる両足はそれだけで地震を起こせるのではないかと思うほど立派な物に変化した。名付けるならキングキマイラって所だろうか。
『ヴァヴァァァ!!!!!』
「ガッ!?」
呼吸が・・・できねぇ!!?
『アール!? チィこのデカ物風情が!!』
体も一切動かねぇ。気道を締め上げられる感覚がゆっくり強くなってく・・・やべ・・・視界も意識飛ぶ・・・
『ヴァヴァヴァヴァッ!!?』
「カヒュッ!!? ヒュー・・・ヒュー・・・」
締め上げていた何かがなくなった。失った酸素を取り込むように何度も何度も荒々しく呼吸を繰り返す。
ぼやけた視界が開け、ギルファーの鋼剣と卯月たちの炎がキマイラを焼いていた。
「悪い・・・助かった」
『気にするな。だが妙だ』
見ればキマイラの顔の一部が傷つき焦げている。だが今の発言的にはギルファー達の攻撃で怯んだわけじゃないのか?
『それはいい。アール、このデカ物中々に厄介だ。我の鋼剣を受けても怯まんぞ。それ以上に中々に硬い』
マジで言ってるのかよ。お前がそういうってことは下手すると今まで以上に厄介な相手じゃねぇのか?
あぁクソ、俺が自分で戦えればいいんだけどなぁ。ディアみたいな思考直結が出来るわけじゃないからそうそう上手いこと出来るわけじゃないし。
なんかいい方法ないもんかね。
『ヴァヴァヴァヴァヴァ!!!!』
「考えてもラチあかねぇ! 戦いながら探るぞ!!」
『その考え乗った!! 狐ども! 遅れるなよ!』
『クォーン!!』
『グァーン!!』
倒さねぇといけねぇ相手には変わらねぇ! 戦いながらいい方法見つけるしかねぇよな!
――――◇――――
「このクソデカキメラ!! 師匠から離れろ!!」
ボスモンスター登場直後、雄叫びをあげたボスの口から、真っ白の腕が飛び出てきてアールの首を絞めた。そのままギュウギュウと首を締め上げていく腕を、ルークが抜いた刀で切り裂いた。
防御力はそこまで無かったらしくルークの一太刀でも簡単に切り裂けた。私が動く前に素早く動いたルーク、中々やるよね。それよりも、今の白い身体はこっち側担当みたいね。
相変わらずこっちは眼中にないみたいで、私たちが本体に攻撃をしてもダメージを負っている様子はない。けど白い身体は途切れなくアールに向かって襲いかかる
「クソ! 厄介すぎるでしょ!!」
「だりゃぁぁ!!!」
迫る白い腕を切り落とし、蹴り飛ばし、魔法で打ち落とすけど手数が全然足りない。しかも白い腕には私たちへの攻撃判定もあるから下手に受けちゃえば泉送りにされちゃう。
今ここでどちらかが落ちれば間違いなくアールは詰む。どうしろって言うのよ!
『ヨヨヨ!!』
――――◇――――
・アールの従者『破滅の球体-ディア-』が融合を求めています。答えますか?
――――◇――――
「アールがよくやってるあれね。いいわ! やりなさいディア!!」
『ヨ!!』
「あぎぃぃっ!!?」
――――◇――――
・『破滅の球体-ディア-』が一部融合。思考回路が支配されました。
――――◇――――
何この感覚・・!!? ヤヴァイ薬か何か打ち込まれたんじゃないかってほど思考回路がクリアになるっ? それだけじゃなくて私じゃない誰かが私の心に入ってきてる感覚がするぅ・・っ!
しかもかなり痛いじゃないのよこれ! よくアール毎回涼しい顔でこれやってるわよねぇっ!?
『ヨヨォヨ!!』
次の瞬間、私の両肩からディアが身体を伸ばし、アールが良く見せる追加アーム形態を見せてくれた。けどアールが見せてくれるのと違って、私との形態はなんか赤黒くない?
『ヨヨォ!!』
あ、なんか燃えてる。THEファイアーハンドって感じがする。もしかして私の得意ジョブが魔術師系統だからそれに合わせてくれてる?
『ヨ!!』
すごい。言葉がわかる。いっつも『ヨ』とか『ヨヨー』とかしか言わないのにこんなに長い言葉話してたの貴方。融合形態凄まじいわね。あら?メニュー画面が点滅してる。なにかしら?
――――◇――――
・『破滅の球体-ディア-』一部融合中。
・毎秒HP3%減少状態
・攻撃力上昇状態
・思考速度上昇中
・精神支配状態:無
・肉体支配状態:無
・思考汚染:無
――――◇――――
うん。実はかなりやばいのね融合って。これもう融合じゃなくて捕食とか洗脳よね。初めて融合中にメニュー画面開いてみたけど、これもしも敵性モンスターにやられてたら私操り人形待ったなしよね。
『ヨ〜・・ヨヨォ〜!!!』
「ディアが電気出したァ!!?」
「あ、これ『ショックプラズマ』?」
雷系統の初級魔法で威力は普通、確率で麻痺、スタンさせるありがちな魔法。もしかして私と融合中だから私と同じように魔法を使えるってこと?
『ヨ!!』
すごいわねディア。しかも分身できるし欠損再生まで出来るんでしょ? あれこれアールが融合してたらほんと敵からしたら最悪の状態じゃない?
『ヨ』
「あぁ、ありがとう」
「すっげぇ・・・リーク姉ちゃんアール師匠と同じようにディアからアイテムもらってる」
この子私のアイテムポーチから回復ポーション出してくれたわね。ちゃんと栓も取ってくれてるし。けどまだ結構HPに余裕あると思ったんだけど・・・へ? もう半分減ってる!!?
『ヨヨ』
「そういうことは早く言ってよ!?」
『ヨヨヨ』
「うぐ・・・まぁそういうことなら仕方ないわよね・・・けど一応出来るなら早く言ってよ?」
『ヨヨ!!』
「かんっぜんに師匠と同じ光景だよ・・・」
「キュルァ?」
けどこれで手数はなんとかなる! 回復アイテムの備えは万全・・・とは言い切れないけどこの場での調合と、このまえもらったアールの血液もあるし、自分で魔術で回復もできるからなんとかなるでしょうきっと!
「さぁルーク! このデカブツが出してる白い腕全部私たちで消すわよ!」
「う・・うん!! 了解!! ・・・完全に師匠と同じ思考回路になってる」
「何か言った!!?」
「何も言ってないですはい!!」
――――◇――――
戦闘開始から数分、ギルファーに乗ってるだけなので体力の消耗は殆ど無いんだが、疲れというものはやっぱり出てくる。
キングキマイラの攻撃は口から吐かれる謎のブレス攻撃と、突進が主な攻撃だ。時折魔法攻撃で一定範囲を焼き払ってくるが俊敏な動きができるギルファーにとってはまるで当たらない。
右へ左へ、上下へと飛び、キングキマイラの攻撃を悠々と回避していく。だがその回避行動が俺へのダメージに繋がってしまっている。
身体が全く動かせないので完全にギルファーに固定されているのだが、それがアダとなっている。衝撃を逃せず、脳みそがシェイクされ続けており、物理的要因で先程から頭痛がすごい。
当然ギルファーには伝え、それを聞いたギルファーも動きを抑えてくれてはいるが、全てを緩和することなど不可能だった。
そしてなによりげっ!?
「あ・・・・・ぎぃ・・・・!!っ」
『チィ!! またか!?』
これだ・・・っ! どこから何をしてるかわからん首絞め。これが一番きつい・・・! 運がよければ数秒で無くなるが、悪ければ三十秒ほど続くときもある・・・。
体が満足に動かないこの状況では酸素を身体に取り込めないのが一番辛い。
『ヴァヴァヴァヴァァァ!!』
『クソガッ!! 耐えろよアール!!』
そしてそういう時に限ってキングキマイラは大きな回避を必要とするブレス攻撃や魔法攻撃を仕掛けてくる。回避そのものは余裕だが、その揺れからくるダメージが辛すぎる。
『『グォォォン!!!』』
卯月たちが対抗するように火炎を吐き、ブレス攻撃を相殺する。ギルファーの回避もそうだが、卯月達の攻撃による援護もかなりでかい。
けど原理は知らんがこの呼吸潰しがキツイ・・・!!!
「カヒュッ!! ハァーハァー・・・!!」
足りない酸素を取り込み、思考を回す。今回は短かったけどこうも連続するとそろそろキツイ。
HPが減るダメージを受けた訳じゃないからアイテムでの回復も出来ず、しかし、体内の酸素は確実に減っている。正直かなり追い込まれている。そもそも拘束具によって回復は当然、動くことすら出来ないこの状況だ。
『口を開けていろ!』
「んぐっ」
ギルファーが器用に投げ飛ばしたそれはリンゴだった。丁寧に一口大に切られたリンゴ。疲労感は抜けないが何も食わないよりはマシだ。
気のせいかもしれないが、体が少し回復した感じがある。こういうのは回復行動を取って回復できたという気持ちがかなり大事なのだ。
「すまん、助かった」
『気にするな。それよりもどうする? 貴様そろそろ限界ではないのか?』
「アホ、んな泣き言言ってもここを超えねぇと先に進めねぇだろうが」
『貴様が動けんのなら諦めるのも手段としてはあるだろうが』
何ってんだコイツ。俺が諦めるわけねぇだろう。どんな状況だろうとな。まぁ、今の状況は頼ってばっかりだけど。
『クォーーン!!』
『クワァウ!!』
『狐どもも同意見だそうだ。それとだ。我はこういうの柄ではないが、正直今の貴様は見ていられん・・・あまりにもキツそうでな』
「は・・・なんだよ、随分と優しいじゃねぇか。ほんと柄じゃねぇよ」
『目の前で何度も死なれては我でも気にする』
そっか・・・そう言えばコイツらの前で死ぬのは初めてだったかもしれないな。特にギルファーに関しては前作じゃ死んだらゲームオーバーだったし、前に死んだ時はコイツがいないところでばかりだったし。
「なに、気にすんな」
『無茶を言うな、貴様は』
『『クワァン!!』』
「悪いなお前ら。けどあれだ。お前らなら何とかしてくれるって信じてんだよ」
俺は今動けねぇけど、こいつなら絶対このキングキマイラを攻略してくれると信じる以外に、今の俺には出来ねぇからな。誰かに信じられる気持ちっていうのは力になるだろ?
『貴様は・・・相変わらず虫酸が走ることを平然と口にする』
「失礼なやつ。本気でそう思って言ったのによ」
『・・・おい、我が”主人”よ』
っ!!? 今コイツ俺のこと主人って言ったか?
『おい、聞こえているのか?』
「あ・・・あぁ、すまんすまん。なんだ?」
『”全力を出してやる”耐えて見せろ』
「・・・任せろ。お前の全力くらい耐えられないとお前の主にゃ向かねぇよ」
『『クォァン!!』』
「あぁ、なんとなくわかるよ。お前らも何かやるんだな?」
『『クォン!!』』
俺の従者たちがやる気全開な件について。心強いな本当に。
「好きにやりな! お前らの全部! 受け止めてやる!」
『その言葉、信じてやるぞ!!』
『『グワァゥ!!』』
直後、ギルファーの全身から凄まじい雷撃が、卯月と弥生からは激しい焔が吹き出した。
『WOOOOOO!!!!!!』
『クゥワァン!!!』
それは俺が知ってる『ギルファー』の本気。大きさは変わらないけど、全身から溢れ出る電撃、そして宙を舞う13本の鋼剣。ギルファーの周りに現れた雷の鋼狼とでも言うべき分身たち。最終形態。その名も『鋼雷牙狼』形態。分身も雷も鋼剣も使いたい放題でぶっぱなしてくる文字通りギルファーの本気。
二匹だった卯月と弥生は焔と共に融合を果たして、一匹の十尾を持つ獣になった。尾には『双子星の剣』『ズイカク』『コンゴウ』『恨血木の破斧』『投刀:抛』『双極剣』『ユウダチシグレ』『ジンツウ』のような武器を持ち、ギルファーの横に並び立つ。
『喜べ俗物・・・我が宿敵、そして我が主アールとの戦いでのみ魅せてやる我の全力を拝ませてやる。代価にその命を貰うぞ!!!』
「・・・結構来るなオイィお前らッ!!?」
『ふん、自分で言ったのだ。耐えて見せろよ!』
『クゥワァン!!!』
「上等だゴラァ!!」
――――◇――――
・『従者:鋼牙狼ギルファー』が形態変化『鋼雷牙狼』形態に覚醒。
・『従者:銀狐族のギン』の下僕『ヴァージアフォックス:卯月』『ヴァージアフォックス:弥生』が融合進化。『剣狐』顕現。
・『剣弧』が『従者:銀狐族のギン』の下僕より離別。『時代人:アール』の『従者』契約を強行。
・『剣弧』が『時代人:アール』の従者となりました。
――――◇――――
敵は一体ですが表裏から同時に攻めてくるめんどくさい相手。ターゲットはアールただ一人。
リーク達とギルファーだけがアールを救い先へと進めることができます。
そして何げにギルファー全力宣言。
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